8年をともにした「大企業イノベーション」10年の軌跡を振り返ってみた
ども、しのジャッキーです。2023/12/4に発刊された「大企業イノベーション/北瀬聖光」について書かせてください。
本書はNECという伝統的な大企業において10年以上にわたってコーポレート新事業開発に携わってきたNECのCorporateSVPであり、共創型R&D事業を推進するBIRD社の代表取締役でもある北瀬聖光氏の初の著書となります。
NECから卒業した人も含めて、北瀬さんの薫陶を受けた人たちは、ときに自らを北瀬チルドレンという言葉で語ることがあります。実は、私もそんな一人です。詳細は本noteのプロフィールのページに譲りますが、私は2015年、社内の人材公募制度を使って、モバイルキャリア様向けのソリューションの営業販促の部門から、新規事業開発の部門へ異動しました。
2015年5月でした。人材公募の面接の部屋に行くと、面接官は3人。その一人が北瀬さんでした。ちなみに、もう一人は現在NECのCFOを務める藤川さんでした。そのとき、北瀬さんからは、「新規事業はしんどいことが多い。そういうときは篠崎さんはどうしますか?」という質問を受けたことを覚えています。その時の私は回答はのちほどご紹介します。
本書では、それから10年の大企業だからこそできるイノベーション、コーポレート新事業開発を成功に導く4つの鍵が語られています。多くの大企業が陥っている問題点は以下のようなものです。
本書では上記のような問題を解決し、イノベーションを起こしやすくする4つの鍵という形で、その経験が1冊にまとめられています。
それは2013年4月に、経営の強い危機感のもと新規事業の創出と保守的な組織文化の改革を目的として設置されたビジネスイノベーション統括ユニット(BIU)から始まる10年のストーリーでもあります。
2015年11月、無事、新事業開発の部門に異動することが叶ったことは、私の人生において大きな大きな岐路でした。本書「大企業イノベーション」が紡がれていく糸のほんの一端でも担えたことは、私にとって自信であり誇りです。
本記事では、本書を読みながら、私自身が直接・間接的にともにした8年を振り返った気付きを書いてみたいと思います。
第1の鍵 事業ビジョン
第1鍵 事業ビジョン 初動で新規事業のビジョンとゴールを明確にする、からは以下を引用します。
これは、両利きの経営の続編「コーポレート・エクスプローラー」を紹介している当方のnoteでもご紹介しました。同書の中では、戦略的抱負(Strategic Ambition)と呼ばれているものが紹介されています。併せて読んでいただくことで理解が深まると思います。
忙しい幹部や事業責任者などの方と、短い時間の中で効果・効率的に目線を合わせること自体がタフなプロセスですが、その効果は計り知れないものがあります。また、組織として動きやすくなるという効果だけでなく、自分自身が足を前に出すあと押しになる、という効果もあります。
第2の鍵 チームビルディング
ゴールにあったチームを編成し、新規事業開発を担える人材を継続的に育成する
NECでは2017年に新規事業開発に携わる人材として新たに「ビジネスデザイン職」を定義しました。当時、その過程は、どこか雲の上で行われているものではなく、私自身も新事業開発に携わる人材にはどのような能力が求められるか?何度も問われる機会がありました。
本書の中では、ビジネスデザイン職において重要な「3つの価値観」「基礎コンピテンシー」「基礎スキル」が紹介されています。詳細は書籍に譲りますが、基礎コンピテンシーでは以下の5つがあげられています
北瀬さんから直接指導を受ける機会も多かった新事業開発の組織へ異動した当初、面談で何度も、何度も投げかけられた問いがありました。
それは、「で、ジャッキーはどうしたいの?」です。
*会社でもジャッキーと呼ばれていますw
それまでの仕事では、基本的に、SE(システムエンジニア)さんや営業組織からの問い合わせや入札などを起点とした活動が主で、自分がどうしたい、というよりも外から与えられるお題にいかに最適なQCD(品質、コスト、納期)で応えるか、という仕事のスタイルが主でした。
もちろん、そこに自分がどうしたいか?が入り込む余地はありました。が、そう今思えるのも、新事業開発の組織にきて、散々「で、ジャッキーはどうしたいの?」と問われて続けてもらったからだと思います。
自分自身で自分自身に問うToughさ、仮説検証を通して学び続けるAgility、貪欲にステークホルダーに声を獲得するPublicity、その過程を支えるものがOwnershipであり、その圧倒的な当事者意識は、触れる人に伝播し、感化します。それが人それぞれのCharmingさの源泉なのだと思います。
第3の鍵 評価制度改革&第4の鍵 事業開発プロセス
第3の鍵 評価制度改革「既存事業と異なる独自の評価制度を築く」では、技術成熟度(TRL:Technical Readiness Level)とビジネス成熟度(BRL:Business Readiness Level)の両面から新規事業開発プロジェクトを評価する制度について解説されています。
第4の鍵 事業開発プロセス「新規事業開発ならではの共通言語をつくる」では、「GENERA」「IDEATE」「DEVELOP」「LAUNCH」「OPERATE」の5つからなるNECの新規事業立ち上げのプロセスについて解説されています。
一時期、私自身も新規事業開発のプロセスの整備や、新任者への研修の講師を担当するなど実践と形式知化の一旦を担い、思い入れのあるものです。新規事業開発を語る共通言語として新事業開発のプロセスがあることで、事業創出の入口・出口の各種施策の組み合わせを整備してこれたといえます。
図の出典のNEC経営方針・事業説明会の一つである「NEC Innovation Day」の資料も、「大企業イノベーション」と合わせて参照いただけると学びが深まるのではないかと思います。
私自身は現在、あるテーマで、第4の鍵の最後に紹介されている新規事業開発PMO(Project Management Office)に関わっています。書籍の中で、”NECの新規事業開発PMOは、BIU設立以来のさまざまな取り組みやノウハウの集積を集大成するものとして、NECからイノベーションを創出していく拠点を構築するもの”と語られており、身の引き締まる思います。
最後に
冒頭に、人材公募の面接で北瀬さんから問いかけられた「新規事業はしんどいことが多い。そういうときは篠崎さんはどうしますか?」という質問の話をしました。
私はそのとき「アーリーサクセス、アーリーウィンをどうしたら達成できるかを考えます」と答えました。これは、私の座右の書の一つの「V字回復の経営/三枝匡 」の中で変革の実行においては「成果の認知」において達成感不足の壁があり、アーリーサクセス、アーリーウィンを盛大に祝う、という印象なシーンが頭に浮かんで答えたものでした。
新事業開発で有名なリーンスタートアップのBML(Build-Measure-Learn/構築-計測-学習)の学習サイクルを回すにおいても、以下に「学ぶべきこと」を設定し、学び方を考え、それに必要なものを作るか、そして学びを祝福することの繰り返しです。
当方のnoteでは、以下で、V字回復の経営を取り上げています。本書は2023年4月に、改版が出ていますので、これから購入するかたも、既読の方も最新版の購入(こちら)をおすすめします。
「大企業イノベーション」のエピローグにこう書かれています
「で、ジャッキーはどうしたいの?」と何度も問われたと書きましたが、もう一つ、北瀬さんからよく受けたアドバイスがあります。それは、「ジャッキーは、考え過ぎだね。考えて、行動に移すまでの間にタイムラグがある」というものでした。
北瀬さん、その頃から考えると、自分もだいぶ脚力がついてきました。「大企業イノベーション」発刊、ありがとうございました。
以下の新任マネージャーの心得というマガジンにこういった記事をまとめているので、もしよかったらのぞいてみてください。本記事への「スキ」やアカウントのフォローをしてもらえると励みになります!
以上「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie
#大企業イノベーション #NEC #新規事業開発 #北瀬聖光