物語「星のシナリオ」 -11-
〜運命のバトンを受けとる〜
おじいちゃんが生きていた頃に一度だけ入ったことがあったその部屋は、あの頃と同じように、本棚に何百冊もの本が並んでいて、壁には
おじいちゃんとおばあちゃんの写真がたくさん飾られていた。
「ああ、この辺りだったかね」
おばあちゃんに促されて、ボクは本棚から一冊の本を手に取った。金色の背表紙に、表紙には金色の月と太陽が描かれている本だった。
「見ても、良いの?」
「ええ、開けてごらん。ただ、一つだけ」
「何?」
「この本を開くことは、あの星の世界に通じる扉を開けるのと同じなんだ」
「うん」
「あなたが望めば答えが見つかるだろう。ある意味あなたは、本来のパワーを思い出すことになる。そのパワーを、活かすのもむだに使うのも、あなたのその心次第だよ」
「うん」
いつになく、おばあちゃんの言葉からズシンと大きなものを感じながら、ボクはおばあちゃんを真っ直ぐに見つめ返した。
「この世界でのことは全て自分次第。人生のシナリオは自作自演だよ。あなたがここでの人生をより豊かに歓びに満ちたものにしようとするなら、あなたが見る世界はそれに応えてくれる」
ズシンと感じる大きさは、この本の重さだけじゃない。その先に広がる、あの星の世界のエネルギーの大きさなんだ。それは、宇宙の大きさでもあるんだ。おばあちゃんの言葉を受けとりながらボクは、そんなことを思っていた。
「おばあちゃん、ありがとう。ボク、開けてみるよ」
タイトルに「星のシナリオ」と書かれたその本は、ボクの旅をさらに先へと導き始めた。
・
「やっと起きたかい」
「あれ?うん…」
ボクが目を覚ましたのは、おじいちゃんの書斎だった。そうだ。あの本を読みながらボクは寝てしまったんだ。
「星の世界へ行ってたのかい」
「え?あ、いや。たぶん、行ってないよ」
「にゃ〜」
「そうかい。あはは」
「え?なに」
「奏詩が昨晩あの星の世界へ行っていたと、シロが教えてくれたよ」
「にゃ」
覚えてない。何も。
「そうかい。金星のところを読んでいて寝てしまったようだね。おそらく、読んでいる途中で金星について、ふと疑問を放ったんだろう」
「うん…。あ、えっと、どうかな。覚えてないや」
「その答えはもう、知っているはずだよ」
「無意識のうちに星の世界に行けるようになったってこと?」
おばあちゃんはただボクを見て微笑んだ。
おばあちゃんが持ってきてくれたサンドイッチを食べながら、ボクは
再び本を読んでみることにした。
つづく
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