すごく田舎でも都会でもない場所

夏の、暑くなる前のちょっとだけ涼しい朝だった。

朝ごはんを食べに近所のバールに行って帰る途中。バス停でバスを待っている人がいた。仕事に向かうのか、難しそうな顔をして携帯をみている。と思ったら、携帯に向かって笑いながら話し始めた。

ビデオ通話。楽しそうに会話をするその人は、慣れた手つきで顎にひっかけていたマスクを口につけなおし、そのままやって来たバスに乗って行ってしまった。通話は続けたまま。

この国に住む人たちはビデオ通話好きだよなぁ、と思いながらその横を通って家に帰った。とはいえ、と考えを続ける。日本にいるのなんて多くても年のうち１ヶ月半。その間、広島の郊外の実家暮らし。都会にいるわけでない。会う人も限られている。10代の情報に詳しい人でもない。

私が知らないだけで、山手線の駅名を知っている人たちは、みんなビデオ通話しているのかもしれない。金輪島の近くではそれはなかったけど。

私の知ってる日本と、東京に住む人の日本と、どこかの離島に住む人の日本。日本語が通じるくらいで、あとは全部違うんだろうなーって思う。多分、水の味とかも。

おわり。