『alive / 浮世アイロニー研究所 feat.初音ミク』ライナーノーツ
2017年2月25日に私が所属している創作ユニット「浮世アイロニー研究所」名義で公開された楽曲『alive』のライナーノーツです。
時が経つのは早いもので、この楽曲が世に公開されて4年の月日が流れたようです。ついこの間のような感覚ですが、もうこんなにも時間が経っていたのかと思い知らされます。
2021年3月現在、私の詞提供作品のうち何曲かはサブスクリプションサービスでの配信が始まっていますが、この曲はまだサブスク解禁はされていません。ニコニコ動画やYouTube、soundcloudなどで無料で視聴もできますので、よければそちらをチェックしてみてください。
歌詞の解説の前にこの曲の背景を軽く説明します。
aliveは浮世アイロニー研究所(以下「浮世研」)2016年の春頃から構想があった曲で、一年弱かけてゆっくりと制作が進められました。16年の5月に浮世研のメンバー(ワカナミ所長・五山イツキ(当時R.Y.名義)・わたし)で名古屋へ旅行に出かけました。旅行というよりは、その当時3人が集まりやすい場所で集まって遊んだだけだったのですが、「その時に訪れた名古屋の街を題材にした曲を作りたいよね」ということでこの曲の制作がゆる〜く始まったような記憶があります。そんなこともあり、楽曲のMVではその時の旅行で撮られた素材が使われていたり、歌詞の中にも名古屋のランドマークや名物が出てきたりします。余談ですが、この曲が発表された時期に私は再度名古屋を訪れていたり、名古屋に来るとこの曲のことを思い出したりと、個人的にも名古屋との思い出が深い楽曲になってます。このライナーノーツを書いたのも名古屋に行ってこの曲を思い出したからだったりもします。
ということで、前置きが長くなりましたが、ここから歌詞を見ていきましょう。
無機質な改札を 抜けた先に在るのは
カメラ屋の広告と 世間にありふれた日常
意識の底 何処か 誰かの名を叫んでる
何時の間にか 記憶すり替わってる 気がしてる
朝方のリヨンで 見つめる眼差しは
現実? それとも 空想(ゆめ)の中を見ているの?
壊れたモノを ただ 追う旅の中で
南の空に 儚き想い浮かべ
遠くなった窓に 褪せるセピア色
カケラだけを手に並べて
遥か遠い過去の 歴史(こと)は誰も知らない
もし 知りえたのなら 日常(いま)が崩れていくだろう
地下鉄は 心の奥の 色に似ている
不器用な笑顔は 窓の外をにらんでる
コンコースの風に 映り込む憂鬱(メランコリー)
最後のミッドランド ひらりゆらり 舞う灯り
雲の切れ間から覗く 冬の日時計
廻る世界の中で 季節(とき)を刻め
現代(いま)を生きた証拠(あかし) 昨日の明日
立ち止まって 考えるべきところ
溢(こぼ)れた声 隠すように Sky high
ふと見下ろした足元 One way
駆け出した 夜に降る粉雪 鳴り響く "la sonnete"
月照らす道で 見知らぬ街 言霊を探った
悴む指広げ 一人叫んだ 孤独の中
「二度と振り向かないで」
春を待たずして 散りゆく花たち
風に吹かれ 姿を消したのなら
誰へ向けられた視線だったか... なんて
今はもう意味を持たない
前述の通り、この歌詞の舞台は名古屋です。1番の「リヨン」は名駅の近くにある喫茶店(有名店のようで某有名アーティストさんの歌詞にも登場するらしいです。私がこれを知ったのはだいぶあとなので、パクった訳ではありません笑)ですし、2番の「ミッドランド」は名駅前のミッドランドスクエアのことです。その他、歌い出しの「改札」は名駅の改札のことで、「カメラ屋の広告」というのはMVの冒頭にも登場しますが名駅の太閤口を出たところにあるビックカメラのことです。「地下鉄」もなんとなく名古屋の地下鉄のイメージで、「コンコース」は具体的にどこかはイメージしてませんが、名駅や金山のようなイメージがぼんやりと浮かびます。
歌詞の中身について触れていこうと思いますが、一通り歌詞を読み通してみてこの歌詞の意味がわかった方は、いまこのnoteを読んでいる方の中にどれくらいいらっしゃるでしょう?おそらく、「意味不明な歌詞だな」とか「何を言っているのかが曖昧でよくわからない」といった感想を持った方が大半ではないでしょうか。
実はその感覚は正しくて、あえてよくわからないようにすることを意識して詞を書きました。だからと言ってテキトーに書いたわけではなく、自分では意味がわかるように書きました。ですので、今でもこの歌詞の意味を篠自身は理解できます。が、それを細かくここで言ってしまうと、リスナー自身の想像力に委ねる部分が少なくなってしまい、それでは面白くないので、今回は少しだけ伝えるという程度にしておきます。
大きなテーマとしては「都会で流れる時間と空間の中で、一人取り残される孤独感や喪失感」です。そんな孤独の中で強く生きてほしい、ということを歌っているつもりです。タイトルの「alive」はそこからきています。落ちサビの最後にもあるように、過去を振り返らずにこの先も強く生きてほしいということが、この歌詞でもっとも伝えたかったことです。
そういえば仮タイトルは「孤独のMidland」でした。「孤独感」をテーマにする中で、それを前面に打ち出したかったんですね。でも、それだと救いようがないじゃないですか。そんな"孤独感"を感じるからこそ強く生きてほしい、be alive、ということでタイトルを「alive」に変更した経緯があります。
作品公開から4年が経ったいま、改めて自分の書いた歌詞を見返してみましたが、よくわからない部分もありつつも、孤独や喪失感を感じる中で希望を持ってほしいという歌詞が自分自身勇気付けられるような気がして、自分で言うのもなんですが素敵な歌詞だなと思ったりもしました。自分自身で満足していては自己満足止まりなので、この曲がもっと皆さんの耳へ心へと届いて、少しでも皆さんの気持ちを動かすことができれば作詞者としてとても嬉しいです。これからも『alive』をどうぞよろしくお願いします。