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【イベントレポート】目的に沿った運用を。#これからのInstagramクリエイティブ を考える

個人、企業共に情報発信の中心として活用幅が広がるInstagram。プラットフォームのアルゴリズム改変に合わせて、求められるコンテンツも刻々と変化を求められています。

特に、最近ではリッチなコンテンツを見かける機会も格段に増加。これからInstagramでの発信を行うのであれば、競合に負けず劣らずのクリエイティブを用意しなくてはと焦り、不安を募らせるInstagramの運用担当者の方も多いのでは。

今回は「これからのInstagramクリエイティブ」と題して行われた、Instagramでのコンテンツ発信を考えるトークセッションをレポートします。

登壇者はInstagramを中心としたSNS運用支援に携わる、テテマーチ株式会社・三島悠太さんと井関奈美さん、写真のコツやフォトスポットをInstagramで発信する「Photoli」編集長の横尾涼さん。

日々、Instagramでのコンテンツ制作の前線に立つ3名が、これからのInstagramクリエイティブを語ります。

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■ 三島悠太/テテマーチ株式会社(モデレーター)
執行役員
1993年生まれ。2018年にテテマーチJOIN後、プランナー、ビジネスプロデューサーとして約150社以上のInstagramを中心としたSNSマーケティングにおける戦略・企画設計を手掛ける。クライアントのニーズに合わせたプロダクト開発やプロジェクトの立ち上げなども行い、手法にとらわれない本質的なSNS活用を設計する。「Instagram Day Tokyo 2019」「House of Instagram 2020」登壇。

■ 井関奈美/テテマーチ株式会社(スピーカー)
ディレクターチーム コンテンツディレクター
1995年生まれ。化粧品、エンタメ、不動産、食品など幅広いクライアントのクリエイティブやコンテンツを中心に企画から制作までを担当。
「INSTAGRAM DAY TOKYO 2019」にて紹介された資生堂ブランド「レシピスト」Instagramアカウントを手がける。

■ 横尾 涼 / Photoli(スピーカー)
1992年生まれ。神奈川県秦野市出身。
写真の撮り方やフォトスポットを紹介するコミュニティメディア「Photoli」の代表。メディアの運営と、企業さん向けのクリエイティブ支援をしています。趣味/仕事関わらず写真にどハマりしています。
好きなもの:旅、写真、インターネット


今までのInstagramに求められていた3つの活用法

三島:本日はよろしくお願いいたします。まず、僕のほうからこれまでのInstagram活用について簡単にご説明できたらと思います。

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三島:Instagramのこれまでの活用目的は3つ。商品やプロダクト、サービスのイメージをビジュアルを通じて届けるという「ブランドイメージ訴求」、双方向のプラットフォームである点を活かした「ユーザーとの関係構築」、そしてハッシュタグやコメントなどによる「口コミの創出」です。

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三島:今はだんだんと時代が変わり、これまでの活用目的を踏まえ「ブランド体験を届けること」がInstagramの活用目的になりつつあるのかなと思います。

生活者のニーズを知り、ブランドを認知してもらうことで、ブランド体験を生活者に届けるような。従来の「Instagramはマーケティング施策のひとつ」という考え方から、ブランドや企業のマーケティングの中心にもなる立ち位置として考えられることも増えました。

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三島:Instagram自体もミッションを掲げており、人と人、人とブランドなどをつなげて「好き」「欲しい」を作ることを目指すと定義しています。この考え方を知っておくことが、Instagramを理解する上ではとても重要です。

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三島:その証拠として、今までの情報を収集する&見て楽しむ場から、体験する場へとInstagram自体が変化を遂げています。購買やWebサイトへの遷移機能などはその一例です。

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三島:Instagramを活用したマーケティング施策のROI(費用対効果)も可視化されるまでになりました。実際に、企業やブランドがInstagramをどう活用し、リソースを投下するのかと意識を向ける傾向も強まっています。

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三島:また、これまではCVに至るファネルの一部分を担うとされていたツールでしたが、Instagramはファネルを横断できるツールとしても注目を集めています。

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三島:機能のアップデートやアルゴリズムの変化により、ファネルごとの訴求力も強化。企業・ブランドと生活者との距離が近づきやすくなったことを支援会社としても感じています。

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三島:その例として、ショッピング・ストーリーズ・リールなど、さまざまな側面からブランドと人ととがコミュニケーションを取れるよう工夫が施されています。

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三島:2年ほど前までは、Instagramといえば、フォロワー数を増やしてなんぼの世界でした。ところが、現在ではそれよりも情報の信頼度が影響力に作用しています。ブランド体験を追い求めることで、ユーザーにとってより良い情報が届くアルゴリズムです。

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三島:その他にも、Instagram内のアルゴリズムを考えると、パーソナライズ化も大きな特徴として挙げられます。500以上のシグナルによっておすすめのコンテンツがパーソナライズ化されており、発見タブに表示されるのはそのシグナルによって判断されたコンテンツです。

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三島:要するに、運用側はいかにターゲットに届けられるコンテンツを作れるのかを求められています。

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三島:弊社でも自社で提供している分析ツール「SINIS」を元に、いろいろとアルゴリズムに関するデータを集めています。その中では2019年以降、いいね数よりも保存数を重視して発見タブに掲載する傾向があることがわかりました。

その点、情報量を担保しながらコンテンツを投稿していたからこそPhotoliさんは早い段階でアカウントが成長したのかなと思います。

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三島:まとめると、現在のInstagramのアルゴリズムではいいねよりも保存数、保存数よりもコメント、そして数値は測れないもののコンテンツへの滞在時間などを鑑みて良質なコンテンツを判断しているんですね。

また、双方向性を活かして、ユーザーとのコミュニケーションも見られているように思います。

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三島:実際に伸びているアカウントを見てみると、1投稿あたりの情報量が多い、メディア・雑誌のようなものだったり、ストーリーズやコメントなどでのコミュニケーションが盛んなものだったりします。

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三島:他にも、これまでの写真単体の投稿だけではなく、文字を読ませるクリエイティブも伸びてきていますね。小説のようなしっかりと読ませるクリエイティブは滞在時間や保存数も伸びやすいためです。

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三島:プロダクトのあるブランドでも、プロダクトカットを写真で発信するだけでは伸びにくい傾向があり、商品の解説などの情報が必要です。

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三島:Instagramはこれまでよりも一層コンテンツファーストな時代を迎えています。コンテンツそのものを作り込み、エンゲージを獲得することで、リーチが増加。結果として、フォロワー獲得につながる流れです。

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三島:以前、あるツイートでInstagram運用におけるコンテンツのあり方について触れたことがありました。

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三島:そのときにも、Photoliさんをご紹介させてもらっていますね。

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三島:昔とは異なり、投稿数よりも情報量が重視されるようなアップデートもありました。僕たち支援会社の目線で見ても、現在は投稿数よりも質に重きを置く傾向があります。

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三島:また、投稿カテゴリもよりニッチになっていることが多く、必要な情報が必要なユーザーに届くようにもなりました。だからこそ、世界観を意識して作り込まれた、かつ学びのあるコンテンツが求められています。

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三島:どういった情報を、どんなユーザーに、どのように伝えるのか。そういった「編集力」が求められているのが、今の時代のInstagramクリエイティブなのです。

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三島:これまでの話をまとめると、Instagramでのコンテンツは、ユーザー中心の設計が非常に大切です。

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三島:ブランドの一方的な発信ではなく、共感を生むこととリファラルされる状況が必要になりました。

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三島:情報発信ではなく、アカウントやコンテンツからブランドのファンになってもらう。その先に、共感やブランド体験があり、コアなファンが生まれていくのです。

今日のお話も、そんな「ブランド体験」の目線を持って聞いていただけたら嬉しいです。


年を追うごとにリッチ化していくInstagramコンテンツ

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三島:さて、ここからはスピーカーの二名を交えてパネルディスカッションを始めたいと思います。よろしくお願いします。

井関・横尾:よろしくお願いします!

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三島:さっそく、最初のテーマです。Instagramのプラットフォームの変化をさきほど話していたわけなんだけど、その移り変わりと共にクリエイティブも変化しているのか。お二人どうでしょう?

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井関:私から良いですか? いろいろなところで言われている話ですが、Instagramの文化であった「映え」が「共感」に変わったという点。

実際のところは、もともと写真の映えによって生まれていた共感が、写真だけでは生み出せなくなったのかなと思っています。結果として、コンテンツそのものに文字入れやデザインなどの情報が増えてきたような。

三島:なるほど、僕たちも1年半ほど前、ちょうどPhotoliさんのInstagramが始まった頃は、良い写真をと思って頑張っていたんですよね。

井関:そうですね。写真だけで世界観を作る、伝えることももちろんできないわけではないんですが、差別化が非常に難しくなったと感じています。

三島:自己満足程度の違いになってしまう、なんてこともありそうですよね。Photoliさんはどうして写真だけではなくデザインや編集を入れるようになったんですか?

横尾:僕たちももともとは写真だけを発信していたんですよね、Webメディアで更新した記事のアイキャッチ写真を投稿するみたいな運用でした。

ただ、写真単体の投稿って「写真がめちゃくちゃ良い」「珍しい被写体を撮影する」くらいでしか伸びないようになってしまい、だんだんと行き詰まりを感じたんです。

そこで、たまたま僕たちの仲間にエディトリアルに強いデザイナーがいたので、それならInstagramを使ってなにかおもしろいことをやろうと。そんな話をしていたら、雑誌のようなかわいいデザインができてました、奇跡みたいな話です。

三島:なるほど(笑)。

横尾:それと、2019年以前からコンテンツに情報量を盛り込むことの重要性は感じていました。「好き」を届けるというInstagramの思想を考えたとき、ユーザーさんに喜んでもらえる情報を届けることは必要だなと思っていて。

そこで、文章・写真・デザインをかけ合わせたコンテンツを作り、ブラッシュアップしていきましたね。

三島:随分と早いタイミングで雑誌らしいコンテンツに着目したのがすごいですよね……試行錯誤はいろいろとありました?

横尾:デザイン面ではありましたね。当初は、写真に手書き文字を書いたり、写真を一面に配置してデザインをあしらったりしていたんです。でも、それって写真の雰囲気でフィードの雰囲気も変わってしまうから統一感が作りにくくて。

僕自身の思想として、量産できる体制を作りたいと思っていたので、ある程度統一感が作れるフォーマットをと考えて今のような枠を付けるスタイルにたどり着きました。

三島:Photoliさんみたいな雑誌風のコンテンツって2019年の終わりから2020年にかけてのトレンドだったので、早めに始めていたPhotoliさんの事例をよく弊社の資料にも記載させてもらっていました(笑)。

横尾:その話、各所からよく伺います(笑)。たしかに2018年の末には情報量を増やすコンテンツをと考えていたので、比較的早いタイミングでの切り替えだったかもしれません。

三島:ありがとうございます。続いて、こちら。

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横尾:僕ですね。今までよりも情報の伝え方が文章・写真・デザインを駆使したリッチで立体的なものになったなと思います。

今ってむしろコンテンツがデザインされているのが当たり前で、いかに情報を詰め込んで、デザインを見やすく、保存してもらうのかを各アカウント考えているのかなと思うので……。

三島:本当にそう。ただカメラマンをアサインして写真を撮るだけではだめで……

横尾:つまり、すごくお金かかるんですよね(笑)。僕らは比較的、採算度外視でみんなでやりたいものをと思って進めているんです。デザイナーやフォトグラファーがワクワクできることが一番重要なので。

ひとつの投稿に関わるクリエイターがフォトグラファー・編集者・デザイナーといるので、工数もかかるしお金もかかるというのがリアルなところですよね。

三島:個人ではなくチームでクリエイティブを作るよう体制が変化しているところも多いですよね。なっぴはカメラマン、デザイナー、社内のディレクターやプランナーなど関わる人が多いように思うんだけど難しさとかありますか?

井関:なにを重要視するのか、考え方が人によって違うのでコミュニケーションを取りながら常々進めていくという感じですね。

特に弊社の場合、お客様の支援が主なのでできることに限りがあったり、誰の意見を取り入れるのかなどが難しいときもあって。常に「なにが重要なのか」を考えながら見極めて運用しています。

三島:ありがとうございます。初っ端から生々しい話が続いていますが(笑)、続いてはこちら。


コンテンツよりも、まずは道筋の設計を

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三島:クリエイティブを作る上での流れやポイントについてですね。

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三島:まずはクリエイティブができるまでの流れ。考えてくれたのは涼くん?

横尾:はい、Photoliはよく「デザインがきれいだよね」と言っていただくことが多いんですが、実際のところはデザインよりも企画や構成に重きを置いているなと思ったので、この話題を書きました。

● 企画=ひとつの投稿で何を、どう伝えるのか
● 構成=それらをどのように伝えるのか
● クリエイティブ=ブランドや世界観に合っているのか
● あしらい=その世界観を形作るこだわり

と定義していて、企画〜構成のタイミングで情報量をコントロールしています。

情報量を増やすことが大切と先ほどまでの話でありましたが、僕らは写真メディアなので読者の方が実践してくれることが大切だと考えていて。そのため、あえて情報量を制限して咀嚼できる量にと絞り込んでいます。

月に1〜2回、企画会議を行なっているので、そのタイミングで情報量をどうするのかフォトグラファーや編集者と話していますね。

また、構成では情報を伝える順番や緩急などを精査しています。1投稿全体もそうですが、1ページに中に伝える情報が多すぎるとパンクして離脱されてしまうので、流れや起承転結などを考えたり。

オウンドメディアで記事企画を行うのと同じくらいの工数はかかっているかなと思います。

最後にあしらいですが、ここはデザイナーにほとんどおまかせです。デザイナーの個性が光る部分なので、ディレクターから指摘することはあまりないですね。

三島:企画から入るこの流れは本質的ですよね。結構、企画をおざなりにしてしまうケースってあるような気がします。

横尾:デザインはあくまで情報を伝える手段に過ぎないので、先に構成を決めておくことは重要ですね。

デザイナーがしっかりと構成を汲み取ってくれるからうまくいっているという点はありつつも、流れや伝えたいことが不明瞭であればデザインも方向性を見失ってしまうものだと思います。そういう意味で、Photoliでは記事構成は絶対に必要なものですね。

井関:私も、複数のページをまたいで行うカルーセル投稿を作るときに構成の必要性を感じます。なんとなく雰囲気で進めちゃうケースだと、必ず途中で「このページは何を伝えたいの?」となってしまうんです。

三島:なるほど〜。やっぱり方向性を決めるためにも、構成を決めることは必要な要素なんですね。

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横尾:たとえば、これは以前Photoliで公開したオールドレンズというレンズの紹介記事です。表紙をめくった2ページ目はリード文。いわゆるフックになる部分で、次のページをめくってもらえるかどうかの重要な役割を担っています。

2ページ目で興味を引いたら、3ページ目以降は比較的シンプルにレンズのおすすめポイントを5つ記載するという流れ。後半は重たすぎない情報量を意識しています。

三島:いや〜かわいい。これは見ちゃうよね。

横尾:ありがとうございます。この投稿の肝は2ページ目のリードですね。あとは、今回は入れていないですが、裏表紙の前に締めにあたるページを置いても良かったかもしれません。

読者さんにどんなアクションをしてほしいのかなどを書けると、記事としての流れはきれいかなと。こんな風に読み進めるときの感情を意識しながら構成を考えています。

井関:2ページ目をめくったら、その次もと見ちゃいたくなる設計ですごいですよね。詰め込みすぎず、でもしっかりと情報は詰まっていて、それでいて枚数も担保されているので保存数や滞在時間も多くなる。読みやすくて良いコンテンツだと思います。

三島:あとはやっぱり、伝えたいことが明確。ついあれもこれもと詰め込みたくなるけど、その気持ちにブレーキをかけてメッセージをひとつに絞ることが大切なんですね。

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横尾:最後に、あしらいについて。Photoliらしさを際立たせるのはこの要素で、デザイナーに遊んでもらっています。

文字の入れ方、写真の切り抜き方など、構成にはなんの影響も及ぼさないけれど、デザイナーたちの意思が反映される。ここをこだわれるかどうかが「世界観」を作るのに大切かなと思います。

三島:世界観って、人格みたいな要素なんですかね?

横尾:そうだと思います。この例に出した記事では、かわいらしい雰囲気を作っています。

三島:きれいなクリエイティブですね。中身が詰まっていて、それでいて、きれい。

横尾:ひとつのコンテンツが完成するまでには、フォトグラファー→編集者→デザイナーという流れをたどっていて、デザイナーが制作してくれたデザインを見てディレクターがフィードバックを出すというフローです。

ただ、Photoliの場合はデザイナーの判断に委ねる文化があって。仮にディレクターが「ここはこうしたらどうかな」と伝えたとして、デザイナーが「ノー」と言ったらその答えはノーなんです。

エゴのように捉えられがちですが、そのエゴであるデザイナーらしさを活かすことこそがこだわりなんだと思うんです。

三島:支援会社目線で考えると、なかなかないやり方だと思います(笑)。

横尾:ですよね(笑)。デザイナーが質の高いクリエイティブを作ってくれているからできることだなとは思います。あと、先に構成を固めているから、伝えたいことが伝わるならデザイン面では遊んでほしいなと。

三島:しかも提案力のあるデザイナーと一緒に仕事ができると、お互いに意見を交わしながら制作が進められますよね。困ったときはデザインの観点から「こうしてみては?」と助け舟を出してくれる。そういうチームだと制作は進めやすいですよね。

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井関:続いて、弊社で担当している東京メトロさんのInstagramアカウントの事例です。これは情報を詰め込むタイプの投稿のなかでも、ちょっと特殊で小説を公開しています。文字情報の多い小説を届けるために、1枚目に写真とキャッチコピー、2枚目に小説という設計を行いました。

小説って誰かに強要されて読むものではなく、自分の意思で読むもの。だから、押し付け感のない形で2枚目に遷移してもらえるよう、1枚目の右下部に紙がめくれたようなあしらいを施して自然に没入してもらえる世界観を作りました。

三島:支援会社としては特殊な例ですよね。みんなに読んでもらうためのコンテンツではなく、読んでくれる人だけが楽しんでくれればという視点なので。小説を取り入れたことで、特に滞在時間が長くなり、フォロワー外へのリーチも伸びています。

横尾:文章量が絶妙ですよね。活字を見る時間が減った世代にとって、電車に乗っているちょっとの時間で読めるくらいの、ツイート以上ショートショート未満の分量はほどよくて。この文章を見せるフォーマットは本当にすごいなと思いながらアカウントを見ています。

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井関:これも私です。クリエイティブを考えるにあたって、トレンドもあってか情報量の多い雑誌風のコンテンツを作りたいとお声がけいただくことが本当に増えました。

でも、本当にその手法が正しいのかどうかは、今一度考えなくてはならないと思うんです。実際に以前あった事例では、とある商品を展開するブランドさんとのお仕事で、商品の見た目が素敵だったのでその良さを活かすために雑誌風ではなく写真のみで運用を行う提案をしました。

三島:情報量が多いとはいうけれど、コンテンツの届け方はあくまで手法でしかないですからね。流行っているからという理由だけで投稿を始めても、たぶん目的は達成できない。

井関:ブランドやコンセプトにあった運用方法は必ず存在します。だからこそ、流行り廃りに踊らさられず、何が伝えたいのか、そのための発信方法はなんなのかを紐解くことが大切です。


ブランドイメージとクリエイティブの良い関係

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三島:いろいろと白熱していますが、次のテーマはこれ。実際に制作しているからこそ感じる課題を知りたいです。

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横尾:フォーマットを作ってしまったからこその悩みというべきか、1枚の写真のみで魅せることが難しいなと感じています。というのもInstagramのアルゴリズム上、雑誌風のコンテンツが好きな方に僕たちのコンテンツはレコメンドされていて、読者さんが集まっているんですよね。

だから、写真1枚という見せ方は今さらもうできなくて。写真の撮り方を届けているメディアなのに、写真だけというコンテンツは届けにくいジレンマを感じています(笑)。

また、企画を作り込んだメディアなので、実際に記事を書いてくれているフォトグラファーへのスポットライトが当たりにくいのも悩みですね。フォトグラファーにまで注目が集まり、好きになってもらえるメディアへと変わることができたら新しく挑戦できることもあるのになと思っています。

井関:フォーマットにする弊害として、最初にきちんと作り込まないと後からボロが出てしまう点も挙げられますよね。クライアントさんにフォーマットを用意したデザインを提案する場合は、本当にこのまま進んでいいのかとすごく考えます。

三島:準備時間が少なければ少ないほど、フォーマットを作ることのリスクは付いて回るような気がします。

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横尾:これは僕たちが企業のクリエイティブ支援に関わる際に感じる課題です。Photoliを継続したことで、雑誌風のコンテンツ作りには慣れたけれど、どのブランドや企業も同じ見せ方をするのが良いとは限らない。

そう考えたときに、ブランドイメージをどのように企画やクリエイティブに落とすのか。その設計がまだまだ難しいなと思っています。

三島:「そのブランドが……!?」みたいな企画やクリエイティブってたまにありますよね。たとえば、僕はナイキがすごい好きなんですけれど、もしもナイキがInstagramでイメージと全く異なるクリエイティブを投稿していたら少し複雑な気持ちになると思う。格好良くいてほしいな〜って。

横尾:「おすすめスニーカー5選」みたいな企画とかですよね。

三島:ええ、それすごい嫌かも(笑)。

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井関:ここからは私ですね。弊社の場合、クライアントさんのいるお仕事なので、誰の意見を聞き、何をどう修正するのかと考えたり悩むことがあります。

基本的にはブランドに最も詳しい担当者さんの意見を採用するんですが、目先の修正内容に目を向けるのではなく「なぜそう修正したいのか」を深堀って理解することがなによりも大事。その内容によっては、別の改善策がある可能性も考えられるからです。

三島:難しい問題ですよね〜。涼くんはどうしてますか?

横尾:修正って一つひとつは微々たるものだけど、もしもそれが100投稿溜まったとしたら世界観として認識されるようになるものだと思うんです。だから、なるべくその世界観を作るこだわりの部分ではデザイナーの意見を採用したいなと思いますね。

性善説な運用かもしれませんが、エゴを積み重ねた結果生まれたのが今のPhotoliなので、その軸はあんまり変わらないかなと。

三島:Photoliの場合は社内チームだからこそ生まれたルールなのかもしれないですね。クライアントさんのいる仕事の場合は、デザイナーの意見がいつも通るわけではないので、その場合に守るべき軸や一貫性を意識しておくのが大切な気がします。

横尾:そうですね。あとはペルソナシートを用意して細かくルールを生み出したり、一貫性を保つためにトンマナや方向性などを含めてドキュメントにまとめておくのも良いかもしれません。


今注目している&気になるInstagramアカウント

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三島:すでに時間が迫っているんですが、お二人が注目しているInstagramアカウントをサクッとお話できらと思います。まずは涼くん。

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横尾:個人的に最強だと思っているMAZDAさんのアカウントです。情報量が少ないわけではなく、むしろ雑誌風の投稿もある。でも、安っぽさのないデザインで、シンプルだけどノイズがなくて洗練されているんですよね。

MAZDAさんのブランドらしさを感じられるフォーマットで良いところ取りをしている、すごく良いアカウントだなと思っています。

三島:いや〜良いですよね。ブランドの世界観保ちつつ、しっかりとコンテンツを投稿できているのはすごいです。

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横尾:続いてはTAKEO KIKUCHIさん。最近、ストーリーズ広告に登場してアカウントにアクセスしたんですが、ブランドイメージを阻害しないイラストの使い方が素敵でした。

世界観はちゃんと守っているのに、どこかかわいい。写真とデザインの組み合わせもすごくマッチしているので、ブランドマネージャーやクリエイティブディレクターたる人物がいるのかなと予想します。

三島:「この世界観の中では出しにくかっただろうな〜」と感じる投稿がときどき紛れているのも、なんだか人間らしくて感じるものがありますよね。

横尾:あ、そうです。セールのおしらせとか。「Instagramでも告知してよ」みたいな社内のやりとりがあったのかなと勝手に想像しています(笑)。

三島:たしかに。とはいえ、イラストと写真を用いたクリエイティブは今どきですごくかわいいですね。

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井関:私からも2アカウントご紹介します。ひとつはmoogyさん。麦茶のアカウントなんですが、ブランドコンセプトとデザインがとてもマッチした例だと思います。

他のブランドがこのかわいさを目指して真似するだけではきっとうまくいかない、プロダクトとアカウントの世界観を合わせることの大切さをすごく感じるアカウントです。

三島:このパッケージだから、このデザインが成り立つという感じですね。麦茶なのにこのキュートさはずるいなあ。

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井関:もうひとつは、洋服の青山さんのガールズアカウントです。今までご紹介した事例が、わかりやすいデザイン性の洗練さなどに焦点を当てたものが多かったので、新しい切り口としてご提案できたらと思い選びました。

ターゲットのインサイトをしっかりと理解しているからこそできる提案ですし、刺さる人にはすごく刺さるという内容だなと思うんです。運用目的をしっかりと設計したのだなという意思を感じます。

横尾:「洗練されている=良い」ではないことを感じますよね。クリエイティブってファッションとすごく近しい部分があって、洗練されているものがいつだって万人受けするわけではないんですよね。

デザインの方向性やテイストは手段のひとつにしか過ぎないので、目的に対して合っているならどんなコンテンツでも良いと思うんです。

三島:その通りだと思います。このアカウントで投稿されているのは、洋服の青山さんだから出せるコンテンツ。インサイトと知見があるからこそできる発信なんですよね。


〈 質疑応答 〉どんな投稿なら雑誌風が向いている?

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イベント中に寄せられた質問をまとめてご紹介します。


Q . どんな運用目的がある場合なら雑誌風、小説コンテンツなどを制作すると判断しますか?

三島:難しい質問ですね〜。まずひとつ言えるのは、投稿するネタがたくさんある場合は雑誌風のコンテンツを作りやすいのではないかなと思います。Photoliさんのように、記事や写真のストックがあるなどもきっかけとしてはありそうだなと。

井関:たしかに、伝えたい情報が多い場合は、情報量の多いコンテンツとの相性が良いと思います。そこから雑誌風にするのか、小説にするのかの判断は、ケースバイケースなので一概には言えないです。

横尾:僕も情報量次第かなと思いました。情報量が変わるとデザインや見せ方は大きく変わるので。仮にデザインを入れるとしても、写真を複数枚配置するだけのシンプルなカルーセル投稿になるかもしれません。

あとは、ユーザー層のおしゃれ感度が高いなら雑誌風にするとか。情報量とユーザー層とネタの数の掛け合わせで判断するのが良いんじゃないでしょうか。

井関:ご紹介した東京メトロさんのアカウントの場合は、メトロをもっと使ってもらうことが目的だったので、日常的に思い出してもらえるものをと考えて小説を選びました。

おでかけ紹介メディアになるのではなく、東京メトロだからこそ届けられる視点をと考えての発想なので、時と場合によってしまうんですよね。

三島:本当に目的次第、商品やブランド次第ですよね。反対に、プロダクトの数が少なくても企画やテーマ次第では一日の生活に寄り添ったストーリーを考えてコンテンツを作ったりもできる。「なにをやりたいのか」がブレなければそれを実現する方法は数多あるのかもしれません。


Q . 1投稿にどのくらいの工数をかけていますか?

横尾:Photoliのコンテンツができるまでのフローは、企画・執筆・編集・デザイン。企画は人にもよるのでまちまちですが、僕の場合は20〜30の企画を1時間で立てて、2時間ほどで執筆。編集時間は明確にはわからないですが1.5時間くらいでしょうか。

デザインはめちゃくちゃ早いときだと1時間ほどで完成する日もありますが、だいたい3〜4時間ほどを見ているので……合わせると1投稿あたり1営業日くらいです。

三島:早すぎる(笑)。

横尾:あくまでもコンテンツを制作することに慣れているからこそですよ(笑)。

井関:私たちの場合は、複数のクライアントさんを担当しているというのもあり、だいたい1ヶ月前から翌月の投稿を準備しているスケジュール感ですね。投稿を制作することも大変ですが、なにより大変なのが目的やテーマに合ったクリエイティブを考えるところ。

横尾:ユーザー理解を必要とするクリエイティブ支援の場合はしっかり時間をかけたいところですよね。適当な理解で済ませようとすると、細部に必ずアラが出てくる。


Q . Instagram広告におけるクリエイティブのコツはありますか?

三島:広告も目的次第だと思います。購入を目的とした広告配信なら、課題解決につながる訴求、ターゲットに刺さるコピー、価格訴求などを入れることが大切です。エンゲージ獲得が目的なら、気持ちに働きかける投稿が良いですね。

雑誌風のコンテンツも手段のひとつだと思います。ついクリックしたくなるような投稿であることが大切なので、オーガニック運用での反応を見ながら配信するコンテンツを考えるのがおすすめです。

Q . 今あるアカウントの世界観を変えるべきか迷った場合、判断材料となる検証項目はなんですか?

三島:質問だと計り知れない部分ですが、課題感次第のように思いますね。Photoliは検証項目ってありますか?

横尾:世界観を司るデザイン面での検証項目は設けていないですね。見せ方ではなく、企画が正しく届いているのかを検証しながら運用しているようなイメージです。デザインは比較的「えいや」という感覚で出しちゃっています。

井関:たとえばですが、本当に届けたいユーザー層と現状が乖離しているならガラッと変えるべきだと思いますが、すでにファンが多いなら世界観の変更はリスクかもしれません。広告配信でA/Bテストを行なって、エンゲージメントを獲得できるかどうかなど検証してみるのはいかがでしょう。

三島:それ良いかもしれないですね。新旧、デザインを2パターン作ってみて広告配信。それと、そもそも企画がきちんと届いているのかどうかを考える必要もあると思うので、企画面での精査が必要な可能性も視野に入れて検討するのが良いかもしれません。いわゆるブランドリニューアルと考え方は近しい気がしました。


まとめ

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三島:さて、いろいろとお話をしてきましたが、今回のパネルディスカッションで見えたことをまとめてみます。まず、クリエイティブは企画から考えること。当たり前のように思いがちですが、意外と目先のアウトプットばかりを考えてしまう例が多いのではないかなと思いました。

また、ユーザーが求めている情報をしっかり理解して、それをデザイン始め正しい手段でアウトプットする大切さも感じます。

最後に、弊社もクライアントさんへの提案の中でついつい“プラス”することを意識しがちですが、削ぎ落とすことの重要性も考えるきっかけになりました。いずれにしてもユーザーファーストであることに主軸を置いてクリエイティブを考えていきたいですね。

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三島:もちろん、クリエイティブには正解があるわけではない。だから、今回の話を聞いていただき「じゃあどうしようか」と考えてみていただけたらと思っています。

長々と話してしまいましたが、少しでも参考になったりクリエイティブを考えるきっかけにしていただけたら嬉しいです。今日はありがとうございました!


(編集後記)
本記事、書き手はPhotoliの人間ですが、今回は第三者視点でレポートさせていただきました。混乱を招いてしまうかと思い記載いたします。ご了承ください。

なお、一点、本文中にPhotoliで公開する記事の編集時間について「明確にはわからないですが1.5時間」と記載がありますが、正しくは30〜40分です。編集者目線でその点のみ訂正いたします。よろしくお願いいたします。

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