「マッサゲタイの戦女王」刊行記念エッセイ 第11回 イランの古典文学その1-2
「高名なるアルスラーン王(の大冒険)」の続き
☆☆☆
都市の城門の警備は厳しかったが、アルスラーンは幸運にもかれの正体を見破った隠れムスリムのタウゥースという人物の援けによって(隠れムスリムはいいやつ設定)、タウゥースの管理する門から入り込むことができた。タウゥースとその弟のカウゥースは、アルスラーンを匿い、エリアスという偽名で彼らのコーヒーハウスで雇うことにした。
問題は、ほかにもエリアスの正体がアルスラーンではないかと疑う人物がいたことであった。王家の魔術師、太陽の神官シャムズと、月の神官カマールである。
(シャムズは隠れムスリムなので、いいやつである)。
どちらの魔術師も、コーヒーハウスを頻繁に訪れ、アルスラーンに出自を明らかにすべきであると主張した。そして、どちらの魔術師も、他方の魔術師を信用してはならないと警告した。
だが、アルスラーンはとにかくエリアスのままで通し続けた。
事態は、ファロークー・ラガハー姫とパパス王の息子、フシャング王子との結婚が決まったことで更に複雑になる。王女の気を引こうと必死のアルスラーンは、思いのたけを手紙にして渡すことに成功し、王女と文のやりとりをするようになった(らしい)。
だがしかし、状況は好転しないばかりか、まったく希望の見えない先行きであった。やたら機転の利くアルスラーンのあんな妨害やこんな邪魔を以ってしても、結婚を中止させることはできなかった。
とはいえ、アルスラーンとファロークー・ラガハーの、あらゆる手段を使った妨害が功を奏したのか、結婚初夜はフシャング王子にとっては、まったくうまいことには、いかなかったらしい(日本語がおかしいです。すみません)。
この一連の不可解で不愉快な出来事に関して、アルスラーンに嫌疑がかかる。警察官のアルマスは、アルスラーンの容疑と有罪を信じて疑わなかった。
危機一髪! のところで、邪悪な魔術師カマールの助けで、アルスラーンは首尾よく窮地を脱した。
だが不運なことに、事態はなかなか好転しない。しかも上巻の終わりでは、どうやらファロークー姫は殺害されてしまったもようである。
下巻においては、アルスラーンは異世界(!)に飛ばされてしまう。異世界において、妖精やら魔物やら、精霊ジーニーやら出てきて、何度も何度も試練をくぐりぬけ、死に物狂いの努力の末、ファローク姫を救い出してリアル世界に戻ることになる。
アルスラーンが真の素性を否定し、特別な重要性などなにももたない普通の人間だとどれだけ主張しても、誰も彼もがアルスラーンの正体を知っているようで、しまいには本人すら、自分はなにやら重たい運命とか大きな役目とか背負わされているのかもしれないと思ってしまうようになるのだった。
アルスラーンは誰を信じていいのかわからない。たびたびあちこちから誰も信じるな、誰の助言も情報も信じるなと忠告され、しばしば(助言者を?)殺すように指示される。
何もかもが石に変えられた荒れ果てた世界に迷い込んだり、しばしば広大な沙漠に取り残されたりする上に、さらにいろいろとわけのわからない試練『ある約束された終結をもたらすという秘密の武器を手に入れ、彼自身が殺害した死骸の断片からのみ作り出されるという不味いポーションを入手しなくてはならない』や、そのほか命がけの冒険を次から次へと強いられることになる。
あらゆる意味で、アルスラーンにとって不運な方向に話は進んでいゆくが、最後には目的を達し、4年にわたる異世界での放浪と遍歴からようやく解放されたアルスラーンはパトラシアに生還する。
そこでは、パトラス王はフシャング王子の死に(いつの間に死んだ?)復讐を誓ったパパス王との長引く戦争に苦しんでいた。
「アルスラーン王」は古典的設定における、壮大なエンターテイメントだ。
狡猾で才能にあふれた青少年が、盲目的な恋に落ち、邪悪な魔術師VS善良な仲間たちに囲まれ、風向きよりも早く意見のころころ変わる王に振り回される。
物語はアクションに満ち、矢継ぎ早に次の冒険へと速いテンポで進み、退屈しない。
お勧めの一読である。<Certainly recommended.>
出典:http://www.complete-review.com/reviews/iran/arsalan.htm
☆☆☆
最後はハッピーエンドらしい。イランの古典文学には珍しいことに。
読みたい~~~\(xOx)/
世界観は全然違いますが、古代ペルシア帝国アケメネス朝の勃興する古代オリエントを舞台にした歴史小説「マッサゲタイの戦女王」発売中です‼️
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