土木構造物とランドスケープ
土木構造物とランドスケープは、同じ系列のことでありそうで、中々同じ文脈で話される機会がそこまで多くないと感じている.土木と建築、都市を計画・デザインしている分野が少しずつ離れてくっついていないことを表しているようにも思っている.
でも、スケールや用途、デザインできる範囲など違いはたくさんあれど、大地の上にある人工物として、一体的に計画・デザインし、人々の生活のためのモノになればいいと思っている.就職活動でもそんなことを言っていた気がする.
なんでそんなことを思って書いているかと言えば、先日、丹沢湖に行ってダムを見て、今までに見たダムとは違うランドスケープを感じたからだ.
子どものころに黒部ダム、大学生の時に宮ケ瀬ダムといくつかの(数は少ないが)ダムを見てきて、そして、去年技術士の一次試験を受けた時に土木の勉強を少ししていたことが重なり合って、書き残している.
●ダムの形式
ダムについて、簡単に調べると、
とあり、私たちの生活のための土木構造物である.
巨大な構造物であるので、周辺の地形や地質によって採用される構造や施工方法がことなり、構造や施工方法から周辺がどのような条件なのかを想像することもできる.
ちなみに、大林組のHPが可愛くて勉強になる.
(おそらく自分も技術士一次試験の勉強の際にはお世話になったことだろう.ちょっと覚えていないが笑)
〇黒部ダム
黒部ダムには、随分前に行ったので、自分で撮った写真はないのだが、ものすごく大きいスケールに圧倒されたことを覚えている.
黒部ダムは施工方法・工事に伴う苦労が、映画『黒部の太陽』になるほど有名であり、奥地での工事の大変を感じる.
また、コンバインダムになった経緯を見てみると、当初は単純な円弧状のアーチダム(水圧を両岸の山に逃がす.強い地盤である必要がある)であったが、計画中に岩盤の調査から予想以上に脆いことが判明して、ウイング部分を作り、そこは重力式として水圧をダム下部の岩盤に逃がす構造となったそう.
上から見た時の怖さは忘れないが、美しいアーチは『なんかすごい!』と思った.できれば、都市計画を学んで土木も少し学んだ身としてもう一度行ってみたい所である.
〇宮ケ瀬ダム
写真で見てるわかるが、社会の授業とかに出てきそうな、そういう教科書的な綺麗さがあるダムだと感じた.重力式だからか、黒部ダムとは違う安定感を感じる立ち姿があるなと感じた.
ダムの上から湖眺め、洪水吐見て、若干高所恐怖症を発症する流れまで、完璧なダムの観光的な体験.
時間的に下からの眺めを見ることができずにダムを後にしたが、放水されている時にあそこに立っていたら、某アミューズメントパークに匹敵するぐらいの水飛沫を浴びて、スカッとできるかもしれないと少しだけ思った.
〇三保ダム
ダム自体は、上の二つに比べると規模は小さいと感じた.もちろん、ダム自体大きいものなので、スケール感が可笑しくなっていることは否めない.
三保ダムはコンクリートによってがっつり作られたダムではなく、ロックフィルダムは、土や岩石を材料として盛り立てて造られるダムだったのが要因なのか、法面が緑が覆われており、大きな広場が横に広がっていた.そこには新しい自然があって、心地よかった.
ダムの近くに居場所(緑)があるのは初めてだったので、少々びっくり.
下の広場にテントを張っている人もいたので、キャンプもできるのだろう.
発電所からの水の大きな音が聞こえて、そして長閑な空間が広がっていた.
ロックフィル式ダムによって造られた法面は、緑で覆われていて、大きなインフラとしてそびえたつダムが、自然との調和・新しい自然(人間によって都合の良い自然)がそこにあるような気がした.それをランドスケープと呼ぶのが良いのかもしれないと思った.
・・・
ダムは人の生活スケールを超えた生活に関連したインフラ.
ダム建設に至っては、数百世帯が水没した上に造られることが多いので、ダム周辺に自然環境を感じても、それは人間にとって都合の良い自然であるが、多くのダムが建設後数十年が経ち、建設後に生まれた私たちにとっては一つの観光名所として、あるいは、自然環境として感じることができる場所になっている気がする.
人間の多くが集まって都市に暮らしている限り、こうした巨大な土木構造物は、生活インフラとして存在し続ける.色々な課題がある中で、今後は、もう少しエネルギーや基礎資源も含めた生活インフラも考えた上で都市をプランニングしていくのだろうか.