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子どもの自由と親の信念

忘れられないクリスマス会の出来事

街がイルミネーションに包まれ、クリスマスの曲が流れてくる12月。この時期になると、ふと思い出すことがあります。


それは30年以上前、小学生の息子が経験した出来事です。
あるクリスマス会がきっかけでした。


息子のクラスでは、みんなでクリスマス会を開こうという話が持ち上がり、子どもたちが楽しそうにプログラムを決めて準備を進めていました。息子も友達と一緒に出し物をする計画を立ててワクワクしていたのですが、ある日突然、その友達が参加できないと知り、とても落ち込んでしまいました。

「どうして参加できないの?予定があるのかな?」と尋ねると、息子はこう答えました。
「お母さんに『クリスマス会には行ったらダメ』って言われたらしい。」

頭の中に「?」がたくさん浮かびました。その理由を担任の先生に尋ねると、たとえ授業の一環と言っても、友達の家庭では宗教上の理由でクリスマス会のような行事には参加できないということでした。親御さんの強い意向で、その友達は当日、保健室で一人過ごすことになったのです。

彼自身はクリスマス会に参加したがっていたのですが、親の決定により叶いませんでした。


親の信念と子どもの気持ち――大人たちの葛藤

そのとき私たち保護者の間でも意見が分かれました。
「内緒で参加させてあげられないだろうか?」
「でも、それは子どもに嘘をつかせることになるのでは?」

最終的に、親の意向を尊重せざるを得ず、私たちは心の中にモヤモヤを抱えながらクリスマス会を終えました。

その後も、この出来事を振り返るたびに考えてしまいます。
いくら親とはいえ、子どものやりたいことを制限するのは本当に正しいのか?」
「親の信仰を子どもに強制することは、子どもの自由を奪う行為ではないのか?」


子どもの権利と宗教の自由

令和4年度、こども家庭庁が「親が子どもに宗教活動を強制すること」を背景とした児童虐待について初めて調査を行いました。
その中では、「児童の思想、良心及び信教の自由を尊重すべきである」とする「児童の権利条約第14条」の理念が示されています。

さらに、調査内容のQ&Aには次のように記されています。

宗教等の信仰に関する事案についても、児童虐待に該当する行為が疑われる場合には迅速に対応することが求められる。

こども家庭庁PDF

あのとき、このような情報が私たちの手元にあったなら、もっと違う選択肢を模索できたのではないかと思うと残念でなりません。


子どもの声を聴くということ

宗教や信念は親にとってとても大切なものです。それ自体を否定するつもりはありません。ただ、その信念が子どもの意志を抑え込み、「自由に考え、選ぶ権利」を奪うことにつながるなら、それは見直す必要があるのではないでしょうか。

子どもの「やりたい」「やってみたい」という声に耳を傾け、それがどんなに親の価値観や考え方と違っていても、一緒に考え、話し合う余地を持つこと。そうすることで、子どもは安心し、自分らしさを育んでいけるのではないかと思っています。

あのクリスマス会の出来事を思い出すたび、そんな想いが胸に浮かびます。

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