【中年学生日記 4】 妻を説得
大学はもう決めた。
さていつから入学しようか。
もうとっくに4月になってる。
途中で入れたりするんだろうか。
なになに、10月生として入ることもできるんか。じゃあ10月からにし・・・
4月中に願書提出すれば2021年4月入学として扱ってくれる?秒で大学生になれるやん。
急いで志願書を書いた。
そして成績実績書を母校から取り寄せないといけないということですぐ電話した。
電話の向こうの受付の女性が困ってる。
僕の成績を証明されるものはもう学校には残ってなかった。
5年で破棄されるらしい。
卒業してからちょうど20年が経ってた。
しかし成績証明がなければ卒業証明でいいらしい。
住所を伝えてお願いした。
ちなみにこの日本大学通信教育部、すでに大学を卒業してる人だと2年で卒業できるらしい。
また中退してる人とかだと、どれくらい通っていたかにもよるが最短こちらも2年から3年で卒業できる。
自分はというとゴリゴリの高卒。当たり前だが近道はなく、きっちり4年通わなくてはいけないとのことだった。
数日後、資料は全て揃った。
あとはお金を払ってその証明書を同封すれば完了だ。
しかし自分にはあともう一つ大きな仕事を残してしまっていた。
ミッション「妻を説得せよ」
これはインポッシブル。
かなり。
なぜなら僕の妻は他の家庭の奥様とは比にならないくらいの鬼嫁なのだ。
ある日、本を5冊ほど買って帰った時には
「てめえ、なに5冊も本買ってんだよ。本読む暇あったらちょっとは嫁の気持ち読め」
とんちのようなキレには何も言い返せない。
ある日、幕張からの仕事の帰り、メッセからのお客さんで京葉線が混んでいたため総武線でぐるりと回って帰った時には
「てめえ、遠回りしてねえですっと帰ってこいよ。そんなことしてっから芸人人生も遠回りしてんだろうが」
ぐうの音も出ない。
家から締め出されたことだって両手じゃ収まりきらないほどある。
そんな妻をどう納得させようか。
きっと小細工を一番嫌う。
僕はタイミングだけを丁寧に伺い、子供が寝静まってしばらくしてから直球で聞いてみた。
「漢字の芸をもっといかせるように通信制の大学に行こうと思うねんけどかまへん?」
「いいじゃん、面白そうじゃん」
そう。
僕の妻はそうなのである。
3年ほど前に、僕のシャッフル男爵というリズムネタが台湾でバズってると知り
台湾に行ってネタをやってきたいと懇願した時も
「いいじゃん、面白そうじゃん」
だった。
ブチギレる時は思いっきりブチギレ、面白そうな方には思いっきり舵を切ってくれる。
これぞ芸人の奥さん!なのかどうかは知らないが、とにかくひたすら感謝した。