![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/169466334/rectangle_large_type_2_f81976540998d948101f27937163a4ca.jpeg?width=1200)
手放す美学
引っ越しの日、私はすべてを手放す決断をした。何年も触れていなかった本や服、ほとんど使ってなかった家具や買い集めていた雑貨、仕事で使っていた古い資料など過去のいろんなもの。それらは私の生活の一部であり、私の歴史を形作るものだったが、次第にそれらを持ち続けることが重荷に感じるようになった。
引っ越しの準備を進める中で、私はその一つ一つの物と向き合い、名残惜しさを感じながらも手放していく。手に取るたびに、懐かしさがこみ上げてくるが、整理しているうちに、心が少しずつ軽くなるのを感じた。
結局残ったモノたちは、新しく買ったものとかは関係なく、使い込んだものたち、長い間私の手に馴染んでいて、暮らしの中に溶け込んでいたモノたちだった。
なんだ、これだけで良いのか。
派手さもなく、流行に左右されることもない。無駄のないシンプルなデザインで、時を重ねた美しさを持つモノは、日々の生活の中で実用的であることの美しさを語っている。
日本には、「用の美」という言葉がある。
モノの本質はその美しさだけではなく、実際に使うことで真価が発揮される。最終的に残るもの、それは華やかさや贅沢ではなく、日常に寄り添い、長く使われてきた物たちの持つ静かな輝きなのだ。