真の王女

あるクリスマスの日、英国上流階級の英語を話すご婦人から電話がありました。彼女の8歳の甥に吃音があり、かかっている地元大学病院の言語クリニックでは、わたしの会社が製造している遅延聴覚フィードバック(DAF)を使用しているとのこと。甥御さんがその治療を受けに行けるのは週一のみのため、言語聴覚士が自宅で毎日利用できるよう、ご家族にその機器の購入を勧めたそうです。彼女はそれをバカンスで訪れているマイアミの家に送って欲しいとのことでした。45分ほど、甥御さんの治療について話し合い、彼の話し方をききました。これは日常的に行っていることです。

マイアミのアリア・アル=フセイン宛てのインボイスと出荷票を作成しました。わたしはその名前が意味するところをわかっていませんでした。アメリカン・エキスプレスでのカード支払いに、請求書が届く住所の情報が必要でしたが、彼女はその住所を教えたがりませんでした。郵便番号と通りの名と番地だけでいいですから、とわたしは言いました。彼女は自宅には郵便番号も通りの名もないし、外国だと言いました。

外国で住所もなければ、銀行から許可がおりないと思いますと伝えたところ、彼女が言いました、「ヨルダン、アンマンの王宮です」。

「あっ、アリア王女でいらっしゃいましたか!」

そうですと彼女は言いました。わたしはクレジット払いの処理をしました。そして、ちょっと助けていただけないか、尋ねました。同じ機器をベツレヘムに住む方が購入し、発送したもののイスラエル側が運送を拒否したのです。なんとかできないでしょうか?

アリア王女は機器を2台とも彼女のもとへ送るように言いました、そうすればテルアビブの大使館に1台を送り、そこへあなたの顧客が受け取りに来られます、と。

わたしが感銘を受けたのは、この会話での彼女の口調でした。まるで「わたしは王女で、わたしの務めは人びとに奉仕することです。これはわたしが日常的に行っていることです」とでもいうかのようでした。

彼女こそ、真の王女です。


元話:"Have you ever helped a celebrity without realising who they were?"
https://www.quora.com/Have-you-ever-helped-a-celebrity-without-realising-who-they-were/answer/Thomas-David-Kehoe

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