神戸市王子公園再整備計画について
1月16日、神戸市立王子動物園の動物園ホールで開催された市民ミーティングのフリートークの時間の最後に発言権を与えていただいたのはわたしです。
司会の方の視線の動きから、ほかにも発言を希望されていた方がたくさんいらっしゃったと想像していました。そのような中、大阪から参加したわたしに貴重な機会を与えていただき、ありがとうございました。心から感謝申し上げます。
神戸の人のための集まりだから、と、当初は発言しないつもりでいましたが、みなさんのご意見を聞くうちに「話したい!」という欲求が湧き上がり、いてもたってもいられずに挙手するに至りました。
ひとりあたりの持ち時間は2分、定められた時刻には集会を終えホールを退去していなければならない、ということだったので、時間内で発言が終えられるよう、急遽その場でスマートフォンにまとめたものを読み上げました。
もとになったメモは次のとおりです。
となりに大学を誘致することや遊園地をなくすことが決定事項だったり、遊園地の跡地に立体駐車場ができることになってたり、「アメフトの聖地」なにそれ?王子公園にアメフト必要?と頭をかしげていたら、なにを思われたのか昨年11月には神戸市長が「(8年前の就任時に動物園を訪れたとき)私の関心は動物ではなく」とツイートされたりで、腹立たしいやら呆れかえるやらで、非常にモヤモヤイライラしますが、16日の市民ミーティングでの発言の最後に申し上げた通り、これは市民のみなさんにとってはチャンスです。
公立動物園のリニューアルに、近隣に住んでいる市民が立ち会える機会が目の前にあるということは、大変なチャンスなのです。
動物園水族館は人のため設置された、人が運営する施設です。
一度施設や設備を作ると、数十年は同じ設備を使います。施設全体を変える計画は多額の費用と大変な労力がかかります。一度出来上がるとそれがどんなものであっても、老朽化するまで使うしかありません。動物園の中で働く人たちには完成した設備を大きく変える力はありません。またそこに置かれた動物たちは生きる場所を選ぶことはできません。
戦後、日本各地で自治体が「市民のために」と動物園を設置しました。当時の動物園動物は「野生で生きる動物を捕まえて、対価を支払い買う」ものでした。動物園に売るために捕まえられる動物は子どもです。たくさんの幼い動物を、親や仲間、環境から引き剥がし、人にみせるために、自分たちが楽しむために、動物にとってはまったくしあわせとはいえない状態で、長いあいだ動物園に閉じ込めてきました。
このような歴史の上に、今の動物園があり、わたしたちがいます。
わたしたちが望むか否かにかかわらず、動物園で生きる彼らに関わった以上、わたしたちは彼らに対して責任があります。その責任を果たすには、経験や知見を積み重ね、飼育下にいる彼らや、環境中にいる彼らの仲間に可能な限り負担をかけないよう努めなければなりません。
彼らと、彼らの仲間が生きる環境に、これまでうけた恩義を返し続けることは、長く環境から搾取を続けてきたわたしたちに課せられた義務なのだと、わたしは考えます。
これまで、ただただ見て楽しむだけの存在だった動物園が、リニューアルの機会を迎えた今、神戸にお住まいのみなさんが寄せた大きな感心によって少し向かう角度がかわるだけで、「あの時の神戸から日本の動物園がかわった!」と歴史に評価される変化になるのではないかと、これまでの動物園の変化を見守り続けてきた経験から、ほのかに感じています。
王子動物園を、これからの日本の動物園を牽引する動物園に、そして国際都市・神戸にふさわしい「世界に名だたる動物園」にするために、感心をよせつづけ、知恵と力をあわせて、よい動物園(Good Zoo)にしましょう。
わたしは、神戸のみなさんの「誇り高さ」を信じています。
王子公園、王子動物園のこれからをみんなで考えるため力を貸してください!!
最後に、筆者に対して「あなた、いったいだれ?」な気持ちのみなさまへ、自己紹介として著書を紹介します。「立ち読み」できます。
「どうぶつえんにいこう」 福武忍著 村田浩一監修 文溪堂