大間旅行記 ① 【青森】
まえがき
皆さんは大間と言われて直ぐにどこのことだが分かるだろうか。
そう、青森県の下北半島の最北端に位置する町だ。
マグロが有名なことをご存じの方も多いかもしれない。
また、大間は本州最北端の地である大間崎がある場所でもある。
私は近年、本州や本土の「端」に行くことに拘っており大間崎にも是非行きたいと考えていた。
しかし大間に行くのは簡単なことではない。
関東から行くのは勿論遠いが、仙台からでも想像以上に遠い。
いや、もっと言ってしまえば青森市からでもかなり遠いのである。
このように本州最北端の名は伊達ではない。
しかし大間に行きたいと思い立った私は早速計画を練った。
鉄道を使用するとなると最初に思いつくのは青春18きっぷだ。
しかし盛岡から青森まで最短経路で行くにはIGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道といった比較的高額な第三セクター鉄道を経由することになるので18きっぷは使いにくい。
さらに鉄道で行けるのは下北半島の主要都市・むつ市までであり、そこからはバスに乗ることになる。
私は早々に鉄道の線を切り車で行くことを考えた。
私の住む仙台からは東北道などの高速道路を経由しても大間までは7時間ほどかかるらしい。
勿論一人で行くのは不可能なので、友人Yに話を持ち掛けてみた。
私は当初夜通し高速を走ることで宿泊なしで行こうと考えていたが、Yは目が悪く夜の運転は不安だという事で青森に一泊して大間に行くことが決定した。
結果的に往路は人生で最も過酷なドライブになったので、青森で一泊していなければ命はなかったかもしれない。
無謀な計画を思いとどまらせてくれたYに感謝する。
出発前
Yは埼玉に住んでいるのでまずは18きっぷで仙台に来てもらうことになった。
彼はその日に就活の予定があり仙台到着は22時過ぎになると言われたので、気は乗らないが一人でレンタカーを借りに行った。
免許取得後それなりに運転を経験しているつもりではあるが、毎回助手席に友人が座っている状態でなので一人での運転が未だに震えるほど緊張してしまう。
雨の中駅前のレンタカー屋で車を借りて自宅まで運転する。
レンタカー屋は大体20時ごろに締まる。
Yが来るまで駅の近くに車を止めておこうとも考えたが、金が余計に掛かるので一旦帰ることにした。
2時間後、Yがそろそろ仙台駅に到着するので駅まで車で迎えに行く。
東口は西口よりも送迎の車が少なく、待機しやすい気がするので車で友人と合流する際はここを使っている。
駅での送迎は駐禁や他の車との兼ね合いで緊張してしまう。
特にここはすぐ近くに交番があるので、警官が車の近くに歩いて来た時は注意されるのではないかと不安になった。
慣れない駅で迷ったようでYの到着は遅かった。
私は心の中で「早くしてくれ!」と思いつつ、はるばる来てくれたのに急かすのも申し訳ないと思いじっと堪えた。
無事合流した後は逃げるように駅を去った。
自宅に戻った後は早く休む為早々に電気を消した。
出発時間は厳密に決めてなかったが、高速道路の深夜割引適応時間に合わせて3時前ぐらいには出発するつもりでいた。
しかし二人ともこれから大間まで行くという事で興奮して寝られず
「どうせ寝られないならもう出発しても良いのでは」
ということで予定よりも大分早く1時半過ぎには出発することにした。
早速着替えて車に乗り込む。夜は雨が降っていたが、丁度止んでいた。
車の少ない西道路を走り抜け、仙台宮城ICから東北道に入る。
因みにICの名称は「宮城県仙台市」ではなく「仙台市・旧宮城町」の二つの自治体名から来ているそうだ。
北へ
夜に東北道を埼玉から仙台まで走ったことがあったので大丈夫だと思っていたが、想像以上に道路は真っ暗でハイビームにしないと道が全く見えなかった。
あまりの視界の悪さに緊張しながらも、トラックだらけの東北道を北上していく。
深夜のドライブは非日常感が増して楽しい。
2時間ほど走り、花巻PAで休憩。
前述したようにYは目が悪いので明るくなってくる5時前ぐらいまでは私が全て運転することになる。
疲労はそれほどなかったが、今までにない位の長距離を一人で走ることになった。
10分程度の休憩の後、再び私の運転で北上していく。
普段休憩後は運転手が交代するので変な感じだ。
途中安代JCTで東北道を後にして八戸道に進む。
東北新幹線は八戸方面にまっすぐ伸びているが、東北道はここで大きく進路を変えて秋田県に入り、弘前方面に伸びている。
八戸道も片側二車線の立派な高速道路だが、東北道と比べると交通量が一気に少なくなった。
空がだんだん明るくなってきたので、Yに運転を代わってもらう為に二戸PAで休憩する。
なんだかんだ真っ暗な道を3時間以上運転してきたので結構疲れた。
運転を代わって1時間程で漸く青森県に突入した。
画像のカーナビのような表示は勿論、道路上の県名の看板も好きで見ると
「○○県に入ったぞ!」
と反応してしまう。
この先八戸JCTまでは片側二車線だが、そこからは片側一車線の道路となる。
5時40分頃になると太陽が見えて来た。
これより先は百石道路・第二みちのく有料道路・上北道・下北半島縦貫道・国道279号などを経由して大間崎を目指す。
野辺地町を過ぎたあたりから海がちらちらと見えるようになってきた。
途中景色の良いコンビニがあったので休憩ついでに入る。
陸奥湾の奥に見えるのは北海道…ではなく同じ下北半島。
今日大間崎から帰って来た時は向こう側の道路を通ってくることになる。
大間
9時前頃に大間崎に到着。
途中工事で片側対面通行の区間が多く、思ったよりも時間がかかってしまった。
大間崎周辺にはマグロを提供する店が多いが、まだ朝だからか開いている店は少なく人通りも殆ど無かった。
しかしこの時間でも空いている店は既に探しておいたのでそこに直行する。
店には客は全くいなかった。
定番っぽい三色マグロ丼を注文。
値段はかなり高かった。
勿論美味しいが、値段に見合うものかは微妙だ。
すきっ腹に脂の乗った濃厚なマグロを入れたので二人とも腹の調子が悪くなった。
気を取り直して大間崎へ。
Yはもっと立派な観光地を想像していたようでがっかりしていたが、最北端の街というのはこのような寂しい雰囲気の場所の方が似合っているのではないだろうか。
マグロのオブジェのところに最北端を示すものが無かったのが少し残念だった。
写真では分かりにくいが、ウミネコが大量にいた。
函館や道南の山々もハッキリと見ることが出来る。
記念撮影をして一通り散策し、本州最北端到達証明書を購入した後は駐車場に戻る。
土産屋の店員は暇そうに大間崎をぶらついていた。
前述したむつ市方面からのバスが丁度土産屋の前に停まったが、降りてくる客はいなかった。
次に目指すのは巨大な奇岩で有名な仏ヶ浦。
海がすぐそばに見えた大間からかなり登ってきた。
下北半島は平地が少なく殆どは山地になっている。
対向車は滅多に見なかった。
仏ヶ浦
40分程走り展望台に到着。
写真で見ると結構良い感じだが、かなり遠くに見えて
「こんなものか」と落胆してしまった。
しかしよく調べてみるとあの岩場まで降りる遊歩道がこの先にあるようだ。
駐車場に車を停めて山道に入る。
駐車場には車が一台だけ停まっていたが、山道入口で人とすれ違ったのでこの先にはもう誰もいないはずだ。
暫く進むと木道が現れる。
写真はなだらかな坂だが、急な場所は階段になっており木の板の隙間から下が見えるので怖い。
海までは15分近くかかった。
巨大な白い岩がそびえ立つ。
岩場には打ち上げられて干からびた海藻がへばりついており、強烈な磯の臭いが漂う。
あまり海の写真を撮っていなかったので分かりにくいが、海が物凄く綺麗だ。
水は青く透き通っていて、ウニなどが沢山見える。
浅瀬の海藻も不気味なほど鮮やかな緑色をしていた。
巨大なのは勿論、色が白いのが神秘的な雰囲気を醸し出している。
岩場の名所としてはかなり見どころがあり良い場所だと思った。
観光客が全然いないのはやはりアクセスが悪いからだろうか。
帰りは登りなのでかなり体力を消耗した。
Yは疲れて動きが遅くなっていたので先に駐車場へと急いで車の中で休憩した。
駐車場に着いた時点で時刻は丁度正午くらいであった。
今日は1時半から行動しているだけあって1日がとても長く感じる。
本当は恐山にも行きたかったが、4月頭ではまだ冬季通行止めで行くことが出来ないので、下北半島を後にする。
県道253号を東に向けて進んでいると凍り付いた湖を発見した。
川内川に作った本州最北端のダム・川内ダムにより出現した人造湖らしい。
この日は気温が20℃近くまで上がる暖かい日だったがまだ凍っているようだ。
下北駅
1時間半ほど運転して下北駅に到着。
本州最北端の駅だ。
最近私は駅の入場券集めに拘っており、ここの入場券も下北半島を訪れた記念に、と思ったが残念ながらみどりの窓口は締まっていた。
地方のみどりの窓口は営業時間内であっても締まっている時間があることが多い。
横浜
横浜町の道の駅で休憩。
神奈川の大都市・横浜市と同じ町名なので度々話題になる気がする。
14時過ぎ頃だったので昼食としてホタテ丼を食べる。
青森県はホタテが有名だが、その中でも横浜町は県内二位の生産量を誇る。
食券制だったが食券を買うとキッチンに注文が自動で入るようで、適当に座って待っているとホタテ丼を持ってきてくれた。
ついでにリンゴジュースも購入。
道の駅を巡っている訳でもないしスタンプは必要ないのだが、見かけるとどうしても記念に押したくなってしまう。
浅虫温泉
青森市に向かう途中には浅虫温泉があるので入っていく。
浅虫温泉は青森市から車で30分程、電車でも駅のすぐ近くという好立地にある。
日帰り温泉は大体早めに締まってしまうが、ここ辰巳館は20時までで値段も500円と安い。
昔ながらの温泉といった感じで良かった。
温泉入浴後は青森市のホテルに向かう。
宿到着
ホテルに入った後は疲労で動けなくなってしまう前に買い出しに出かける。
このセブンイレブン、駅前商店街なのに立派に駐車場まで構えている。
せっかく設けられた屋根から離れた場所に入口があるのが何とも言えないミスマッチ感がある。
青森市のアーケード街はシャッターが閉まっている所が多い印象だった。
ホテル周辺にはスーパーマーケットがなかったので、駅ビルで何か買おうと思ったが、駅周辺にもめぼしいものが無かった。
青森駅は改修工事が行われているようで、まだ完成していないもののピカピカになっていた。
北の玄関口青森駅はかつて多くの特急列車が発着していたのでホームはかなり長く作られているが、現在やってくるのは短い列車ばかりだ。
指定席券売機で入場券を記念に買おうと思ったが、何故か買えなかったのでみどりの窓口に並ぶ。
係員さんは「入場券程度で窓口に並ぶんじゃねぇよ」とでも言いたげな顔をしながら発行してくれた。
お忙しいところ本当にありがとうございます。
面倒だから買い出しなど行かずにガストで食べるか、コンビニで買うかなど悩んだがやはりせっかくなので青森駅からさらに10分ほど歩いたところにある青森生協で夕食を買うことにした。
青森のスーパーとだけあって様々な種類のリンゴジュースやリンゴの菓子、青森県産の魚介類を購入することが出来た。
その土地の物を食べるには居酒屋が一番だとは思うが、たまには地元スーパーで買うのも楽しい。
ホテルに帰って買ってきたものを食べ、すぐにベッドに横になった。
ほぼ徹夜で運転していたので疲れ果てていて20時過ぎには寝てしまった。
2日目に続く・・・