物語「星のシナリオ」 -33-
「そう。星の世界のカレンダーではね、いま大きな時代が移り変わっていってるんだよ」
「うん」
「今の大人達は、前の時代も生きてきて、この時代の転換期を体験するっていうシナリオを描いてきてる」
「うん」
「でもね、子ども達はもう、新しい時代で生きることだけを選んできてるから、前の時代の当たり前は必要ないんだよ」
前の時代の…当たり前。
「前の時代の当たり前にしがみついている大人にとって、新しい時代の子ども達の感覚は全くわからないんじゃないかね」
「しがみついてるって」
「流れていくんだよ、時間も。シーンが移り変わって、登場人物も変わるのに、自分だけ前のシーンを演じていたら違和感だろう。でもねえ、どこかで違和感を感じていても、変化に抵抗してしまうのも、まあ自然なこと」
「そうなるとさ…。新しい変化に目くじら立ててる大人の方が、大きな視野で見ると違和感だったりするってこと?」
「ふふふ」
あー。なんか分かる気がするし、もしそうだとしたら、なんかホッとするな。
「そうなるとさ、おばあちゃん。学校の先生が言うことをボクの人生の基準にしなくてもいいのかなぁ」
「あなたの人生の真実は、あなたにしかわからないよ」
あー。そうだよなぁ。その言葉にホッとしたボクは、いつかの感覚を体感していた
大きな穏やかな川の流れに身を任せて、ゆらりと浮いているあの感覚。この流れがどこに辿り着くのかなんてわからない。でも。絶対に大丈夫。そんな絶対的な信頼を感じながらここに居る。
「なんだい、奏詩は。これからの人生の自由に、戸惑っているのかい?」
人生の…自由⁈…そう言ったおばあちゃんの顔を見ていたら、なんだか…あれ?これまで悩んでいた焦点が一瞬ボヤけた。
「人生は自由だよ。自分が体験したいようにすれば良い。誰の言うことも、あなたの人生を決定づけてしまうほどのものは何もないよ」
「おばあちゃん…。うん、そうだよね。ありがとう。なんだかすごい元気が湧いてきたよ」
自分の人生が自由で戸惑うなんて、思ったこともなかったな。決められた年齢になったから学校へ行って、そういう毎日が続いてて。この先も続いていく。そういう枠の中で、やらなきゃいけないことに押しつぶされそうになってる。自分のことをそう思っていたボクの中で何かが変わり始めそうな予感を感じさせたおばあちゃんの言葉。
ボクのこれからの人生も自由なのか?
だとしたら今のボクは、自分でその自由に目隠しをして、自分の人生の舵取りを、先生や誰かにさせておいて文句を言ってるようなもんだ。それで悩んでるなんて…どんな一人芝居だよ、これ!
「ふふふ。お茶をいれてこようかね」
つづく
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