#ダイナミックケイパビリティ と企業の垂直統合の関係
どもっ、しのジャッキーです。本記事は、超重要経営理論「ダイナミック・ケイパビリティ」に関する個人的な学びをアウトプットするものです。
カリフォルニア大学バークレー校でデイビット・ティース教授に師事していた菊澤教授による"「ダイナミック・ケイパビリティ」の経営学"という書籍(以下、本書)からの学びをまとめていきます。今回は第14回です。過去記事の一覧は末尾に載せておきます。
前回、前々回は、第8章「ダイナミックケイパビリティによる企業の巨大化」について学びを抽出するにあたって、大前提となる「取引費用理論」に関して、「世界標準の経営理論」をもとに学び直し記事を書きました。今回からは、本書における取引費用理論とダイナミックケイパビリティの補完関係について学びを抽出していきたいと思います。
ダイナミックケイパビリティによる企業の巨大化
経営学・経済学において企業は以下の3つの方向で巨大化する
水平統合:スケールメリットの追求、独占化
多角化:範囲の経済(シナジー効果)
垂直統合:取引費用理論が説明するのはこのパターン
企業が、長期取引契約のような形態ではなく、統合(M&Aなど)をする必要があるのかは、前々回のnoteで扱ったように、ホールドアップ問題が生じるからでした。
厚い市場か、薄い市場かによる違い
ここで、垂直統合するかどうかを検討する際に、フィールドとなる市場の厚さ・薄さという表現が出てきます。市場が薄いとは、取引相手が少ない市場の状況のことで、この「市場の薄さ」の方が取引費用うんぬんよりも企業の垂直統合化のより強い要因になるといいます。
薄い市場にチャレンジするときの戦略オプションを以下のようにまとめています。
また、アップルがアップルストアを直営でやる理由も、アップルという絶えず革新的な新商品を次々と販売する企業において、その特徴を説得力のある形で説明できる流通企業(販売ケイパビリティ)を見つけるのが難しい薄い市場だったためだと説明しています。
非ゼロベースではどうするか?
実は、上記で書いていたのは、ゼロベースから事業に取り組む場合のことでした。しかし、往々にして、すでに何かしらの関係する選択がなされている状態から意思決定をしないといけないケースが多いでしょう。
例えば、これまでの内燃機関ベースの自動車を製造していた自動車会社が、EVという大きなトレンドがでてきたときに、どうするか?これはすでに内燃機関の自動車製造という選択をしている状態です。
そしてこの既存の考え方を変えるための取引コストが巨大なとき、第3回のnoteでまとめたように、これまでのやり方を守るほうが合理的となり、新しいチャレンジを行わない不条理に陥ります。
このとき、企業に、環境変化を感知し、そこに事業機会を発見し、既存アセット・能力を再構成・再配置・再編成する能力であるダイナミック・ケイパビリティがあれば、変化しないことによる機会コスト(逸失利益)を大きく認識し、それを補足するための行動をとることで変容を促すことができる、とします。
バーバリーと三陽商会
この非ゼロベースのダイナミックケイパビリティ発揮のケースとして、バーバリーと三陽商会の関係が挙げられています。
バーバリーは2009年に当初2020年までだった三陽商会とのライセンス契約を5年短縮した。これは、英国本社が企画する高級な商品に統一し、ブランド価値を向上させていくことを目的に直営店を増やす垂直統合を目指す戦略を採用したからだとします。
これも先のアップルストアのように販売ケイパビリティの問題と想定しています。あmた、バーバリーは、直営店化による成功をスペインですでに納めていた(Sense, Seizing, Transformingをすでに経験済み)こともあったとします。
おわりに
ということで、今回は、薄い市場、つまり新事業開発やイノベーションの領域にありがちであろう「薄い市場」においては、垂直統合という戦略オプションが有効なケースが多く、その際に、ダイナミックケイパビリティが重要である、という学びを得ました。
次回は、第9章「ダイナミックケイパビリティによる企業の国際化」からの学びを抽出してみたいと思います。
このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie
<過去記事>
日本的経営と #ダイナミックケイパビリティ は相性が良いのか?