【川村元気という生き方】普遍性と時代性を意識した「発見」と「発明」
ふと見つけたイベント「六本木アートカレッジ 2017「ジャンルを超えて 面白く働き、生きる」 #1 <エンタメ×経済>で面白くする~ヒットが生まれる時、何が起きているのか?~」に参加してみた。ゲストは僕の大好きな作家であり映画プロデューサーの川村元気さんだ。
映画プロデューサー/小説家 川村元気とは
1979年横浜生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業。『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『宇宙兄弟』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『バケモノの子』『バクマン。』『君の名は。』『怒り』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、翌2011年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。映画『君の名は。』は、興行収入249億、観客動員数1,900万人を超え記録更新中。世界各国で公開されロサンゼルス映画批評家協会賞 長編アニメーション賞を受賞した。2012年には初小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同作は130万部突破の大ベストセラーとなり映画化された。2014年には、絵本『ムーム』を発表し、同作は『Dam Keeper』にて米アカデミー賞にノミネートされた、Robert Kondo&Dice Tsutsumi監督によりアニメ映画化され、現在32の国際映画賞を受賞している。その他の著書として小説『億男』、対話集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』など。3作目となる最新小説『四月になれば彼女は』を2016年11月4日に文藝春秋より発売し、12万部を超えるベストセラーとなっている。
川村元気流 ヒットの法則とは
ユニークなテーマな小説や映画などを手がける川村さんが意識しているヒットの法則というべき2つのメソッドがある。
■ 普遍性と時代性を意識した「発見」と「発明」
■ 面白さの「発見」と組み合わせの「発明」
ここで言う、「普遍性」とは、多く人が共通して感じていること、思っていることで、「時代性」とは現代社会や世の中の流れのこと。
「世界から猫が消えたなら」のヒットの裏には彼の普遍的で時代に沿った「発見」と「発明」があった。
「何かを得るには、何かを失わなければならない。」(普遍性な発見)
とある日、川村さんはスマホを落としてしまい、そのまま電車に乗り込んだそうだ。その時電車に乗っている人のほとんどがスマホの画面に目を落としていたという。そんな時彼がふと窓の外に目をやると、虹がかかっていたという。その時に着想したアイディアが「何かを得るには、何かを失わなければならない」だ。
「災害やテロ後の「死が近い」という感覚」(時代性な発見)
3.11を境として、日本人であれば災害については敏感になっていることと思う。我が身にいつ降り掛かってくるかわからない。平和な国の象徴でもあった日本で生きてきた僕達にとって「いつ死んでもおかしくない」そんな心情を1日にして作り出したのだ。そんな人々の普段はあまり発したりしないが、心の底に深く抱いている思いだ。
映画を観た人ならわかると思うが、この2つの発見が「世界から猫が消えたなら」のメインメッセージ「喪失から考えるその人やモノの価値」を生み出している
面白い物語やテーマの「発見」を魅力的に昇華する組み合わせの「発明」
これらの発見を魅力的に見せるための組み合わせの「発明」。ここでのコツとしては、みんなが潜在的に知りたがっていること(集合的無意識)を表現すること。言われてハッと気づくような事を掘り起こしてあげること。
ただし想像できる組み合わせはつまらない。想像できないが、やってみたらやってみたで「ああ、なるほどね。」「確かに、そうだよね。」と気付きをもたらすような組み合わせでなければならない。そんな組み合わせを川村さんは「無責任な組み合わせ」と表現した。
「無責任な組み合わせ」の先に…
人は誰しも批判されるのが怖い、どうせなら認められたい。故にどんな企画やアイディアに対して、大衆が「それいいね!」といった所に着地しがちであるが、それでは想像内でのヒットにしか留まらず、誰もが度肝を抜かれる程の大ヒットにはなりにくいのではないか。
彼の作品の凄い点、そしてそれは彼の強さでもあるが、そういった想像できないようなことにあえて挑戦している所なのではないか。
その無責任な組み合わせに根拠なき自信はもちろんあれど、きっとその道を選んだ時はめちゃくちゃ不安だろうし、失敗したら「やっぱりね!」「だから言ったこっちゃない」と評論家から叩かれる。
それでもあえてそういった道を選んで、それをしっかり正解にしていっている。そういった彼のスタイル・性格を象徴するようなこんな言葉があった。
「僕は、新人になれる場所を常に探している。」
彼は映画プロデューサーでありながら、小説家や絵本作家としての一面もあり、複数人で遂行するような映画制作とは相反して自分や机とひたすら向き合い書き上げる作家活動をこなしている。そんな彼は慣れ親しんだ環境に甘んずることなく新しい環境、自分が新人になれる環境を常に探しているというのだ。知ってる道、安全な道を歩いているうちは、迷わないし、事故も起こさない。
僕もどちらかというと、先が読める人生より、何が起こるかわかない人生の方がワクワクするし、楽な道より厳しい道を選びたい。そこにあまり小説を多くは読まない僕が川村さんの小説には惹かれてしまう所以があるのかもしれない。
いままさに川村さんが実践しているような、そんな生き方をしたいとずっと思っていたが、近頃少し忘れかけていたようなことだったので、すごく胸に刺さったし、自分のとって大事なもの気づかせてくれたような気がした。
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