JAL再生に学ぶSECIモデルを回す実践知 #ワイズカンパニー #SECI #世界標準の経営理論
どもっ、しのジャッキーです。本記事は、知識の創造の理論である「SECIモデル」に関する個人的な学びをアウトプットする一連の記事の第5弾です。
私は、去年(2021年)に、「世界標準の経営理論」を読んで、「すげぇ!」と思ったいくつかの理論の一つがSECIモデルでした。野中郁次郎氏と竹内弘高氏はSECIモデルを「知識創造企業」(日本語版1996年、リンク先は新装版)の中で描き、そこから約4半世紀たった2020年に続編として出版されたのが「ワイズ・カンパニー」になります。前著が知識「創造」について書いたのに対して、本書では知識「実践」について拡張したとしています。
本投稿は、「ワイズ・カンパニー」を読み解きながら、学びをアウトプットしていく連載記事となります。
前回までの振り返り
前回、前々回は、知識を実践するための知である実践知とは何ものか。アリストテレスから始まって、哲学から社会科学まで、どのような先人たちの考えに立脚しているのかを紐解いてきました。
改めて本書「ワイズ・カンパニー」のコアとなる3つの主張を再掲します
知識実践が持続的なイノベーションを支える
リーダーは理想主義的な現実主義者でなくてはならない
リーダーは理想を追い求めるだけでは不十分。リーダーは同時にプラグマティックである必要がある。現実と向き合い、状況の本質をつかみ、対局を見通すことができなくてはならない
今回からは、「第3章 知識創造と知識実践のモデル」に突入します。JAL再生、自転車部品のシマノ、エーザイなどのSECI実践の事例とともに、SECIスパイラルのモデルが提示される章となります。
おさらい:SECIモデル
詳細は第1回に譲りますが、知識創造の理論「SECIモデル」について再掲します。この「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」が、実際にどのようなものを指すの、事例が提示されます。
JAL再生におけるSECIモデルの事例
稲盛氏によるJALの再生は様々なメディアで書かれているので、よくご存じの方も多いのではないでしょうか。私はやはり、JALフィロソフィーがよく印象に残っています。
「ワイズ・カンパニー」の中でも、JALフィロソフィーとアメーバ経営の2つがSECIモデルで知識を創造していく様子を分析しています。以下が私なりに、本書の中で描かれているエッセンスをまとめてみました。
もともとJALフィロソフィーも、稲盛氏が京セラなどを経営する中で、培ってきた経営哲学です。それをJALの経営陣や社員との直接対話の中で継承していくプロセスが最初の共同化として描かれています。
最初は経営勉強会の後の懇親会(コンパと呼称)に参加しなかった参加者も最後には、深夜に及ぶまで盛り上がったといいます。そういういわゆる飲みニケーションが敬遠される傾向がありますが、全人格同士の知的コンバットと表現される、暗黙知から暗黙知の継承とは、身体を持つ人間同士のぶつかり合いというどうにもアナログな世界の重要性を、感じました。
そうやって、身体で感じ取ったものを言語化するプロセスが表出化であり、その言語化したものを実際の行動に移していくためのジブンゴト化であったり、計画や仮説立案であったら、ユースケース例を出したり、といったことが、連結化で、それを経て実際に行動に落とせるレベルまで分解していくことでもあるのだと、思いました。
新事業開発の伴走支援での実体験
私の実体験でいくと、新規事業開発プロジェクトの伴走支援をしている中で、プロジェクトのメンバーに、早い段階での仮説検証が重要、それは課題を抱えていると思われる人や、その関係者に、実際に聞いてみること、という形式知を説明して、「確かにそうだ」となっても具体的な行動がなかなか起きないことがよくありました。
そういうときは、どんどん分解していきました。
誰に聞くべきなのか?
→リスト化する。バイネームや企業名を出す。知り合いがいないか、いないなら、ウェブサイトから問い合わせ先や代表の電話番号を書き出す
何を聞くべきなのか?
→インタビューのスクリプトを一緒に書く。「NECの篠崎です。□□□□□□というプレスリリースを見てお問い合わせいたしました。~~~~~~~」といったレベルで書く。
時間を確保する
→どこに電話をするのか。電話を掛けたら、何を言うのか。まで準備をしたら。ここで、コールドコール(いわゆる突撃コール)をする、という時間と会議室を確保します。
実際、ここまでやっても動けない人は動けないこともあります。そういうときは、結局、。私がまずはコールします。ここで、だいたい、逃げ場がなくなり(苦笑)、しぶしぶコールを始めます。
私も、新規事業開発を始めたころは、それまでずっと法人ルート営業とかだったりすると、行先は固定的だったりするので、コールドコールなんてしたことなかったりして、心理的ハードルが高かったりします。
そんな些細なことも、形式知を暗黙知に変換する「行動」なのだと思います。少々、過激な表現をすれば、「大」NECの私が、なんで、いきなり知りもしない人に電話を掛けないといけないだ、って感じがありました(恥)
しかし、実際にかけてみれば、準備したスクリプトでは想定しなかったようなポジティブな反応があったり、ネガティブな反応があったり、想定外の課題が聞けたり、といった知的興奮があったりして、「あぁ、なるほど、これが仮説検証というものなのか」という暗黙知を形成した経験でもありました。
そして、しばらくすると、当初考えていた仮説はもろくも崩れ去り、別の課題が浮上してきたりして、「あぁ、なるほど、これがピボットというものか」と、暗黙知が蓄積していきます。
こうしてだんだん、「また、どこかで見た景色だな」というものが増えていったとき、それって要はどういうことなのか?これまで蓄積してきた暗黙知って、今の状況に対して、どう応用・適用できうるのだろうか、それはなぜなのだろうか?と他者・組織のメンバーへ伝える過程を通して、抽象化・汎用化する行為が、共同化・表出化なんだろうな、と思いました。
次回は、同じように、自転車部品のシマノ社の60年で6回まわしたというSECIの事例からの学びを書いてみたいと思います。
おわりに
このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie