コーポレート・エクスプローラーを経営企画×新事業開発者が読んでみた第7回
ども、しのジャッキーです。2023/2/3に発刊された「両利きの経営」の続編の日本語版「コーポレート・エクスプローラー」の学びの抽出記事を書いています。
私自身、2015年から2021年くらいまで新事業開発の担当者として仕事をしていました。2022年から経営企画となってからも、新規事業の探索と組織変革のために、新事業開発のお仕事にも手を出しています。自分ごととして、本書から学びを抽出していきたいと思います。
コーポレート・エクスプローラーの構成
Part1 戦略的抱負
1 社内イノベーションの利点 ・・・第1回の記事
2 新規事業はCEが動かす ・・・第2回の記事
3 戦略的抱負の条件・・・第3回の記事
Part2 イノベーションの原則
4 着想―新規事業のアイデアを出す・・・第4回の記事
5 育成―検証を通して学ぶ・・・第5回の記事
6 量産化―新規事業のための資産を集める・・・第6回の記事
Part3 両利きの組織
7 探索事業部・・・★今回の記事★
8 探索事業システム
9 CEのリスクと報酬
Part4 探索事業のリーダーシップ
10 探索事業を妨げる「サイレントキラー」
11 二重らせん―イノベーションと組織変革を「両立する」リーダー
12 行動する覚悟―新規事業の量産化を決断するリーダー
CE:コーポレート・エクスプローラーの定義
以下、再掲
*CE: Corporate Explorer
Part3 両利きの組織
Part3に突入しました。Part2はイノベーションを起こすためのプロセスについてかたられてきましたが、ここからは組織論の話となります。スタートアップとことなり、すでに柱となる事業が存在している事業会社には、その組織能力を獲得するにあたって形成されてきた、独自の運営のリズムがあります。イノベーションをもとめて事業探索を行う組織には、それとは異なる運営リズムが求められます。
本書の考え方は、探索事業と既存のコア事業を分離する「両利きの組織」です。この際のポイントは、完全に分離するのではなく、コア事業のアセットを探索事業を行う組織が活用できるように、以下に両者の接点を適切に管理できるかにあります。
第7章:探索事業部
両利きの組織では、コア事業と新事業の成長の2つを同時に追う、二重戦略をとります。本書このために必要な仕組みを「同じ成長目標を持つ経営陣や部署の協力のもと、裁量権とコア事業の資産活用を両立させる取組」と定義しています。
組織構造の選択
買収などによって獲得するスピンイン、新事業を独立させるスピンアウトなど、両利きの組織以外にも選択肢はあります。これらの選択は、そのイノベーションと自社との関係によって、変わってきます。本書では以下のように整理しています。
そのイノベーションが自社の将来に欠かせない戦略的なものであり、かつ、その量産化の成功に自社のコア事業の資産が生かせる場合に、両利きの組織が適している、としています。
両利きの組織、3つの型
両利きの組織のベストプラクティスには、「フォーカス型」「ボトムアップ型」「トップダウン型」の3つの型が整理されています。
フォーカス型
特定の事業機会に注力して推進する手法。単一のプロジェクトやビジネスを成長させることに集中。事業の提案者が最初にリードを取り、その後専任者としてプロジェクトを継続。このモデルの利点は、迅速な事業推進が可能なこと。一方で、着想の幅が狭く、検討に値する新たな事業案が少なくなる可能性がある。主に量産化の段階で利用されることが多く、プロジェクトが進行している段階で最大の効果を発揮する。
ボトムアップ型
社員からのアイデアや意見を集約し、それをもとに事業機会を生み出す方法。現場の従業員の洞察や意見を重要視し、初期段階では提案者が複数の役割を持ちながら、成長事業の候補を挙げていく。このモデルは、組織内の幅広いアイデアを活かし、新たな事業を発掘できる点が強み。ただし、明確な「ハンティングゾーン」を設定しないと、戦略の焦点がぼやけてしまうリスクがある。
トップダウン型
経営層が戦略的に意思決定を行い、新規事業のポートフォリオを作成・管理する手法です。専任者を最初から配置し、コア事業とは異なる事業機会を体系的に探索する。このアプローチは、全体的な事業戦略を統一し、効率的に事業機会を評価することができるが、新規事業がコア事業から離れすぎると、既存の資産を活用できないリスクがある。
選ぶべき組織構造は、イノベーションの内容とその性質に応じて変わる、としています。
しのジャッキーの学び
書籍の中で、ボトムアップ型、トップダウン型の事例として、当方が所属しているNECの事例も紹介されています。
フォーカス型からの学び
この3つの型を見ながら、私自身のキャリアを振り返ると2011年、通信事業者向けのクラウド事業のグローバル展開の組織に異動したことが最初だったと気づかされました。これはまさに、フォーカス型の新事業でした。
書籍の中で懸念点として「着想の役割が小さく、検討に値する事業案があまり生まれない可能性がある」と書かれていましたが、その通りで、第4回の記事の中で取り上げられている「アイデアへの執着」「ソリューションの罠」に組織的にはまっていたように思います。
結果的には、この組織は2年ほどで解散となりました。成功するにしても、失敗するにしても、このスピード感で組織をつくって閉じることができたことは、それはそれでスゴイことだったのではないか、と思います。その後も、2年ほど、フォーカス型の組織をいくつか経験しました。
ボトムアップ型からの学び
そして、2015年、ボトムアップ型からスタートし、でイノベーションを起こすミッションを持つ組織に人材公募制度を利用して異動しました。このころに感じていたことは、本書で言うところの「イノベーション・ズー」であり「ハンティングゾーン」でした。これらについては、第3回の記事で取り上げました。
会社が、どのようなイノベーションを求めているのか、その「ハンティングゾーン」を適切に定めていないと、玉石混交の「イノベーションの動物園」が生まれます。NEC自身、その時々で、ハンティングゾーンを定め、取り組みの取捨選択をしながら新たな成長事業創出の仕組み化を進めてきています。
一方で、私自身が関わったプロジェクトは、必ずしもそのハンティングゾーンにハマっていたか、というとそうではないことも多かったように思います。一つ一つのチャレンジから、個人として学び蓄積されるものは多かったです。しかし、私自身が関わった案件からは、組織的に蓄積されるものは何なのか、思い悩むことも多かった、というのが個人としての経験でした。そういった思いが、次のキャリアにつながりました。
トップダウン型からの学び
2021年頃から、トップダウン型に移りました。私のプロフィールのページにも書いてるのですが、当初はフューチャーマーケットインテリジェンス本部、その後、ソートリーダーシップ部、経営企画部と所属組織の名前が変わったり、分裂したり、その中で兼務が付いたり外れたりをしながらも、新事業のカタマリを生み出す活動に取り組んできました。
例えば、現在、カーボンニュートラルビジネス推進PMOグループという組織に兼務で所属しています。この組織については、以下の記事のNEC藤川CFOの言葉を借りたいと思います。
フォーカス型や、ボトムアップ型の組織にいたときと、トップダウン型の組織にいるときで、大きな違いは、経営との距離です。これは、自分自身の職位が上がっていることも大きいかもしれませんが、トップダウン型では経営との距離が近いです。そのため、求められる視座が高く・広くになります。これまでの個別の新事業開発のテーマでも、もちろん視座を高く、広くを心掛けてきました。しかしながら、当たり前ですが視点は、常に顧客であり価値です。
一方で、トップダウン型で目指すことは、事業ポートフォリオをつくりだすことです。経営層という投資家の見ているアセットをどのように配分して事業ポートフォリオの組成、管理・運営していくのか?という組織開発の視点の比重が高いように感じています。
おわりに
書籍の中では、表形式で、利点や懸念点が短い文章でしか語られていなかったりするのですが、自分自身のキャリアを振り返って、生身の実体験として、ビンビンくるものがありました。
以上、今回は、Part3 両利きの経営の最初の章である「第7章 探索事業部」についてまとめました。以下の新任マネージャーの心得というマガジンにこういった記事をまとめているので、もしよかったらのぞいてみてください。本記事への「スキ」やアカウントのフォローをしてもらえると励みになります!
以上「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie