物語「星のシナリオ」 -7-
「おばあちゃんは?おばあちゃん何でここにいるの?」
「こういう役も必要だろ」
「にゃ〜」
おばあちゃんの膝の上で寝ていたシロがボクを見てないた。
「そうそう、この子たちも大切な役を演じてくれてるよ」
おばあちゃんの家の陽だまりでのんきに寛いでいる猫たちに、そんな大切な役目があるとは思えなかったけど…。
でも確かに、虹を渡ったあの星の世界とこのおばあちゃんの家は、何か同じ安心感に包まれている優しい空間で、猫はそこを行き来する存在で…。ボクにはわからない重要な役目があるとしたら、そうなのかもしれないな。
「陽が落ちて来たねえ。今宵は満月だよ」
窓の外に見える月をぼんやりと見ているうちに、ボクの心の奥で何か大切な想いが芽を出した気がしていた。
「自分の太陽星座はね、その人生を輝かせてくれるものなんだよ。多くの人が自分の性格が描かれたものとして捉えているけどね、性格を担当しているのは月星座なんだよ」
「ボクは、月星座が獅子座で、太陽星座が乙女座だね」
「そう。さっき話したね。獅子座という肥沃な大地を大切に育てて、そこから、乙女座の太陽に向かって伸びる花を咲かせてごらん。それが、奏詩の星のシナリオの軸になっているから」
「乙女座の太陽に向かって伸びる花…」
「そう。今日みたいな乙女座の満月の日はね、その花にどんな想いが込められているのか、自分で感じるには最高の日だよ。今回の人生で大切にしていきたいテーマを、感じてごらん」
ボクはずっと前から、ここに生まれてきた意味が知りたいと思ってきたんだ。
「おばあちゃん、ボクは何をすれば良いんだろう?」
「それを自分で見つけに来たんじゃないのかい」
「おばあちゃんは知っているんでしょ、ボクの星のシナリオを」
「そうだねえ。だけどね、それは全て、それぞれにとっての体験なんだよ。それにね、自分のことは本当は、自分がいちばん良く知っているはずなんだよ。答えは全て、自分の中にあるよ」
おばあちゃんの答えが、どこか腑に落ちないまま、ボクはぼんやりと月を眺めた。
おばあちゃんがボクの求めている答えを全て教えてくれることを期待してたけど、それは…。そうか、もしそんな答えが簡単に聞けるのなら、ボクがこれから生きていく情熱が失われてしまいそうな感じもするな。
そうだとしたらボクは、この謎解きそのものを楽しみに生まれてきたのかもしれないな。
「おばあちゃん」
「うん?」
「もし、だよ。もし、母さんが父さんと結婚しなかったら、ボクは今ここにいないのかな」
「ふふふ」
おばあちゃん笑って、そしてボクの目をじっと見て言った。
「全ては、それぞれにとって完璧なシナリオさ」
それだけ言って、笑っていた。
母さんは、おばあちゃんとこういう話をするんだろうか。いや、待てよ。おばあちゃんが月の女神ってことは…。母さんも?
あー。何かまた、夢を見ているみたいでわかんなくなってきた。
つづく
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