持続的イノベーションには開かれた組織が必要だった #ダイナミックケイパビリティ
どもっ、しのジャッキーです。本記事は、超重要経営理論「ダイナミック・ケイパビリティ」に関する個人的な学びをアウトプットするものです。
カリフォルニア大学バークレー校でデイビット・ティース教授に師事していた菊澤教授による"「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学"という書籍(以下、本書)からの学びをまとめていきます。今回は第17回です。過去記事の一覧は末尾に載せておきます。
前回、前々回は、企業の垂直統合、さらにその先の国際化、について取引費用理論、ダイナミックケイパビリティからどのように捉えられるのか、についてまとめてきました。
今回は、第9章「ダイナミック・ケイパビリティが生み出す新パラダイム」からの学びを抽出してみたいと思います。
進化論的ダイナミック・ケイパビリティ論
日本企業のためのダイナミック・ケイパビリティ論
オーディナリーケイパとダイナミックケイパの階層性
少々学術的ななかなかスパッと理解しづらい部分もあるのですが、オーディナリーケイパとダイナミックケイパの階層性という概念が示されます。私なりに意訳をすると、具体と抽象の行き来が大事、ということです。
この図は、問題解決のプロセスと2つのケイパビリティの関係を重ね合わせています。ある問題が提起されたときに、その解決策が提示されます。このときはまずオーディナリーケイパが発揮されます。
この時、この問題を、従来の延長線上の解決策で取り組むので本当によいのか?という論証機能が建設的批判の機能であり、それがダイナミックケイパだとしています。結果、現実世界の変化から、問題の見え方が異なってきていると感知した場合、問題1は、問題2として別の見え方が現れる。こういう形で、組織は変化していく、というように描かれていました。
進化論的ダイナミックケイパ論による不条理回避
ダイナミックケイパはどのようにして形成されるのか?という問いに対して、著者は、組織が批判的な態度を是とする文化であるかどうかが重要だと主張します。
批判的な態度を是としない伝統を持つ企業では、自社のこれまでのやり方と外部環境のギャップが大きなっても、それを無視しようとする力(=取引コスト)が大きすぎて、その場しのぎの対応に始終してしまい、変化することができない、とします。
一方で、批判を是とする組織では、先ほどの問題解決のプロセスの通り、批判の機能によって、新しい問題設定をすることで変化を促すことができます。
では、批判に開かれた組織とはどういう特徴をもつのか?著者は以下のようにリーダーが自分が不完全であることを認め、メンバーに自由と責任を伴う権限移譲ができること、だとしています。
気づき(1)恐れのない組織
組織のリーダーが自分が不完全であることを認めるというところから、「恐れのない組織」を思い出しました。組織の心理的安全性について解説したヒット作ですね。恐れのない組織とは、まさに批判にも開かれた組織であり、「何をいってもよい」という心理的安全性が担保された組織のことだと思いました。
本書の個人的ハイライトは、フィアレスな組織をつくるためのリーダーのツールキット」でした。以下のように「土台をつくる」「参加を求める」「生産的に対応する」という三つの要素があります。この「参加を求める」の1つ目のリーダーのアクティビティが「状況的謙虚さを示す/完璧でないことを認める」とあります。ダイナミックケイパビリティの経営学の主張と完全一致していますね。
「恐れのない組織」については、以下にまとめ記事を書いていますのでご参照ください。
気づき(2):進化論的な見方
ダイナミックケイパビリティと併読していた組織創造理論の進化系SECIスパイラルを描く「ワイズ・カンパニー」からの学びを思い出しました。
この書籍のテーマも持続的イノベーションです。知識が組織の個々のメンバーに落とし込まれるSECIモデルの最後の内面化(Internalization)というプロセスに関しての学びを深める中で、エコロジーベースの進化論の考え方を当てはめることで非常に腹落ちしました。
生物界においては、多様な種(企業)が生まれ、その時々の環境にフィットした企業が生き残り、繁栄するが、やがて環境が変化し淘汰される、という循環を示しており、企業の栄枯盛衰は必須であると説いています。
しかし、生物とことなりビジネスでは「企業組織が最小単位ではなく」、人材・情報・知見など「多様なリソース」があり、企業内部の人材・情報にもVSRSメカニズムが働きます。
これは、企業内の人・情報の組み合わせや流れを変えれば「企業は変えられる」可能性があるということです。あえて例えれば、企業における遺伝子組み換えですね。「世界標準の経営理論」では、変化のために「人材の多様性」とそれを活かす「開かれた情報の選択プロセス」が求められる、としています。
また出てきました「開かれた組織」の要素ですね。では、具体的にどうすればよいか?というあたりは、以下の記事で学びをかなり書いたのでご参照いただければ幸いです。
おわりに
ということで、17回にわたって学びをまとめてきた"「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学"からのアウトプットシリーズも今回で最終回となりました。「世界標準の経営理論」ではふわっとしか語らえていなかった本理論の内容を系譜や事例も含めて深く学ぶことができました。
また、今回も紹介した併読していた「ワイズ・カンパニー」のおかげで、持続的イノベーションのために必要なことについて、かなり自分の中で知識的基盤ができて非常に勉強になる1冊でした。
このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie
<過去記事>
日本的経営と #ダイナミックケイパビリティ は相性が良いのか?
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