甲賀市地域おこし協力隊忍務完了!
皆の衆、お呼びでござるか!?
年度の切り替え時しか更新されない嵩丸のnote新着記事が、春の陽気とともにやって参りました。
さて私事ではございますが、本日3月31日をもって甲賀市の地域おこし協力隊を卒業いたします。
3年間…体感としてはあっという間でした。
日々膨大な仕事と毎週迫る動画投稿に追われながらめまぐるしく動いていましたが、その分充実しまくりな毎日で、とにかく走り続けた3年間だったと思います。
先日読売新聞さんと京都新聞さんに記事にしていただいたのですが、市長と観光協会の会長に3年間の成果を報告し、今後の予定などを語らせていただきました。カバー写真はその時に撮影したものです。
ちなみに↓が3年前の委嘱式の時の写真なのですが全然今より痩せてますね。。この3年間で髪の毛を失い、おヒゲも蓄え、余分な贅肉をたくさんゲットいたしました(笑)もはや忍者っていうより、もう山賊みたいになっちゃいましたね。
新聞記事でも触れていますが、今後どのような立ち位置になるのか…については、おそらく明日以降どこかしらの媒体で発表されると思いますので、今後のことは追ってご説明します。なので、今回のnoteはこの3年間を振り返っていくことに焦点を当てたいと思います。
・自分はこの3年間でどれだけの成果を挙げられたのか
・逆に計画通りに行かなかったものはなにか
・成功した要因があるとすればそれはなにか
・反省点や注意すべきだったことはなにか
…などなど、もし今後地域おこし協力隊をやってみたいとか、これから協力隊になるという予定の方がいらっしゃったら、ぜひ参考になればいいなと思って書いていきます!
3年間で成し遂げた事
もともと地域おこし協力隊の活動としては、以下のような計画を立てていました。
甲賀忍者の調査研究
忍者のリアルな歴史がある甲賀だからこそ、その歴史や史跡などに根ざした観光振興を行わなければ、東京・京都・大阪といった大都市の忍者施設などと差別化ができないから、その大元である調査研究がベースとしてなければならないと思っていたのでそれを推進すること観光企画と環境整備
調査研究を軸にしてそれが体験できるような観光コンテンツを造成したり、イベントやPRを実施して、併せて環境を整備していくことWEBを通じた発信・PR
調査研究を軸にしながら、WEBサービスを活用して忍者・忍術や甲賀を発信していくこと忍者を軸とした起業準備
2と3の中で体験したお客様や視聴者からの反応で良かったものを中心のサービスとして起業をし、定住をしていくための準備をすること
4についてはちょっと置いておいて、それ以外については、以下のような成果を出せたのかなと思っております。
(1)甲賀忍者の調査研究
これについては2年目に行った「間林清陽」の発見と翻刻が目覚ましい成果かなと思います。これについての詳細は、2年目終了時の記事に書いてますので、よろしければそちらをご覧ください。
3年間の協力隊の活動の中で、自分の中でも最も達成感があり、充実感もあり、「甲賀に来て良かったな」と思えた事件でした。絶対に東京にいたら、見つけれられなかったもの。まだまだこのような史料がきっと甲賀には眠っているはず。そんなロマンが残っている甲賀がやっぱり大好きです。
また、2年目には国際忍者学会大会の甲賀開催もやり切りました。甲賀忍術研究会でも何度も例会発表を行い、地元の地域史研究会やボランティアガイドさん向けにも数多くの歴史・忍術の講演を行いました。ただ、もう少し甲賀忍者の歴史を深堀りしていきたかったなと思っています。
平成の頃は郷土史研究の方が多くいらっしゃって、数々の調査実績がありました。数十年前までは甲賀でも忍者研究が盛んで、かつ、とてもレベルが高かったと思っています。今ではそのような人も極わずかで高齢化も進み、昔ほど甲賀忍者研究の担い手が少なくなっているように感じます。甲賀忍者は53家をはじめ、まだまだわかっていないことが多いです。もっと忍者研究の担い手が増えてくると良いなと思います。
(2)観光企画と環境整備
主に派遣先である(一社)甲賀市観光まちづくり協会にて、数々の観光企画をこなしてきました。
1〜2年目に運営責任者として常駐していた「甲賀流リアル忍者館」は、2年間で年間来客数を3倍、年間売上も5倍にまで持っていきました。イベントも相当やりましたし、館内の展示も着任当初に比べるとなかなか豪華になってきたのかなと思います。2年目に手掛けた「忍夜討」と「モンハン×甲賀」も大盛況で、ニュースバリューだけでなく、経済的なインパクトも与えることができました。その他、吉幾三さんとの絡みなど、観光まちづくり協会主催のイベントもたくさんこなしてきました。
これらは観光まちづくり協会のみなさんと一緒になって汗をかいて、みんなで盛り上げられたものだと思っています。真面目な会議中にギャグの無茶振りをされたりなどの関西ならではの洗礼も受けましたが(笑)、本当にみんなイイ人達で、とても楽しく働かせていただきました。
甲賀における忍者観光は、日本遺産の重点支援地域に認定されたり、綺麗なPVができたりなど外側は盛り上げられてきていると思いますが、観光資源自体の磨き上げがまだまだ発展途上であると思っています。忍者に関連した食事・宿・お店・体験・見るものができてきたかというと、ここ数十年でもあまり代わり映えしていないのが現状かと思います。これは市や観光協会というよりは、民間が自己資本でガンガンと推進していくべきものだと思うので、今後はそのような民間の動きをドライブさせる取り組みが必要そうです。
(3)WEBを通じた発信・PR
こちらは主にYouTubeチャンネル「NinTube」の運営がメインでした。たまに燃え尽きて更新しなかったこともありますが、仕事の合間を縫いながら、ほぼ毎週ライブと動画をアップすることができました。不定期ではありますが、Voicyの方でも色々と忍者の話を発信して参りました。
甲賀に来たときは800人くらいの登録者数でしたが、今では2600人ほどとなりました。3年間でそれでは全然伸び率としては鈍いのですが、それもそのはず、めちゃめちゃマニアックなことをやっているので、テーマ的には一般の方には広くは浸透しない領域だとは思っています。ですが、その分コアな人が集まってくれたり、テレビ局や企画会社などが忍者のことを調べるときによくNinTubeを見て勉強していると言ってくれています。リアルな甲賀の歴史や忍術を少しだけ面白くというコンセプトで、これからも細々と続けていこうと思います。まぁいつか『万川集海』とかがめっちゃメジャーになったときとかにNinTubeの時代がくるのでしょう(笑)
広報の観点からすると、様々手掛けた事業や個人に対する取材を多く受け、メディアの露出はたくさんありました。これは地域おこし協力隊だからというボーナスでもあるのですが、その立場を利用しない手はないです。間林清陽発見、忍夜討や甲賀流忍者祝言は、全国だけでなく海外にまでニュースになりました。取材対応は骨の折れることも多く大変な事もありましたが、甲賀のことを全国・世界に発信できたことは誇るべき活動だったと思います。
(4)定量的な実績
3年間で僕個人や手掛けた事業に対する取材や番組への出演、講演などの活動としては、定量的にまとめると以下のとおりでした。
<メディア関連>
・テレビ:49
・新聞:40
・WEB動画:21
・WEB記事:8
・ラジオ:3
・雑誌:8
<講師関連>
・講演:40
・教室:43
・ガイド:38
・司会:6
<研究関連>
・記事執筆:30
・書籍:3
・論文:2
正直、講演や教室は観光振興というよりは、市民向けの文化啓蒙的なものにはなるのですが、市内や市外からの依頼が本当に多くて・・・結構これに時間が取られた感はあります。ですが、そのおかげで人脈が広がったり言いこともたくさんありました。その他にも市役所の観光以外の部署からWEB制作の依頼とかビジネス相談とか、本当にたくさんの依頼がありました。何でも屋みたいになってた気がしますね・・・。
こうやって全体的に見ると、自分が新卒だったときの初任給よりも少ない報酬の中では十分すぎるほど頑張ったとは思います(笑) 自分はお金ではなく好きでやってたからいいのですが、地域おこし協力隊は全国一律で報酬の上限が決められているけれど、成果主義にするなどのオプションがあってもいいかもしれませんね。
成果を出すために必要そうなこと
3年間やってみての私見ではありますが、協力隊活動・まちおこし活動として自分が恵まれていたことやこのような気持ちでやっていたことが功を奏したのかな?と思えることを考えていきたいと思います。
(1)初速で圧倒的成果を出す
協力隊はいかに早く地元の人々からの信頼を勝ち得るかが今後の活動のやりやすさを左右するのかなと思っています。そのためには、とにかく1年目で「こいつはできるやつだ」と思わせられるように、スピーディーに成果を出していくことで、その後の活動が大変やりやすくなります。
1年目は甲賀流リアル忍者館の運営がメインミッションだったのですが、イベント・展示・広報などガンガン提案して動いていきました。依頼された仕事はすべて断らずに、速攻で対応していきました。着任当初は地元の方々も協力隊がどんな人なのかわからない。やはり信頼を得るのに一番効果的なのは仕事で魅せることだと思うんですよね。
それによって自分がやりたい企画を任せてくれるようになります。まずは脇目も振らずたくさんのタスクをこなすと良い気がします。
(2)忍法「口寄せの術」
地域に入ってから自分のやりたい事はいっぱいあると思います。やりたいことはこうやってnoteでもSNSでも世間話でもいいので、どこかに書いたり言ったりするとよいです。
これには2つの利点があります。
①宣言した手前動かざるをえない状況になり、自然とその目標に向かって行動が伴ってくること
②地域の人や周りに「この人はこれがやりたいんだ」と知ってもらえて、協力をしてもらえること
①については前にX(Twitter)に投稿したのですが、どこかに目標をまとめておくと、あたかもそれを引き寄せてくるように、行動がそちらの方向に集約されていくんですよね。
甲賀に移住して痩せる事以外は叶えることができました(笑)自分はこれを「口寄せの術」と呼んでいるのですが、夢を口に出して実現した状況を引き寄せる効果があると思っています。夢ややりたいことはどんどんアピールしつつも、それを実現できるアクションを取り続けていくと、きっと理想の状況に近づいて行くと思います。
(3)溢れ出る地域への愛
地域に移住したときに、そこに住んでいる住民達よりもその地域を愛していること。多分活動していくにあたって、これほど強いモチベーションはありません。
甲賀は一般的には田舎ですが、忍者にとっては都会なんですよ。伊賀と並んでこの地域以外は、栄えていても忍者としては田舎なんですよね。その都会への憧れから移住したわけですが、やっぱり忍者の都会にしかないものがある。他の地域ではそうそうありません。それをどうやってみんなに知ってもらうか、人に来てもらうかを一生懸命考えて行動に移す。
こんなに楽しいことはないんです。自分が好きで愛しているモノ・コトのためにすべてを投げ売って頑張るってのは。全国の地域おこし協力隊が赴任する先は、このような愛して止まない地域であって欲しいなと願っています。そこがうまくマッチすると、よいシナジーが生まれることでしょう。
(4)プライベートすらも売る覚悟
自分は自分の結婚式すらもメディアに取り上げてもらって、盛大にやらせていただきました。たくさんの忍者の方々にご参列いただき、本当にありがとうございました。
結構このニュースが出たときに「結婚式は新婦さんのためにやるものだろ、こんな事して新婦が可哀想」とかコメントもらったりもしましたけど、これの1ヶ月前に、親族だけで東京で教会の結婚式もしたんです。お金も2倍かかりましたけど、お互いのやりたい形をどっちも実現しました。
髪も剃ってちょんまげにしたわけですが、プライベートを売ってまで甲賀のPRにもなるような式を執り行いました。そこまでの覚悟を持って地域を盛り上げたいと思っているか?という点は、ひとつのポイントにもなろうかと思います。そこまですれば、きっとそれなりの成果もついてくると思います。
嫁さんには慣れない田舎に移住してもらって友達もいない中で苦労をかけていますが、起請文に誓ったので絶対に幸せにしたいです!
(5)志を一にする仲間を見つける
最後に一番大事なことはコレな気がしています。それは同じ夢を持って、同じ道を共に歩んでくれる人がその地域にいること。それだけで地域での活動は全く違うものになったと思います。
自分にとってそれは白影さんでした。生まれた時から甲賀忍者に触れてきて、ずっと頑張ってきた白影さん。彼に出会わなければ、自分も絶対にここまで頑張れなかったと思います。
毎週のように顔を合わせていますが、「甲賀の忍者をこのように盛り上げたい」という話題は3年間経ってもどんどん盛り上がる一方です。今回の成果も、さも自分一人の功績のように書いちゃってますが、ほとんどが白影さんと一緒に困難を乗り越えながら実現してきたことばかりでした。
やはり一人では何もできません。このような仲間がいることで、人生はいくらでも輝けると思います。今後も白影さんとは切磋琢磨して、時にはディスり合いながら、目指すべき忍者の世界を実現するために共に歩んでいきたいです。
その他細かいことは色々とありますが、自分はこの5つの要素があったからこそ、ここまで歩いてこれたのだと思います。何かの参考になれば幸いです。
反省点&後悔している事
一見するとすごい活躍しているように見えるのですが、個人的には地域おこし協力隊として一番やりたかった事、かつ、やるべきことが全くできませんでした。唯一の後悔点と反省点はこれです。
実は上記の成果は、NinTube以外は誰かが主体の事業であって、その傘下で動いたものであり、かつ一発だけの打ち上げ花火になっているんですよね。本来は甲賀を「忍者になれるまち」にすべく、定常運営できるような20以上の忍者体験アクティビティを自分主体で作りたかったのです。ただ、市役所や観光協会、その他市内外のいろんな人からの依頼を優先して断ることができず、結局アクティビティは1つくらいしか作ることはできませんでした。
起業型の地域おこし協力隊が今後定住をしていくためには、ちゃんと自分で稼いで行けるための商品を作ることが重要で、それがなければその地域で定住して食っていくことはできません。自分はその活動に割く時間が圧倒的に足りませんでした。地域の信頼を得ることはできたかもしれないし、任期が終わっても面倒見てくれる人々もいるのですが、本来やるべきことができていなかったことにものすごく後悔しています。
もちろんその原石は諸々発掘はできました。YouTube動画の中で実験した忍術は今後体験コンテンツとして昇華できると思っておりますし、その計画ではあるのですが、4月から運用フェーズに入れるコンテンツをいくつか作っておきたかったです。ここはこの後の課題ですね。
これは任期終了後にどこかに就職する方であればそこまで考えなくて良いと思うのですが、起業型の協力隊であればこの点を一番中心に考えていただくことを強くオススメします。基本的には任期が終わればもう報酬はありませんので、自分で食っていける商品をリリースしていくのを早い段階でやっておくことが大事だと思います。依頼仕事と自分の仕事のバランスを、2年目くらいからは調整していけるとよいですね。
3年間の総括と今後
元々東京の会社員時代に描いていた「人生でやりたい100のリスト」は、甲賀に来て半分くらい実現できました。この点はとても満足です。この3年間、夢に向かって邁進しまくる生活は本当に楽しかったな〜。
リストの残りの項目は、ちょっと個人レベルではできないことがほとんどです。それを叶えるために、明日からは大きく2つの立場で動いていこうと思います。
行政でないとできないこと。
民間でないとできないこと。
その両方を推進していき、甲賀を伊賀にも負けない強い忍者の聖地にしていきたいと思います。
ここまで読んでくださった方、3年間あらゆる場面で関わってくださった方、本当にありがとうございました!
最後まで御読み頂き忝く存じ奉り候。 忍者のことしか書いてなくてすみませぬ。 更に忍者の詳しい情報はこちらでどうぞ〜 https://ninjack.jp