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藤野忍
2024年6月2日 15:17
十八時。夕暮れの街を歩いてアパートへと帰る。 共用部分の廊下に入り、私たちの部屋のドアが開け放たれているのが見えた。中からは鈍い物音がする。 嫌な予感がし、私は走って部屋に飛び込む。「姉ちゃん……」 ダイニングに倒れこんでいる日向。そして彼を痛めつける大柄の男……私の父親。 どうやら夏美と双子は避難済みらしい。ということは、日向が父親の暴力を受け止めてくれているのだ。 私の存在に気付
2024年6月2日 15:14
「大型免許を取ってみないか?」 喜多川課長にそう持ち掛けられたのは、ある日の昼休み。営業所での休憩室でコッペパンをかじっていると、愛妻弁当を持った課長が隣に座ってきた。よく「うちのカミさんが作ってくれてるんだぞ」と自慢している。「大型免許ですか」 最近考えていたことなので、タイムリーだなと思いつつも、私は食べかけのコッペパンを置き、課長の方を向く。「ああ。阪東は優秀だからな。取得したら、手
2024年6月2日 15:12
あらすじ阪東花澄は、両親の虐待から逃れるため、四人の幼い弟や妹を抱えて懸命に働く19歳。だが両親は花澄から金銭搾取をし、弟や妹に暴力をふるい続ける。ある日、経済的苦境のために、ついに花澄は母親の浮気相手と肉体関係まで持ってしまった。自分を殺して、ただただ幼いきょうだいのために生きる。その後、何とか隠しておいた大金までも父親に奪われ、働く気力をなくした花澄は、弟や妹と心中しようとする。だが花澄だけ