“好き”と向き合う、言葉にしてみる。「#写真を趣味から仕事へ」変える、一歩の踏み出し方
「好きを仕事に」って、よく聞くけれど、何から始めたら良いのだろう──。
誰もが気軽に情報を発信できるようになった今、クリエイターを名乗ることはそう難しいことではありません。実際、クリエイターとして「好きを仕事に」を体現している方だっています。
でも、でも、でも。
「つい、足踏みしてしまう」だとか「仕事にするための手立てがわからない」だとか「怖くて足がすくんでしまう」だとか。そんな気持ちを抱えることも、あるのではないでしょうか。
今回お届けするのは、抱き続けた「好き」を仕事にするときに知りたい、一歩踏み出すためのヒントたちです。
11月9日(土)に開催した、オンラインコミュニティ「.colony」の主催イベント“.colony × Photoli × GENICの「写真のはなし」 - 趣味から仕事へ。1歩前に進むために大切にしたいことを考える -”のトークセッションをレポートします。
▼ 「.colony」とは?な方はこちらから
https://note.mu/nontsu/n/nf072479c9872
「.colony」主催の古性のちさん、コミュニティゲストである写真メディア「Photoli」代表の横尾涼さん、トラベル&ライフスタイル雑誌「GENIC」を発刊するミツバチワークス代表の光山一樹さんを迎え、写真を趣味から仕事へと転換するための一歩をたっぷりと語っていただいちゃいました。
フォトグラファーとしてお仕事を依頼される機会が多い古性さん、依頼を受けたり依頼したりとバランス良く仕事につなげている横尾さん、そしてお仕事を依頼する光山さん。それぞれの立ち位置だからこそ感じる、趣味から仕事への橋の架け方に注目してご覧ください。
■古性 のち(@nocci_84)
1989年生まれのフリーランス。オンラインコミュニティ.colony主催。
写真と文筆を仕事に、時々ときめき蒐集をしながら世界中を旅している。1年の半分は海外。FUJIFILMさんの公式サイトでの連載や、ガイドブックの写真撮影、コラムに合わせた写真提供などが中心。カメラ歴は8年ほど。Twitterが大好き。
■横尾 涼(@ryopg8)
写真のコツとフォトスポットを紹介するwebマガジンPhotoliの代表・フォトグラファー。写真の楽しさを広めたい人。マーケと写真が好きです!
Photoli:https://photoli.jp/
■光山一樹 ミツバチワークス代表、GENIC発行人(@genic_web)
雑誌「GENIC」は、毎日をフォトジェニックに送りたい女性のためのヒントをたくさん詰め込んだ、カメラとトラベルのライフスタイルマガジンです。今流行の写真スタイルやおしゃれな旅先、使いやすい最先端のカメラなど、読むだけで日々をセンスアップできる雑誌を目指し、発刊しています。
GENIC:https://genic-web.com/
自分の「好き」「楽しい」に、素直に発信してみる
古性のち(以下、古性):今日はよろしくお願いします。今回は、事前に用意したトピックに沿ってお話できたらと思います。最初のテーマは「今、必要としているのはどんな人か」。
技術面の話だけではなくて「こういう性格の方と一緒に仕事をしたら気持ちいい」「こういう考え方の方と仕事がしたい」などの目線も踏まえたお話を聞いてみたいのですが……まずは、光山さんが、雑誌やWebなどで、どのようにお仕事をご一緒する方を探したり見つけたりしているのか伺ってみたいです。私がGENICさんとお仕事をさせていただいたきっかけも、SNSを介してお声がけいただいたことでしたよね。
光山一樹(以下、光山):そう、僕が古性さんを知ったのは、Twitterでしたね。こんな風に写真を発信している方がいるのだとすごく驚いて、お声がけしました。というのも、GENICでは、もともとInstagramを中心に情報収集することが多く、社内にTwitterを活用しているメンバーがいなかったんですね。そこで、新しくTwitterを始めて調べていたところ、古性さんを見つけた……と。「新しい!」と思いましたね。
古性:インスタランドから、Twitterランドにやってきたんですね(笑)。
横尾涼(以下、横尾):インスタランドと、Twitterランド(笑)。
会場:(笑)。
光山:そうですね(笑)。古性さんは、一言でいうと、写真も文章もとにかく輝いていた。後々、どうしてこんなにも心が惹かれるのかと言語化してみたら「フォロワーをただ増やすだけではなく、コミュニケーションを取りながら仲良くなったり、フォローしてくれている一人ひとりにも目を向けているからなのかも」と思いましたね。それを、Twitterのスタンスから強く感じたんです。たとえば、タイムラインに悪口を書かない、みたいな姿勢から見えてくることってあるじゃないですか。
古性:たしかに。あとは、ネガティブなことを書かないとか……?
光山:「明るさ」って重要ですよね。別に、毎日が特別なハッピーに包まれていなくても良いと思うんです。でも、自分だけの喜びや楽しみを持っていて、それを本気で好きなことが伝わってくると、お仕事をお願いしたくなるなと。のちさんの場合は、ときめきや旅が好きで、自分自身もそれらを楽しんでいることがよく伝わってきますし。好きや楽しさを自覚して、それを表現するって大事なことなのだと思います。
古性:わかります。「楽しむ」って本当に大事ですよね。少し前までは、旅系の写真も、モデルさんを起用して、旅先の様子をかわいらしく撮影していることが多かったんです。でも、今はむしろ自分ごとにできるくらい、近しい方の発信のほうがしっかり届くのかもしれません。本人が楽しんでいたり、好きなことを一生懸命やっている姿が見えるほうが、ワクワクするし自分たちもやってみようと行動を起こしやすくなります。だからこそ、楽しみながらキラキラ輝いている方ってたしかに必要ですね。
光山:過剰にキラキラしたり、楽しめないことを無理に取り入れなくていいから、日々のささやかな喜びを表現することを意識してみると良いのでしょうね。
写真に込めた意図や想いを言葉にしてみる練習を
古性:Photoliも、いろいろな方にお声がけして、メンバーを採用して作っているメディアですよね。私自身もPhotoliのフォトグラファーとして、一緒にお仕事をさせていただいているのですが、やりとりをしているSlackに新しいメンバーが入ってきて「はじめまして〜!」とお話することが多くて。どういうところを見て、一緒にPhotoliを作るメンバーを採用しているんですか?
横尾:Photoliの場合、まず前提に、写真の撮り方やフォトスポットを広めることで、個人の自己表現の補佐をしたいって想いがあるんです。だから、その想いに共感してくれることは必要です。ただ、フォトグラファーの採用に関しての条件は、ひとつ。僕では撮れない写真を撮っていることです。
Photoliには、フォトグラファーが10人ちょっと在籍しているけれど、全員、僕では撮れない写真を撮っています。他にも、デザイナー・マーケター・編集者も採用していますが、すべて採用基準は同じですね。そういう意味では「ここの文脈では誰にも負けない」って言えることを見つけるのが、すごく大切なのかなと感じます。
古性:なるほど。Photoliのフォトグラファーって、みんな、すごい視点で写真を撮っていますよね。びっくりします。
横尾:「このシーンを、あえてブラして撮るんだ……」とか、よく思いますよ。メディアを運営している以上、僕だけの偏った視点を届けることはせずに多様な視点が欲しいから、個性のあるメンバーにお仕事をお願いしていますね。
古性:あと、Photoliのフォトグラファーのみんなを見ていると、自分の意図を言葉にできる方が多い気がしています。自分の撮った写真を説明できない方って多いけれど、Photoliのメンバーは「〇〇な理由でこうレタッチしました」とか、きちんと言葉に昇華できるからすごいなあって。
横尾:基本的に、写真を言葉にできるようにと考えて、めちゃめちゃ僕や編集者が質問しながら言語化してもらうようにしているんですよね。「この影ってどうやって作ったの?」「なんでブレさせたの?」みたいに、質問と対話を繰り返すことで、後々写真を撮るときの引き出しになるので。
古性:自分の行動を言葉にして説明できる方は強いですよね。「やらない」のか「やれない」のかはわからないけれど、言葉にしている方って、あんまり多くはない気がします。
横尾:自分で対話するのって難しいから、聞き上手な人に話を聞いてもらうのが良いのかもしれないですね。
スキル化していないけれど重宝される「テキストコミュニケーション力」
横尾:あと、言葉に関連して、お仕事をお願いするときは「テキストコミュニケーションが上手な人」かどうかを意識しています。
Photoliの場合、対面で会ったことないメンバーと仕事をすることが多いし、基本はオンライン上でのやりとりなんです。だから、そこで気持ちよく仕事をするためのテキストコミュニケーションは超重要だなと。小さなことですが“ありがとうございます”を「ありがとうございます。」と書くか「ありがとうございます😭💓」と書くか、みたいな。
古性:“言葉”で思い出したのですが、昨日、このイベントの打ち合わせをしているときに「メールの文頭に時候の挨拶を入れるのって大切だよね」って話が出ましたよね。
横尾:「雪が降り始めましたね」とか?
会場:(笑)。
横尾:まあ、そこまで厳密ではなくても、仮になにかを指摘するときも「変更したら?」と伝えるよりも「この表現、すごく良い! でも、〇〇にしたほうがもっと良い気がする!」と伝えたほうが、受け取った相手もポジティブだと思うんです。一般的にスキル化している要素ではないけれど、重宝する能力だと思います。
古性:私も、今日本にいないことが多いので、どうしてもテキストベースのやりとりになるんです。だから、よりテキストコミュニケーション力って実感しますね。テキストコミュニケーションがうまいのは絶対に武器だし、SNSも文章での表現を必要とする要素も大きいので、柔らかい表現を使う方なのかどうかは意識的に見るのかも。
横尾:そうそう。DMでやりとりしたときに、コミュニケーションを取っていて気持ちがいいかどうかとかも見ています。
古性:即レスで冷たい方よりは、ちょっと返信は遅いけれどコミュニケーションが気持ちいい方のほうが良い気がします。
横尾:わかる。丁寧だと「あ、好き!」ってなります(笑)。
古性:ここまでの話をまとめると、まず光山さんが必要としているのは「好きを体現できる人」「明るい人」ですね。
光山:そうですね。テーマはなくても良いから、好きなことや楽しいことをきちんと表現している人が良いなと思いますね。
古性:横尾さんの場合は「世界観が深い人」「テキストコミュニケーションがうまい人」。
横尾:ひとつのトピックではなくても良いから、好きを突き詰めてみるのは大事ですね。
今すぐきっかけは生まれない。それでも「会う」が持つ力は強い
古性:次のテーマは、写真が仕事になるきっかけについて。おふたりには、お仕事を依頼する場合のきっかけを、私からはお仕事をいただく側として印象深いエピソードをお話できたらと思います。光山さんは、どういうきっかけでフォトグラファーの方にお仕事をご相談していますか?
光山:雑誌とWebでお願いの仕方が変わるので、今回はWebでのご依頼の話をしますね。まず、僕自身、お仕事をご一緒する方とは、できたら対面で会いたいんです。僕らが運営しているGENIC LOCALSでご一緒している、ぽんずさんやきっちゃんさん、オリンちゃんやこやまりんこさんとも、出会いは遡るものの最初は対面でお話させていただきましたし。
古性:対面ってことは、会ったことがないメンバー同士でお仕事をしているPhotoliとは真逆……?
横尾:会うことは少ないけれど、その代わり、僕はめちゃめちゃ電話しますね。
古性:昨日、イベントの打ち合わせのときに、光山さんに対して私が「会いたいって話をして『会いたいです』の連絡が殺到したらどうするんですか?」と聞いたら「嬉しい」って返してくださったのが印象的でした。
光山:うん、嬉しいから全員とお会いします。仕事のきっかけって、会ってすぐに生まれるものではないんですよね。先ほどご紹介した、ぽんずさんとはお仕事をご一緒するまでに初対面から1年近くかかっていますし、オリンちゃんは1年半越しです。最近お仕事をお願いしている旅人まりーしゃさんに関しては、4年前に一度会っていて、やっと最近ご相談できましたし。会ってすぐに何か始まるわけではないけれど、会っていると、その方の得意なことや好きなことを覚えているんです。
光山:僕たちは、いろいろなお仕事が日々ある中で、内容によって合う方を考えてご相談しています。実験的な意味を含めたチャレンジングなコンテンツを求められるときもあれば、老舗のカメラメーカーさんからお声がけいただく、クオリティをすごく求められるお仕事もある。
だから、今すぐってわけではないけれど、会っていて個性を知れたら、ふとしたときに「お願いしてみよう」って思えますよね。たとえば、プリンの好きな女の子がいたら、グリコさんからご依頼をいただいたらお声がけしたい、とか考えているんです。僕らは、写真を仕事にしたいと考えている方の応援もできたらと思って事業を行なっているので、その可能性を幅広く持つようにしています。
古性:さっきの話に戻りますが、自分の好きを説明できることってやっぱり大事なんですね。私も、以前、イベントで会った子に「熱いインタビューだけは誰にも負けません」と自己紹介されたことが印象的すぎて。だから、インタビューのお仕事があったら、その子を思い出してご紹介しましたし。「写真が好き」と言っても、みんなだって好きだから、その中でも好きなものや撮りたいものを見つけることが大切ですよね。あとは、時候の挨拶かな(笑)。
光山:僕らって、手紙を書く世代なので、昔は時候の挨拶の知識が必要でした。でも、最近になって「どれだけいらないことに時間を使っていたのか……」思いました。時候の挨拶云々よりも、絵文字の使い方を始め、気持ちよくやり取りするできるスキルのほうが大事だなと。インターネットが登場する前は、社会のルールに沿って常識ある行動を取ることが仕事のポイントでしたが、今はそれよりも会話のキャッチボールができるほうがよっぽど大切。僕も、気軽に連絡をもらえたほうが嬉しいです。
古性:ただ、ひとりぼっちの状態でご連絡するのって、すごく勇気がいりますよね。気軽にご連絡と言えど、なかなか難しい。
光山:3人くらいとチームを組んで会う、とか良さそうですね。「話が聞きたい」「写真を見てほしい」と、仲間と連絡して会えば怖くないかもしれないです。
古性:仮にひとりで連絡しても、返事が返ってこないとメンタルもつらいですしね。
光山:インパクトが大きいから、すぐに結果が出なくても、チャンスは増える気がしますよね。
古性:チームでまとめてご連絡もらったらびっくりしますよね(笑)。
横尾:記憶には残る(笑)。
大抜擢は、案外ない。コツコツ積み重ねて生まれる仕事ばかり
古性:横尾さんは、Photoliで一緒に仕事をしているときの、印象的な話とかいつものお願いするきっかけとかって、どんなものがありますか?
横尾:僕らの場合は、オフラインで会った方に仕事をお願いしたパターンってゼロなんですよね。TwitterやInstagramでフォローしていて「すごい」と思った方に、お仕事をお願いすることが多いです。GENICさんとは真逆ですね。
光山:雑誌のほうは、そのご依頼の方法が多いです。一定のクオリティを求められるから、SNSでしっかりと結果を残しているフォトグラファーさんにお願いしていますね。
横尾:絶対にクオリティを落とせない大事なお仕事は、一度お願いして良かったと感じられる方でないとお願いできない気がしますね。
古性:そう考えると「大抜擢」ってなかなかないもの、なのかもしれないですよね。小さな階段をコツコツ上って、実力や結果を積み重ねた先に、理想とする仕事はあるのかなと。なんでもそうですが、積み上げていくのって大事ですよね。
横尾:たしかに。話を戻しますが、お仕事をお願いするときは、フォトグラファーの特徴を意識して企画を考えてご依頼するのが多いです。「この方は、ポートレートではなく、景色を多めに取り入れた写真がうまい」と感じたら、それを元にご相談する記事テーマまで考えてからご相談する。もちろん、メディアの都合上、個性を出しすぎない写真の知識を書いてくれるフォトグラファーを採用することもありますが。
あとは、リプ(リプライ)やDMなどのやりとりを通してコミュニケーションの感覚を掴んだり、その方のタイムラインを見て人柄を知ることも多いです。タイムラインに怒りを詰め込んだ投稿が多いと「いつか、ユーザーやクライアントの悪口まで書いてしまうかもしれない……」と考えてしまうので、ご相談はできなくて。
古性:なるほど。横尾さんの場合は、リプからコミュニケーションが始まるから、お仕事をしたいと思ったときはまずリプを送ったらいいってことですか?(笑)
横尾:全部が全部お仕事にはならないけれど、いただいたリプはもちろん見るし、ありがたいですし、そこからお仕事につながることもあるとは思います。
古性:ということは「お仕事がしたい、でも怖い」ってときには、2〜3人でチームを組んでリプするのが良いんですね。「今からリプします!」みたいな(笑)。
横尾:「リプを送るよ」ってリプをするってこと? 斬新すぎる(笑)。でも、本当にチームを組むのはめちゃめちゃ良いと思います。
光山:過去には「オフィスに行きたい」ってSNSでご連絡をいただいて、別の方がそのご連絡に乗っかって、本当にオフィスに来てくれた例もありますよね。実際に、その方とはお仕事もご一緒しています。
無いなら自分できっかけを作る。ワクワク感が伝播した「#FUJIFILM生誕祭」
古性:私からは、依頼される側として「チーム」の文脈で思い出した、印象的なお話をさせてください。私、今FUJIFILMのカメラを使っているのですが、公式メディアで連載を書かせていただいたり、イベントに呼んでいただいたりと、いろいろなご縁をいただいているんです。
そのきっかけが、1年半前に株式会社ドリップの平岡さんと主催した「FUJIFILMユーザーを集めたフォトウォーク」で。FUJIFILM好きのメンバーを20名集めて開催したのですが、実は、そのフォトウォークの実施日がたまたまFUJIFILMの誕生日だったんです。
古性:そこで「#FUJIFILM生誕祭」のハッシュタグを作って、全国のFUJIFILMユーザーさんにも届いてほしいと思いながら発信しました。そしたら、本当に関西や九州の方にまで届いて、ハッシュタグを付けた投稿が全国から集まって、FUJIFILMの方にも届いて……。その後、メッセージをいただいてお仕事をご一緒させていただくようになったんです。
でも、考えてみたら、そんな大きな影響力ってひとりでは作れなかったし、大勢でチームを組んだからこそ成立したと思うんです。だから、もしもやりたい仕事があるのだとしたら、既存のイベントやコンテンツに頼るのではなく、自ら企画して「作る」のも大事です。仲間を作って一緒に動くと、仲間にも還元しようと思って頑張ることもできる。良い仕事だなと感じます。
横尾:とくに、FUJIFILM生誕祭のときは、全員ワクワクしながら発信しているのが伝わってきましたし。仮に大人数で発信していたとしても、打算的だと「数字を追いかけているんだよね」と絶対にバレてしまう。そう思うと、ワクワクしながら発信できることをやるのはすごく大事ですよね。
古性:たしかに。ひとりでできることは、限られています。だから、自信がないときは隣の子に「ねえねえ」と声をかけて行動してみると良いのかもしれないですね。
写真を仕事にしたそれぞれが、今注目する3人
古性:いろいろとお話が盛り上がりすぎているので、ここからは少し駆け足でお送りしますね。さて、次のテーマは「今注目している人」ですが、光山さんはいかがですか?
光山:僕は、自炊料理家の山口祐加さんです。以前、古性さんが仲良くしている会社のオフィス兼イベントスペース「天窓」のオープン1周年パーティーにお邪魔した際に、飲食スペースで料理を作られていたのが山口さんでした。彼女は、有名料亭の出身でもないし、発信するテキストや料理が群を抜いてうまいってわけではない。でも、素朴でおいしい料理を作っていて、それを楽しんでいることが伝わってくるんです。
横尾:僕が注目しているのは、文月ふみさんです。写真が好きなのはもちろんだけど、何より世界観が好きで。というのも、彼女の写真は「夕暮れから朝日が出るまで」に撮影したものが多くて、その上、外が暗いときに写す“青色”が本当に綺麗なんです。フィードを引いてみると、統一感があって素敵だなと。
横尾:これって、自分自身がそのテイストをすごく好きだからこそ、同じテイストを数多く撮っているのだと思うし、その上、それぞれのクオリティもとても高いです。「この方はこういう写真」と印象付けるような、個性が光る写真だなと感じています。
古性:私は、𓍯静寂ゆと(宵月 絃)さんに注目しています。写真が綺麗なことに加えて、提案の仕方がすごいんです。たとえば、6月の梅雨の時期になると、あじさいの写真がタイムラインによく流れてきますよね。あじさい単体か、あじさいの中に女性が埋もれたポートレートの二択をよく見かけるのですが、ゆとさんは、傘にほんの少しのあじさいを乗せて切り取っていて。
古性:他にも、小瓶にあじさいの花を閉じ込めたり。日々の小さな好きを見つけて、それをアレンジして投稿してくれるセンスが素敵だなと思ったんです。瓶に花びらを詰めようなんてなかなか考えないけれど、体験を上手にデザインできる。アイデアセンスも抜群すぎる……と思いながら、彼女の提案を眺めています。
横尾:見ている視点が、全然違いますよね。
古性:彼女はよく「花が好き」と言っていて、実際に花の写真の投稿も多い。だから、ついあじさいを見ると、ゆとさんを思い出します。
写真との向き合い方は、人生の向き合い方と似ている
古性:最後は、写真を仕事にする上で今後大切なことについて。光山さんは、打ち合わせのときに「どう生きるのか」と仰っていましたよね。
光山:そうですね。もちろん、写真の技術を向上させるとか、自分の好きを深めるとかも、一定必要だと思います。ただ、写真を撮る行為って、あくまで生活の中の一部でしかありません。どうご飯を食べて、傘をさして、靴を脱ぐのか、の並列にあることのような気がして。そう考えると、結局「写真をどう撮るのか?」の問いも、引いていうと「生き方」なのだなと。
横尾:僕は、繰り返しになりますが、自分のことを知ることが必要だなと思っています。僕自身も「どうしてPhotoliをやっているのか?」「僕が代表であるべき理由は?」「どんな価値を誰に提供するのか?」をいつも考えながら事業を作っているんですよね。こういう、自分に問いかけるための質問集を作りながら、自分と会議を重ねていくのが良いような気がします。
古性:私は、後半にも出た「チームを作る」が一番良いのかなと。私が好きな言葉にこんなものがあります。
「ひとりで見る夢はただの夢、みんなで見る夢は現実になる」(オノヨーコ)
古性:価値観が近い仲間といると、みんなで集まってこんな風にイベントができるし、新しいメンバーと出会って生まれる何かがある。「.colony」も、その“現実”を作りたくて運営しています。だから、やりたいことがあるなら、みんなと一緒に手を組んでやってみることをおすすめしたいです。
今回のイベントをまとめると、写真を仕事にするためには「好きなことを体現する」「チームを作る」「リプを送ったり、会いに行く」ことから始めてみるのが大事ってことですね。少しでも、一歩踏み出すきっかけのお話がお届けできていたら嬉しいです。それでは、今日はありがとうございました!
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さいごに*
当日の様子は「#写真を趣味から仕事へ」でも発信しています。ご興味のある方は、本レポートと合わせてぜひどうぞ!
Photo - Naoto Kimura & mayo (.colony)