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#ダイナミックケイパビリティ と多国籍企業化の関係

どもっ、しのジャッキーです。本記事は、超重要経営理論「ダイナミック・ケイパビリティ」に関する個人的な学びをアウトプットするものです。

カリフォルニア大学バークレー校でデイビット・ティース教授に師事していた菊澤教授による"「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学"という書籍(以下、本書)からの学びをまとめていきます。今回は第15回です。過去記事の一覧は末尾に載せておきます。

前回、薄い市場、つまり新事業開発やイノベーションの領域にありがちであろう「薄い市場」においては、垂直統合という戦略オプションが有効なケースが多く、その際に、ダイナミックケイパビリティが重要である、という学びを得ました。

今回は、第9章「ダイナミックケイパビリティによる企業の国際化」からの学びを抽出してみたいと思います。

ダイナミックケイパビリティによる企業の国際化

垂直統合で企業が大きくなっていく延長線上に、多国籍企業化があります。その研究の系譜が紹介されます。

企業の多国籍化の研究の系譜

競争優位論:スティーブン・ハイマー氏の研究

最初に紹介された研究は「競争優位論」です。企業が国際化する際の条件の一つとしては、進出先の市場が不完全競争状態にあることを挙げています(完全競争についてはこちら参照)。しかしながら、他国の市場に進出する企業は多くのハンディキャップをもつので、さらに次にしめすような競争優位性を持つときに進出をするとしています。

・低コストで資源を調達できること
・効率的に生産できること
・流通面で優れた能力をもつこと
・生産自体で差別化できること

しかし、これらの要素があったとしても、直接進出しないで技術提携のようなライセンシングをするという選択肢もありうるが、契約交渉の難易度や技術流出のリスクなどから直接進出をする、との説明がなされているといいます。

内部化理論:レディング学派の研究

次の研究は内部化理論で、これは進出する際に、直接進出以外の場合は、現地側との取引コストが高い。そのため取引コストを節約するために内部化し、直接進出を選ぶという考え方だと紹介されています。

折衷理論:ダニング氏の理論

レディング学派の総帥の一人ダニング氏の理論として、企業は次の条件を満たすとき多国籍化するとしているとします。

・所有優位:諸外国企業に対して、製品をめぐって優位性を所有する
立地優位:対象国の立地上の優位性がある
内部化優位:海外でそれを直接販売しても利益を生み出すことができる

多国籍化の研究のその先

ダイナミックケイパビリティ論のティース氏は、すでに多くの企業が多国籍化している中で、「多国籍企業は海外でいかにして持続的に成長できるのか?」という企業の国際マネジメントの問題を課題設定しているとします。

ダイナミックケイパビリティによる多国籍化の説明

ダイナミックケイパ論では、多国籍化行動は、国内で確立したオーディナリーケイパを海外に移転することと捉え、以下の3つのパターンに分類します。

1)そのケイパビリティがその企業固有の場合、当該国に直接進出
2)当該国に同様のケイパ保有企業がある場合
 パターン2-1:地場企業へ生産販売を委託
 パターン2-2:地場企業を買収

しかし、いずれの場合も、大きな取引コストを伴います。一方で、新たな市場に展開しないことは、機会損失を意味します。

つまりダイナミックケイパ論では、この「取引コスト vs 機会損失」について、国内と現地の差異を感知し、そこにビジネスの機会をとらえ、オーディナリーケイパを再構成・再利用するというダイナミックケイパを発揮した結果、多国籍化行動をとると説明しています。

多国籍企業をいかにマネジメントするか?

持続可能な多国籍企業のダイナミックケイパに基づく行動を以下の図のように説明しています。

ここでは、本社と子会社との菅県政が非常に重要だ、としています。このあたりは、知識創造理論「SECIモデル」のサイクルについての自転車パーツメーカ「シマノ社」の事例を思い出しました。例えば、以下のあたり。

「ワイズカンパニー 知識創造から知識実践への新しいモデル/野中 郁次郎, 竹内 弘高」
より篠崎作成

例えば、#2は、米国進出による多国籍かの際に、ミドルマネージャーたちに現地をキャラバンさせ、ハンズオンで知りえた情報をかたっぱしから言語化し、本社と連携したといいます。このような現地・現物・現実から得た暗黙知を形式知に変換し組織で共有化するか、まで含めてダイナミックケイパでいう「感知」なんだろうな、と思いました。

詳細に関心のある方は、以下、ご参照ください。

また、戦略、ダイナミックケイパビリティ、経営者の関係性を以下のように説明しています。なるほど、ダイナミックケイパはあくまで能力であり、戦略がその方向性を与える、というのは確かに、ですね。

多国籍化した日本企業の事例:YKK

本章の最後に、多国籍化した日本企業の事例としてYKKが挙げられています。YKKはイノベーションのジレンマを回避する、というダイナミックケイパの有用性の事例としても紹介されていました。そこんとこをまとめたときの記事からのまとめチャートを以下に再掲します(詳細はこちらの記事参照)。

YKKは海外進出当初は、本社が最高のシステムを開発し、現地へ配置するという中央集権制だったといいます。しかし、経営陣は、現地のオペレーターがそれらのマシンを効率的に使えないと意味がない、とすぐに感知し、現場主義へ変容させたといいます。

おわりに

ということで、今回は、第9章「ダイナミックケイパビリティによる企業の国際化」からの学びを抽出しました。特に、個人的には、以下が気づきでした。

・感知は、SECIのS:暗黙知の形成、E:形式知化のプロセスと似てる
・ダイナミックケイパはあくまで能力であり、戦略がその方向性を与える

このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie

<過去記事>

  1. 未完の超重要経営理論「ダイナミック・ケイパビリティ」変化する力はどう獲得するのか?

  2. 「ダイナミック・ケイパビリティ」が解決する問題とは?

  3. 「ダイナミック・ケイパビリティ」は組織の不条理をどう回避するのか?

  4. 「ダイナミック・ケイパビリティ」が提示する日本企業が目指すべき経営パラダイム

  5. 「ダイナミック・ケイパビリティ」からみる富士フイルムの既存技術転用の変革を1枚にまとめてみた

  6. 任天堂が独占していたゲーム機業界でソニー独り勝ちを実現した共存戦略

  7. YKKのイノベのジレンマ回避戦略とパラダイムシフト×環境変化×経営理念 #ダイナミックケイパビリティ

  8. 日本的経営と #ダイナミックケイパビリティ は相性が良いのか?

  9. イノベーションは資本主義から自由を守ることかもしれない

  10. ダイナミックケイパビリティ に至る経営理論の系譜

  11. (番外編)合理的に失敗してしまう不条理にダイナミックケイパで立ち向かえ

  12. ダイナミックケイパビリティの誤解とセンスメイキング理論

  13. ダイナミックケイパと補完関係にある取引費用理論についてまとめてみた①

  14. ダイナミックケイパと補完関係にある取引費用理論についてまとめてみた②

  15. ダイナミックケイパビリティと企業の垂直統合の関係

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