面白がろうとする姿勢【THE W 2021】

お笑いファンを毎年マイナスの方面で活性化させる賞レースと言えばR-1に次いで、先日決勝が放送されたTHE Wですね。

色んな都合で、あおりと講評を飛ばしながらネタだけさらっと見ました。講評聞いてない分よりフラットな状態で自分の意見を書けるような気がします。


まず前提なのですが、全員ピンマイクがしっかり首元に付けられているので、声がはっきり聞こえる分、テレビショー色が強く出ており、賞レースとしては緊張感が足りないかなという印象を強く受けました。また、大会終了後にある方が「今年もネタ中にネタ以外をカメラで抜いていなかった」というツイートをしており、後になって気付かされました。他の賞レースでは審査員の怪訝そうな顔や笑っている顔が視聴者に取ってはテンポがずれたり、ネタの大事な所が放送されていなかったりと問題点の一つですからね。そういう点では出演者思いの番組作りをしているのかもしれません。

その反面、後述しますが、茶々氏のネタは本人が喋らず、音声を流しながらのネタですので、その音声のボリュームがやや小さく、私には良く聞き取れなかった部分が多かったです。ここは後で見返せば良い問題なのですが・・・。

それでは各組を振り返ります。


【ヨネダ2000】漫才:友達に謝る練習

M-1グランプリ3回戦でやったネタの4分尺バージョン。

やはり勝ち抜き形式の大会において、余程名の知れた組でない限り、A-1から4回勝ち抜くことはほぼ不可能だと思われます。そういう点に置いてはいくらお笑いファンが3回戦の動画を評価していようが、今週末にM-1グランプリの敗者復活が控えていようがほぼ勝ち目はありません。どうせ勝てない状況に置いて既存のネタを披露するのは賢い戦い方だと思いました。まだ知らない方がM-1の動画を視聴し、敗者復活への注目を浴びやすくなる可能性もありますし、来年のTHE Wで勝利に近づく為の顔見せとしても機能したのではないでしょうか。本人達がそれを意図しているかは分かりませんが。

そして、実際のネタなのですが、ざっとタイムラインを眺めると「意図したところがあまりウケてなかった」とヨネダに期待していた方が悔しがっている様子が見られます。が、私としては決勝の緊張からか、もしくは若手が故に笑い待ちをする技術が足りていないのか、客との歯車が若干合っていない様な気がしました。良く笑う観覧客なのでトップバッターということはあまり理由にはならないのではないでしょうか。あと女性客相手に長渕ネタは少し理解できなかったのかもしれません。

完成度の高い3回戦の動画を何度か見てから4分尺で見ると長渕のくだりは不要に感じてしまったな。

とにかく前述の通り、M-1の敗者復活と次年度以降の活躍に期待ですね。

特に他意の無い数字を載せるとしたら86ですかね。


【紅しょうが】漫才:デートの付き添い

THE Wの恩恵を受けている組だと思います。ただM-1では振るわず3回戦敗退。M-1の成績で言うとヨネダに軍配は上がりますが、Mをひっくり返すとWなのでまあそういう感じで・・・。

全体的に今までのベストは出せてない感じですし、ボケやすい様に無理矢理な場面を作っている印象を受けました。

ただ、知名度もそれなりにありますから、ヨネダとここの出順が逆でも結果は変わらなかったと思います。

こちらもなんとなく数字を載せるとしたら85がしっくりきます。


【茶々】コント:親子に張り合う

やや玄人向けのネタのように感じました。

客の想像力に依存するので、最後まで何をやっていたのか分からない人も少しはいるのでは無いでしょうか。私も途中まで何がしたいのかよく分からずソワソワしていました。

予選ではしっかりウケてそう。

全体的に山場がなく緩やかに終わってしまったのでパワー系の漫才相手には為す術もありません。

放送を1度見るだけでは充分に面白がることが容易ではないタイプのネタなので繰り返し録画を見てみたいと思います。

そんなわけでなんとなく76という数字を置いておきます。

投稿前にイヤフォンをして再視聴しました。笑わせようとしている部分があからさまで冷める部分と、親子と張り合うというボケの一辺倒だったことが物足りなさを感じました。オチの脱糞は張り合いから一歩逸れた奇行で、それなりに笑えそうだったので一応80に訂正しておきます。


【TEAM BANANA】漫才:むかつく人

一度しか見ていないので記憶違いかもしれませんが、こちらもM-1の3回戦でやったネタでしょうか。

エンタでやるネタのような印象です。去年は中傷の対象をシンデレラに絞っていたので全体的にまとまっていて引き込まれたのですが、今回はとっちらかっていて大きな山が無かった。劣化やすともという印象。

紅しょうがにはやや劣るので84でしょうか。


【オダウエダ】コント:焼き鳥屋

馬鹿まっしぐらで小道具多い系のコントは好みです。

ただ、手数の少なさがややもったいなさを感じます。

BブロックだったらAマッソのコントに負けてしまっていたかもしれません。

運も実力の内だと思います。

あと、コントの入りに「~のコント〇〇」って言うことを最近やらないのがスタンダードになっていますが、コントではあるもののネタの中で意気込みを感じられるのでグッドです。

結構笑いましたがキングオブコントのレベルと比べると埋もれてしまうので88が限界です。


どちらにしてもヨネダよりもオダウエダの方が私は良いと思いました。


【天才ピアニスト】コント:ドアの点検

全体を通して古くささを感じました。

これもエンタのコントみたい。

ますみ氏の憑依型のコントかと思えますが、割と他のネタも同じ様なキャラなので漫才から逃げているような印象を受けてしまいます。(彼女らの漫才結構好きです)

あと、ゾンビやロッジなどの死亡フラグネタはもうやり尽くされていて味が薄いです。

82といった形でしょうか。


【女ガールズ】漫才:隠し事

台本は面白いです。センターの滑舌が絶望的でツッコミに向いていないと感じました。

また、3人である必要は全く無く、コンビで漫才をした方がテンポ良く勧められるのではないかと感じました。そして、前半の隠し事をバラされるという展開から腰を折って後半の野球の話題に移った辺りからちょっと厳しくなってきました。

プロのベタなコントに勝てるわけも無く72といったところでしょうか。

テンションの高い変ホ長調といった印象です。


【ヒコロヒー】コント:パンク

かなり緊張している様子が伝わってしまいました。やさぐれキャラとは裏腹にメンタル弱いのかも知れません。数回噛んでしまったことと、手の震えがかなり目立ってしまったことで、このコントの「母」のキャラ設定がぶれてしまいます。

またパンクロックディスも広がりがなく、偏見に頼りすぎてしまって、客の共感を置き去りにしている様な印象です。

さすがに天ピの方がまだ良かったので81でしょうか。


【スパイク】コント:クラブにて

右の独特な怒り方で笑わせようという安直な考えが余り好ましくないです。

全体を通して中身の無さが目立っていました。ボケのくだり一つ一つも既存のお笑いをつぎはぎした印象です。

キックボードが出てきた時はちょっと笑いました。

天ピと同程度なので82です。

ちなみに、去年の準決勝1日目のネタはそれなりに話の筋が通っていて面白かったです。


【Aマッソ】コント:電話対応

ソウドリでやったネタです。

Aマッソとは思えない程ベタすぎる設定と展開です。

「こういうベタなコントをテンション高くやれば突破出来るやろ」という舐めた思想を感じ取りました。

オフィス設定だからか村上氏が髪を黒染めした(ウィッグ?)のは評価出来ます。会社で橙髪は違和感でしか無いので。

オダウエダには一歩及ばずという印象でしたので87です。さすがにベタ過ぎます。


ベタとはいえAマッソの勝ち抜けは必然的でした。


【Aマッソ】漫才(?):プロジェクター

昨年のスクリーン漫才がパワーアップして帰ってきました。

勝ちに来ているな。という決心が見られます。

中盤、ペイズリーで若干だれましたが、ラストのお笑いファンなら誰もが興奮するであろうM-1の投票システムを踏襲するくだりはかなり良かったです。

この時点では優勝だと思いました。

初の90代です。93でした。何がとは言いませんが。


【天才ピアニスト】コント:献立を当てたい

賞レースファンとしては真っ先にアジアン馬場園のピンネタが思い浮かばれますが、R-1が弱小賞レースなので、自分が見た限りこの点についてはタイムラインで余り触れられていませんでしたね。

野菜はレジ側で操作して値段を入れるので直接ニンジンに読み取り機を当てるのが引っかかってしまいました。

暗転多いコントって結構ダレます。

最後のくだりはオチが想像着いてしまうし、それに見合った笑いが起きないのでいらなかった気がします。

1本目よりは良く、トップのヨネダと同じくらい笑えたので86です。


【オダウエダ】コント:ストーカー

最高でした。

ここで冒頭にコントのタイトルを言う事がミスリードに繋がるので活きてきます。

ツッコミが不在のコントは視聴者や客のツッコミ力があって初めて成立するので、賛否が分かれるのも仕方が無いことです。「くだらないな」「馬鹿だな」「二人とも何をやっているんだ」という感情を客がツッコミとして笑い声で表出できるか、「面白くない」という感情で留めてしまい笑わないかの差です。私は圧倒的に前者なので95という表現で面白かった事を伝えます。



総合的にAブロックもBブロックも優勝者も私の感性に合う結果となっていました。


そして例によってオダウエダ荒れている様ですね。ここからが本題です。「何が面白いかからない」「面白くない」という意見に対しての投げかけのようなものです。

テレビ番組はNHKを覗き基本的に無料で見る事ができます。その番組を見るに当たって「面白い」「面白くない」の感情を抱くことは普通にあることだとは思っています。

ただ、お笑い番組、特に賞レースに関して「面白くない」「つまらない」等といったマイナスの意見で完結してしまうことに疑問を感じて仕舞います。

今回のTHE Wにおいて面白いとされる順番を付けるのであれば最下位は恐らく多数派としてはアマチュアの女ガールズさんで一致すると思います。それはアマチュアなのでしかたないことではあると思います。ただ、台本に面白みはあります。この面白みを汲み取る作業をすると「つまらない」という感情を抱かずにより番組を楽しむ事ができるのではないかと思っています。

優勝者については「面白い」と「何が面白いか分からない」の二極の様に感じます。決勝から数日経ってしまったのでもうその論争も割とほとぼりが去さってしまっているような気もしますが。「何が面白いか分からない→だから叩いて良い」は軽率な思考だと思います。そもそもお笑い番組を見て「何が面白いか分からない」という考えに至る方はお笑いを見ることに向いていない様に感じるのです。ネタとして行っている以上、どこかには面白みが必ずあります。そこを見つけ出そうとせず、受け身の姿勢でお笑いを見るが為に、分かり易い大衆向けの笑いのみを善、難解で玄人向けのネタを悪と判別してしまうのではないでしょうか。時間はお金です。テレビは無料で見られますが、時間が掛かるものです。自身が面白くないと判断する物は飛ばすなり別の事をするなりして気を向けなければ良いのです。ただ、お笑いが好きなのであれば面白みを掘り下げるという作業をすると一層楽しめると思います。年々賞レースの決勝について視聴者が「面白がろうとする姿勢」が足りないのではないかとやや感じています。SNSが発達し、色んな方が気軽に自分の意見を全世界に伝わりやすくなったことも影響していると思います。ライトな層ほど今回の結果について不満を抱いているような印象を受けます。どうか面白みを探す作業をする余裕を持って番組を楽しんで貰いたいものです。おそらく今週のM-1でまた一荒れきそうですから・・・。


とりあえず、本当にオダウエダさんおめでとうございます。


来年のWも楽しみですね。

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