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家にいる子、家にいられない子。 それぞれの「居場所」を考える
東京・歌舞伎町の「トー横」、大阪・道頓堀の「グリ下」── これらの場所と並び、福岡には「警固界隈」と呼ばれる場所があることをご存じでしょうか?
ここには、家庭や学校に居場所を見つけられない子どもたちが、似た境遇の仲間を求めて市内外から集まってくる と言われています。
そんな「警固界隈」で、生きづらさや悩みを抱える若者たちを支援しようと、夜回りをしながら『まちの保健室』という活動を続けている筑紫女学園大の大西先生 とお話をする機会がありました。
大西先生とは、不登校の子どもたちについて以前から面識はありましたが、警固界隈の子どもたちの話をするのは初めてでした。
先生によると、ここ数年で警固界隈に集まる子どもたちは低年齢化が進み、精神的に不安定な少年少女が増えている そうです。
家から一歩も出られない子 と 家に居場所がない子
不登校の子どもを持つ親御さんたちは、「うちの子は家から一歩も出られない…」 と嘆くことが多いです。
ですが、警固界隈にいる子どもたちは、そもそも家に居場所がない から外に出ざるを得ないのです。
私は少年補導員の立場からも、日ごろから不登校の親御さんたちにこう伝えています。
「家に居場所がなくなると、子どもは外に出ます。そして、犯罪に巻き込まれることが増えてしまうのです。」
親が願うのは「社会とつながってほしい」ということかもしれません。
でも、子どもにとっては 「安心して過ごせる場所があるかどうか」が何よりも大事です。
子どもが安心して話せる相手、耳を傾けてくれる人がいるのか?否か。
それが、その子の未来を大きく左右することになるのだと思います。
ないものねだりが、子どもを追い詰めることも
私たち大人は、時に 「ないものねだり」 をしてしまいます。
家に引きこもっている子には、「もっと外へ出なさい」と言い、外に出る子には、「ちゃんと家にいなさい」と言う。
ですが、子どもたちはただ「自分の居場所」を探しているだけ。
家に引きこもる子に対して、「何してるの!社会と関われるようになりなさい!」ときつく叱ってしまうと、「この家にいても、自分は責められるだけ」 という思いが募り、次第に家に居づらくなってしまうかもしれません。
警固界隈にいる子どもたちは、「誰かと話がしたい」と言います。
「家では誰も、自分の話を聞いてくれない」
「だからここにいるしかない」
そんな切実な思いを抱えているのです。
子どもたちの声を大切に
私たちは 「子どもの声を聴くこと」 をもっと大切にしなくてはいけません。
警固界隈に集まる子どもたちを支援するために、夜回りをしながら寄り添っている方々には、本当に頭が下がります。
どうか、この子たちを冷たい目で見ないで欲しい。
「大丈夫?」
「何か困っていることはない?」
そんな温かい言葉を、ほんの少しでもかけてほしいのです。
子どもは、ただ 「受け入れてくれる場所がほしい」 だけなのかもしれません。
私は、まず 自分の住む地域から、子どもたちへの声かけを始めていこう と思います。
挨拶ひとつでも、きっと何かが変わるきっかけになると信じて。