巨人小笠原、メンヘラ配信者と同棲する【#8 禁断の、果実】
フォロワーを増やすためにとんでもないことを思い付いたのは巨人小笠原(48)。
早速あめちゃんを起こすと、こう言い放った。
「あめちゃん、今日は別の男と付き合ってみないかい。ホテル代は僕が出すよ」
「何言ってるの!カッスさんがいなくなったら、私……」
「何でも僕任せにするのは間違ってるぞ。僕がいなくなってもやっていける人間になれないといけないのに……」
そう言いながらマッチングアプリを開く。アイコンは犬、ロボット、ゴリラ、などなど、顔が分からないものばかりだ。
「とりあえずロボットのアイコンを選んだけど、夜には帰ってこいって……。配信があるから仕方ないとはいえ、ホントどうしようもないヤツだね、カッスさんは」
そう独り言をつぶやき、あめちゃんは家を出た。
夜を迎える。今日は25万人記念配信だ。
「おかえり、あめちゃん。夕ご飯なら作っておいたぞ」
「ただいま、オジサン。今日は楽しかったよ、ご飯に連れて行ってくれただけで何も嫌らしいことはしてこなかったし」
「そうか。じゃあ配信、頑張ってね」
配信中はいつもの姿に戻っていた。
「ところで、あめちゃんはどうして『インターネットエンジェル』とか、『超絶最かわてんしちゃん』なんて名乗っているんだ?普通にしてても十分かわいいのに」
1人だけの部屋でカッスはつぶやく。
フォロワー100万人なんて、もうすぐ到達するだろう。
あめちゃんの目標なんて、すぐに達成できるだろう。
じゃあ、あめちゃんはどうして俺を選んだんだ?
カッスは過去の記憶を辿る。謎の頭痛に苦しみながらも、考えることをやめることはなかった。
病室には電子音が、力無く響く。
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