日本的経営と #ダイナミックケイパビリティ は相性が良いのか?
どもっ、しのジャッキーです。本記事は、超重要経営理論「ダイナミック・ケイパビリティ」に関する個人的な学びをアウトプットするものです。
カリフォルニア大学バークレー校でデイビット・ティース教授に師事していた菊澤教授による"「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学"という書籍(以下、本書)からの学びをまとめていきます。今回は第8回です。過去記事の一覧は末尾に載せておきます。
直近の3回は、日本企業が目指すべき経営パラダイムとダイナミック・ケイパビリティがもたらす3つの有用性について、日本企業の事例からの学びをまとめてきました。
今回は、日本的経営の特徴を紐解き、それがダイナミック・ケイパビリティと密接に関係していることを示す、としています。
日本的経営の3つの市場との取引からみえる特徴
1990年代にはいってバブル経済崩壊後、日本経済はずっと悪化の一途にあります。この以前の日本経営は、一般的には終身雇用、年功序列、企業内組合などがあげられます。しかし、本書では、金融市場、中間財市場、労働市場との関係が重要だとし、日本的経営の特徴を以下のようにまとめています。
これらは、金融市場においては、株式市場の発展やコーポレートガバナンス改革が進んでいます。中間財市場においても系列取引は減少傾向にあるといわれています。労働市場についても、成果賃金制度や、ジョブ型採用などが進められています。
しかしながら、日本的経営は一定程度以上に、強く残っていると感じます。この日本的経営は、放棄すべきものなのか?というのが本書の投げかける問いです。
日本的思想の二面性
本書では、政治学者・思想家の丸山 眞男(1914-1996)の考えを引用し、日本の思想の特徴は「開かれた文化」と「閉ざされた社会」という逆説的な結合にある、とします。
外来文化の影響を大きく受ける一方で、社会関係においては執拗に日本的なものが残存するのが日本の個性だといいます。
これを丸山氏はバッソ・オスティナートという、「執拗に繰り返される低音型」という音楽用語を使い、上・中音部とが一緒に響くが必ずしも主旋律ではない、と表現しています。
日本的なものが低音であり、外来文化が上・中音部ということですね。
著者は、この日本的思想はダイナミック・ケイパビリティと相性が良いと考えています。つまり外的環境の変化に合わせて、既存の資源や資産を再構成することに思想的には長けているのではないか?と。
米独日の3か国の組織構造
では日本的経営とダイナミックケイパビリティの相性は本当によいのか?というところを、米独日の3か国の組織構造を職務権限のあり方という観点で比較し、読み解いています。
以下のように、米独日の組織構造を職務権限を「帰属」「内容」「期間」「正当性」から分析しています。
詳細は書籍をご参照いただくとして、日本に関しての分析をまとめます。
日本の組織における職務権限の特徴
日本においては年功序列の秩序に権限が帰属され、そこにメンバーが組み込まれている。その職務の内容はかなりあいまい。長期雇用ではあるが、特定の職務を長くやるよりもローテーションがなされることが多く、職務期間は短期の傾向がある。そして、業務の正当性はドイツなどは公的な資格に基づくことが多いのに対して、日本では、その企業内でのみ有効という側面が強く私的正当性が強い、と分析しています。
表中の(+)(ー)は、プラスは堅固な組織であり、オーディナリーケイパビリティが強く、マイナスは柔軟な組織であり、ダイナミックケイパビリティが強くなるとしています。
結論としては、日本の組織構造は、柔軟な組織で、ダイナミックケイパビリティが強い、というものです。
日本の組織構造が柔軟ってマジかよ!
いわゆる大企業に属する一個人として、日本の組織構造が柔軟だ、と言われると「マジかよ」と思ってしまいます(苦笑)特に、ドイツと日本の組織構造は、何かどこかで、似た者があるような先入観があったのかもしれませんが、こうやって分解して比較すると真逆であることにも驚きました。
私は2007年に社会人になったので、バブル景気というものを知りません。失われた10年だか、20年だかしか経験していません。なので、想像でしか語れないのですが
戦後は特に、復興という北極星に向け、日本をより良い国にする、ということに対して、一人ひとりががむしゃらに働いたのだと思います。そのときに、ジョブ・ディスクリプションなんて、関係なくて、必要なことがあったら、昨日までやっていたことと全然違う業務であっても、今日から取り組んでいたのだと思います。米国にビジネスを展開してこい!みたいな。
みんなが今日よりも豊かな明日に向けて、全社一丸となって業務に取り組んでいたのではないかと思います。
それが、経済成長もくるところまできて、バブルもはじけて、向かう先を見失ってしまった。そして自信も失ってしまった。そこに、外来の株主資本主義が入ってきて、「あぁ、こうしたほうがいいのかなぁ」と翻弄されているということなのかもしれない。
そんなことを思いました。ということで、次回は「株主主権の米国流経営パラダイムを放棄せよ」という著者の主張についてまとめます。
おわりに
このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie