原作担当が出張編集部に行った話。
nikukyuというサークルで代表を務めたりシナリオライターやら作家をやっている佐々木篠と申します。
本日はXで話題になっていた出張編集部に行った話を綴らせていただきたいと思います。
簡単な流れ
出張編集部の編集さんに酷い対応をされたというレポート漫画が話題になる。
編集さんが匿名でXを開設、編集部視点でのエッセイ漫画を公開する。
エッセイ漫画が漫画家さんをディスる内容で炎上する。
あちこちに飛び火して、色々な話題が出てくる
そんな感じです。
僕はエッセイ漫画を読むのが好きなので、よく出張編集部に行ったレポート漫画を読ませていただいておりました。
正直に申し上げますと、渦中の編集さんのような「酷い対応をしてきた編集さん」のことを描いた漫画はいくつかありました。
何故今回はここまで燃えたのでしょうか。偶然影響力のある人にRPされたのか、それとも今回レポート漫画を描いた人の影響力が強かったのか。
そこは興味がなく調べておりませんが、まあそういうこともあるでしょう。
この記事では炎上のことはそんなに興味ないけど、単純に前回のCOMITIAで「原作担当が出張編集部に行った」という話をしたくて書いています。
原作担当が出張編種部に行った話。
それは「COMITIA145」のことでした。
実はCOMITIA145では初めての『壁サークル』というものを経験した記念すべき回なのですが、『壁サークル』には種類が二つあります。
有名で搬入部数も多く、参加者が多く訪れる大手サークル。
通常のスペースには入りきらない、もしくは隣に干渉してしまうほど搬入部数の多い無名〜中堅のサークル。
弊サークルはもちろん後者です!!
いや……あの、搬入部数は事前に申請するのですが、総集編が190Pくらいあることを失念しており、念のため多めの部数で申請したら
「このサークル椅子二つだし部数も多いから邪魔になるな。壁にしとくか」
と思われたかどうかは不明ですが、まあそのような判断をされたのでしょう。壁になりました。
壁という場所は特殊でして、イベントに参加された方なら分かると思うのですが、ぶらっと壁を見て回る人よりもたくさんのスペース(俗に言う島中や誕生日席)を回る人の方が多いですよね。
つまり知名度が低いと、イベント後半はマジで誰も来ない。
ただし作画担当の「しにま」先生はスケブで忙しいので、暇なのは僕だけ。
そんな暇な僕に、しにま先生は新刊を渡してこういったわけです。
「これ持って出張編集部に行って、アドバイスもらってきて」
と。
「ん???」
ってなりますよね。
だって持ち込みって、漫画家さんとか漫画家志望がやるものじゃん??
当然作家の僕は持ち込みの経験なんてありません。
何にも分からん。
でもまあ、しにま先生が編集さんの的確なアドバイスによってレベルが上がれば、回り回って僕が得するわけですし行く他ありません。
そういうわけで僕は、しにま先生の指定する某編集部に行きました。
何かエントリーシート的なものを書き、よく分からないまま近くをうろうろしていましたが、編集さんは手慣れた様子でそんな不審者を的確に案内してくださり無事にエントリー完了となりました。
余談ですが、この時普通にメアドを間違えました。
その節は失礼いたしました……。
「次の方どうぞー!」
と存外待たされることもなく一人の編集さんのところへ案内され、僕はエントリーシートと共に持ってきていた新刊を渡しました。
そして原作担当である旨、作画担当はスケブにより多忙で代わりにアドバイスをもらいにきたことを伝え早速新刊を読んでもらいます。
さて、この編集さんが本を読んでいる間、何をするのが正解なのでしょうか。
なんとなく居心地の悪い感じがしますよね。
一応どこのページで戻ったか、止まったか、なんて様子を見ていたのですが、何か人が読書している様をまじまじと見るのは失礼な気がして明後日の方向を見たりして暇を潰していました。
そんなこんなで無事に読み終わり(結構しっかり読んでくださって驚きました)、講評が始まる……のですが、
編集さん「個人的にお金を出して欲しいと思えるくらいめちゃくちゃよかったです!」
と驚くくらい高評価をいただきました。
普通はここで謙遜すべきなのですが、褒められているのはしにま先生のイラストなので言いましょう。当然ですね!
正直なところ、画力といった点ではプロの中でも上位に位置すると思います。ページの構成なども同人誌11冊目となればかなりレベルになっているわけで。
冷静に編集さんの立場で考えてみると、「時間の限られた出張編集部というイベントでアドバイスする」にはレベルが高すぎますね。
編集さん「顔の向きや表情、体位も被ることなく魅力的に描かれていてかなりレベルが高い本だと思います」
僕はしにま先生のファンなので、心の中で「マジそれな」と同意しながら爆弾を投下しました。
僕「その本(カラー表紙+本文31ページ)、夏コミ終わってから着手したので、約2週間で描かれたものですよ」
編集さん「それは凄い通り越して怖い」
ちなみに言ってないですけど、これはちょっと四捨五入というか、正確な数字ではありません。要した期間は13日なので逆サバを読んでますし、キャラデザとネームの時間も含めての期間です。
改めて書くとマジで怖いな。
ちなみに唯一された指摘は「キャラデザ」のお話でした。姉妹が似通ってしまっているので、シルエットで誰か分かるようなキャラデザだとよりよいというものでした。
しかしこの同人誌、本当は60Pくらいにする予定で、妹とのエピソードも含まれるはずだったのです。だけど2週間でそこを描く余裕はなく31Pでお姉ちゃんがメインとなったわけです。
つまり僕が妹の詳細な文字ネームや設定を用意する暇がなかったので、しにまさん的にもしっくりこないデザインとなってしまったわけです。すまねえ。
そんな唯一の指摘も原作が足を引っ張った結果というね。
編集さん「設定も冒頭2Pですんなり入ってきて、めちゃくちゃ上手く練られていていいです」
えっ、好き。
唐突に原作の領分も褒められてテンションの上がる僕。
そうなんです、小説やゲームシナリオと違って漫画のシナリオは使える文字数に大幅な制約があります。
キャラが口頭でいきなり世界観説明するわけにも行かず、新刊の冒頭はテレビに映っている「ニュースキャスターの台詞」+「モノローグ」を使って短いページで説明しています。
長年小説を書いてきた僕にとって、漫画のシナリオとはとにかく削る作業が全体の7割くらいを占めている気がします。
言葉遊びが好きな僕にとって書けないのは苦痛ですが、イラストを使った「演出」によって「書かれていない文字を読ませる」のは小説と違った楽しさがあって好きですね。
ちなみにシナリオ面でご指摘いただいた点は
編集さん「そのキャラ特有のエピソードでHシーンがあると、より良くなると思います」
でした。
例えば何らかの部活に入ってれば部室でえっちするとかですね。水泳部だったら日焼け跡があってそれに言及したり、よくあるのは更衣室のロッカーで……とかそういうやつのことだと思います。
本当はそういった要素もあったのですが、ページ数の関係で泣く泣く削ってしまいました。次回作の課題ですね!
あとは編集さんから名刺をいただき、講評は終了しました。
余談ですが、
編集さん「名刺を渡してもよろしいでしょうか……?」
と何故かめちゃくちゃ低姿勢で、名刺を渡しちゃいけないなんてことあるの!?
と心の中で驚きつつも、ありがたく頂戴いたしました。
その後、冒頭でも書きましたがメールアドレスを書き間違えるというアホなミスをかましてしまいましたが、幸い電話番号は間違えておらずメッセージで連絡をいただきました。
現在その編集さんと取り敢えず読み切りを載せる方向で打ち合わせを行なっております。
僕がこの記事を書くのが遅すぎて「某編集部の金賞受賞者の作品がなんやかんやあって書籍にならなかった」という事件が起きてしまいましたが、世の中にはいろいろな立場、状態の編集さんがいらっしゃいます。
幸いにして僕の場合編集さんとは非常にスムーズに制作が進行しており、もうそろそろ文字ネームも完成するという段階まで来ております。
来年のいつ頃かは不明ですが、出張編集部のおかげで生まれた作品がどこかの誌面に載ることでしょう。
そして「最初に提出した文字ネーム」と「編集さんと何度も打ち合わせをして完成した文字ネーム」を見比べるなんてことも(許可が下りたら)やってみたいですね。
それを見ていただけると編集さんという存在が作品にどういった影響を与えているのか、というのがよく分かると思います。
いろいろと書きましたが、言いたいことは一つ。
出張編集部、とてもおすすめです。
原作の方でも気負わずに一度参加してみてください!
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