物語「星のシナリオ」 -36-
〜ボクの未来〜
「ねえ先生はさ、今のこの仕事をしようと思ったのはいつだった?」
「いつだったかな…。はっきりは覚えてないけど、中学生の頃には何となくあったなあ」
「中学生?」
「うん。何か記憶に残るような出来事がキッカケだったと言うよりも、漠然と自分はこういうことやるんだろうなーって、『知ってる』感覚だったんだよ」
「あ…そっか…。過去世でもやってたからそれで?」
「ああ、そうだな。中学生の頃はまだ過去世のことははっきり思い出せてなかったし。むしろこの仕事をはっきりと目指し始めて、その記憶が蘇ってきた感じだったかな」
「なんか謎解きみたいだね」
「この仕事に進もうって決めたのは高校生の頃だよ、きみのおばあちゃんに出逢ってさ。その時から星の導きと共に過去の記憶も、今回の人生のシナリオも思い出していったんだ」
「人生のシナリオを思い出す…」
「自分自身で選び決めてきたはずのシナリオなのに、生まれてくる時に一度その記憶をなくしてくるんだよ」
「やっぱりそうなんだね⁈」
「うん。その方がリアルに体験を楽しめるからね」
「ほんとゲームみたいだよな」
「あはは。そうだよ、遊び感覚さ。そうやって様々な感情、体験を楽しみに来てるんだ」
「あははって…。そんなカラクリ知っちゃうと、悩むことがなんかバカらしくなっちゃうじゃん」
「ああ、そうかもしれないね。ある意味、もう悩めないっていうのも残念だよね」
悩めないのが残念なんてさ…。ああ、今のボクの心とは正反対じゃん。
「どうした、進路に悩む中学生くん」
ちょっと笑いながら、でも優しさ全開の先生の顔を前に、ボクは今の正直な気持ちを話し始めていた。
「うん。悩むっていうかさ…。なんか選択肢が多すぎて決められないっていうか」
「そうかい?確かに選択肢なんて星の数ほどあるだろうけど、きみに合う選択肢はそう多くないんじゃないかな」
ボクに合う選択肢…。
「きみの人生にある点と点を繋ぐだけのことかもしれないし、進路って考えることで難しければ、ただ今の自分が好きなことをやっていけばいいだけってことかもしれないし。」
今の自分が好きなことをやるだけ。
「ボクは今…なんか人生の謎解きをしているみたいでさ。星の世界に触れたり、先生と出逢って過去世の話を聞いたり…」
「うん」
「これが好きなことか?って聞かれてもわかんないけど、気になるし、なんかこう…突き動かされるような感じはあるんだ」
「うん」
「だけどこれってさ、やってても何の資格にも繋がらないし、何の職業にも当てはまらないよね」
「なるほど、そうか。それで悩み多き青年になってしまってるんだね」
「え?」
「自分がやりたいこと、進みたい道、どうすれば良いかも本当はちゃんとわかってる。だけどそこで、社会の常識と答え合わせしてしまうと正解がわからなくなる。自分が間違ってる気がしてくる」
「うん…」
「ってことはさ、もう答えは出てるんじゃないかな?きみの人生のシナリオは、きみが生きなきゃ意味がない。いろんな惑わしに負けずに自分の人生を生きるだけだと思うけどね」
つづく
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