【中年学生日記 2】 大学選び
2021年3月。
国語の教員免許を取るべく、まずはその資格が取れる大学探しから始めた。
都内で調べると30数校ほどあった。
目的は先生になること。なので大学のネームバリューや偏差値はどうでもよかった。
その中で自宅からかなり近い大学もあったのでそこにしようと、とりあえず資料を取り寄せてみると自分の無知さ浅学さを呪った。
大学ってこんな金かかるん?
きっとそんなことは10代の内に知っておくべき案件なのだろうが
高校2年で芸人を始めて、卒業後はそのまま芸人生活を続けていくことをもう決めていた16歳の耳には、大学受験やその費用などの情報は一切耳に入ってこなかった。
38歳にして知る入学金、学費の衝撃。でもそんなことは大学に行くと決めた時点である程度は予想していた。ちょっとお金がかかるからといって、たかだか数百万で折れるほど、今回の自分の決断は柔ではない。
しかし自分は見落としていた。最も大きな問題を。
受験勉強せなあかんやん
当たり前である。当たり前すぎて全く気にしていなかった。
え?何から勉強したらいいん?ちょっと待って?これ塾行かんと無理ちゃう?え?高校から行き直す?いや高校は卒業してんねん。え?どうする?やめとく?まだ誰にも言うてないから今やったら恥もかかんしな。やめとこ。え?ほんまに?
固い決心をしたと思っていたはずがグニョングニョンに曲がり始めた。
さらなる問題もあらわれた。
仕事しながら通えるん?
決心はもはや溶ける寸前だった。
残ったわずかな決心を奮い立たせ、半ば脱力気味に他の方法を探した。
そして糸口を掴んだ。
通信制大学。
正直全くと言っていいほど知らなかった。
通信のイメージは失礼になるかもしれないが、聞いたこともない大学でただただ大卒の資格をもらえる、そんな間違った認識を自分は持っていた。
しかし見てみるとかなりの数の有名大学も通信教育部を設けている。
卒業すれば通学制と同様の卒業資格を得ることができるとのこと。
通信制ならば仕事との両立も難しくなさそう。
また学費が通学生と比べて約4分の1ほどで通えるということや、受験は無し、志願書と入学費を払えば大学生になれるという事実は、抱えていた問題を一気に解決した。
グニョングニョンに曲がって溶けかけていた決心があらためて固まり出した。
ここでひとまずイメージを膨らませてしまった憧れのキャンパスライフ、サークルライフは秒で捨て、通信制で免許取得できる学校探しを始めた。