物語「星のシナリオ」 -8-
その日の夜は、たくさんの人たちがおばあちゃんの家に集まってきた。
美味しそうな料理やお菓子を作って持ってくる人もいれば、自分が描いた絵を持ってくる人、ギターを持ってきて歌ってる人…。おばあちゃんと同じくらいの歳の人から、母さんより少し若いくらいの人まで。
ボクはこれまで、おばあちゃんのほんの一部しか知らなかったんだなって、そんなことを感じていた。
それとも。
おばあちゃんが月の女神だったってことをボクが知ってしまったから、新しい次元の扉でも開いちゃったのか…。
でもとにかく、そこに居る人たちがみんな、とても優しそうで楽しそうにしていることが、ボクとしては不思議と誇らしく思えたんだ。
「食べてるかい?」
「あ、うん。ねえ、おばあちゃん」
「ん?」
「今日は何か特別なパーティーなの?それとも、みんな良くこうして遊びに来てるの?おばあちゃんの家がこんなに賑やかなんて知らなかったよ」
「ああ、そういえば。こういう時間を一緒に過ごすのは初めてだったね。今日は満月。これは満月の宵の宴だよ」
おばあちゃんは珍しく酔っているみたいだった。いや…。違うのかもしれない。ボクにとって初めてなだけで、おばあちゃんにとってはいつもの、よくある日常なのかもな。
「満月の夜はね、こうして仲間と集まるんだよ。これは、あの星の世界の習慣さ」
「え?ってことは、ここに居る人たちもみんな月の女神さまなの⁈」
「あはは。まあね、そんなようなものかもしれないね」
えー。とんでもないところに入り込んでしまったのか⁈ボクの心臓はバクバクと鳴り響いていた。
「この人たちはね、この地上のカレンダーや時間、そういう囚われから解放されて仲間と楽しむためにここにいる。宇宙のリズムはね、この四角い数字の中では窮屈だからね。星の世界では満月になると、みんなで集まって、語らい、歌い、踊って、それぞれに宇宙のリズムを表現するんだ。それが宇宙全体の音色になって、地上にも響いてくる。だから今こうしている間に、そのリズムに波長を合わせているんだよ」
「宇宙のリズム…」
「そう。ほら今頃…向こうでも女神たちが宴の真っ最中だよ」
夜空に優しく光り輝く満月が、まるで誇り高く、そのことを証明しているように感じられた。
「みんな、それぞれのリズムがあるんだよ。そして、それぞれの輝きを放っているんだ。でも宇宙から見れば、それこそが一枚の美しいタペストリー。誰の輝きが特別明るいわけでもないしね。それぞれの輝きがあるからこそ、みんなで一つの素晴らしい輝きを放っているんだよ」
おばあちゃんの、まるで深呼吸をするかのような話し方。その言葉の一つ一つが、ボクはとても好きだった。
つづく
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