イノベーションは資本主義から自由を守ることかもしれない #ダイナミックケイパビリティ
どもっ、しのジャッキーです。本記事は、超重要経営理論「ダイナミック・ケイパビリティ」に関する個人的な学びをアウトプットするものです。
カリフォルニア大学バークレー校でデイビット・ティース教授に師事していた菊澤教授による"「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学"という書籍(以下、本書)からの学びをまとめていきます。今回は第9回です。過去記事の一覧は末尾に載せておきます。
前回は日本的経営、日本の思想の特徴、米独日の組織構造の分析から、日本的経営とダイナミックケイパビリティが相性が良いということをまとめてきました(一部、個人的には十分に腹落ちしていませんが(苦笑))
今回からは、ダイナミックケイパビリティと相性の良いはずの日本的経営は、米国流の株主主権の経営パラダイムを取り入れていくことで翻弄されていることを読み解きます。
株主主権の米国流経営パラダイムを放棄せよ
著者の主張は、日本の経営は、米国流経営パラダイムの取り込みによって混乱をきたしていることに対して警鐘を鳴らすことにあります。以下、引用します。
以下、第4回(記事はこちら)でまとめた、本書が提示する日本企業が目指すべき日本的経営パラダイムです。第5回のコダックと富士フイルムの明暗を分けたのは、コダックは短期的な利益最大化を求めるが故に、変革の取引コストを大きく見て、イノベーションに十分なチャレンジができず、コスト削減などに偏重し、自壊しました。
株主資本主義の限界
本書をよんでいて、なるほどと思ったことがあります。それは新古典派経済学に関しての考え方です。その考え方が目指す姿は完全競争と呼ばれる状態です。「世界標準の経営理論/入山章栄」によれば、それは以下の条件を満たした状態です。
完全競争状態
条件①:市場に無数の小さな企業がいて、どの企業も市場価格に影響を与えられない
条件②:その市場に他企業が参入もしくは撤退する際の障壁がない
条件③:企業の提供する製品・サービスが、同業他社と同質である(差別化されていない)
条件④:製品・サービスをつくるための経営資源が他企業にコストなく移動できる
条件⑤:ある企業の製品・サービスの完全な情報を、顧客・同業他社がもっている
新古典派経済学の目指すところは、国民にとって見たときに、最も好ましい資源配分の状態です。この状態が意味することは、個別の企業にとってみれば、利益がゼロに限りなく近づくことを意味します。つまり、全体効率的で、個別非効率という不条理な状態に陥っています。
完全競争じゃダメなのか?
でも国民にとって最も効率が良い状態、すばらしいじゃないか、その何が悪いのか?とも思うのですが、これって、国民が個々の企業で働く存在でもあると考えると、その給与の原資としての企業の利益も減っていくことを指します。つまり、個人という意味でも、全体効率的で、個別非効率なんだと思います。
また、もっとまずいのは、これはイノベーションを阻害します。社会によりよい付加価値を目指す必要も、そのための原資となる利益もなくなっていきます。
本書の著者の菊澤氏はピーター・ドラッカー氏の言葉を借りて以下のようなメッセージを投げかけます。
行き過ぎた株主資本主義は、他律的・従属的になる、とすると、それって拡大解釈すると、資本主義というアルゴリズムにコントロールされる歯車としての個性を失った、個人、企業という姿が頭に思い浮かんでしまいました。
破壊的イノベーションとは、資本主義というアルゴリズムから、自由を獲得する行為なのかもしれないですね。
次回からは、完全競争状態の均衡を突き崩し、企業の差別化を目指したマイケル・ポーター氏の競争戦略(SCP理論)やジェイ・B・バーニー氏の資源ベース論(RBV: Resource Based View)を解説するとともに、その先の概念であるダイナミック・ケイパビリティの位置づけについて、学びをまとめていきたいと思います。
おわりに
このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie
<過去記事>
日本的経営と #ダイナミックケイパビリティ は相性が良いのか?