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韓国の若者はなぜ仮想通貨に熱狂するのか -N放世代、アルトコイン、チキン屋-
はじめに
12月12日〜17日でソウルに行ってきました。弊社が韓国市場における取引が増えていること、普段お世話になっているパートナーやチームメンバーと親睦を深めたかったこと、新規取引先や日本市場に興味があるエンプラや投資家との面談などが主な目的でした。
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結論から言うととても収穫の多かった出張でした。新たな友人もできましたし、何より有識者より市場の状況を伺えたのが良かったです。
ここからは韓国のWeb3市場がなぜ盛り上がっているのかなど書いていければと思うのですが、その前に韓国という国の置かれた状況などNewJeans聴きながらヒアリングできた範囲で書いていければと思います。Super Shy!
国富流出
韓国は1997年に通貨危機を経験しています。韓国ウォンは大幅に価値を下げ、国際通貨基金(IMF)からの救済が必要となりました。
再構築策により、韓国企業への外国投資が増加し、端的に言うと韓国の生活インフラを担う企業が安く外資に買われました。韓国企業からの利益が外国人投資家によって本国に送金されることで、国内資源と資本の流出が加速しました。韓国第一銀行やKumho Industrialなどがアメリカ資本となり、日本の資本もかなり参画しました。
外国資本に大きく依存する経済は脆弱で、市場での価格決定は企業の利益>国民の利益というロジックで行われます。従って韓国の経済はインフレを引き起こしやすい圧力下にあります。
インフラコストは高く、韓国の不動産は中国によって投資対象になっている為住宅価格は年平均6%以上上昇しています。特にコロナ禍で住宅不足になってしまい、ここ数年の住宅価格は一気に上昇しました。住宅価格の上昇は特に都市で特に顕著になっており、ソウル中心地で60平米のアパートは1億円以上するとのこと。Oh my, oh my God!
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N放世代
「N放世代」とは、韓国の若者たちが経済的困難により人生のマイルストーンを「n個放棄(ポギ)」つまり色々なものを諦めるという意味からきています。
実際韓国の25歳以下の若者はこういった傾向にあり、恋愛、結婚、出産、家の所有、社交活動など様々なものを諦めています。前述したインフレや住宅価格の高騰、過度な社会的期待、高い失業率など、韓国の若者が直面している課題を反映しています。
恋愛、結婚、出産をあきらめる「三放世代」という造語が誕生したのが2011年で、その後、青年失業率の増加と非正規労働者の増加がマスコミで大々的に報じられるようになった2015年頃から、流行語として盛んに使われるようになった。
以降、三放に加えて就職やマイホームもあきらめる「五放世代」、さらに人間関係や夢までもあきらめざるを得ない「七放世代」を経て、今や人生のすべてをあきらめたまま生きる「N放世代」へと進化したのだ。
か、、、過酷すぎる。これに伴い、出生率も低下し合計特殊出生率0.78と1を切っています。
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日本も大差あるのかというと明日は我が身感ありますね。
韓国は伝統的な価値観が色濃く残っているので結婚は出産が前提になっているという社会的コンテクストが強いです。
男性が女性の家に挨拶に行くと色々質問されるそうです。
「職業は何か」→高い失業率・リーマンショック後増えた非正規雇用
「家は買えるのか」→住宅価格高騰
「マジ無理、n個放棄しよ」となります。
また定性的には、生産年齢における本業へのモチベーションが低いという話をききます。韓国は大手企業と中小企業の賃金格差が大きく、まともに中小企業に40年勤めあげてもソウル市内に家を買うことはかなり難しいそうです。
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選ばれた3%のエリートと残された97%のN放世代。競争に敗れた97%はヒエラルキーを感じながら生きていくしかないのでしょうか。
LINEフレンズの若手エースと話していて印象的だったのは、「韓国の若者は3%以下のエリート以外、公私共にストーリーが無いのです。社会のストーリーは割に合わない。私生活は諦めるしかない。コスパ良く生きていくしか道は残されていないのです」という言葉でした。Oh, say it ditto.
盛り上がる韓国のweb3市場
前述した社会的背景に関わらず韓国のweb3市場は活況を呈しています。
20万人以上のアクティブなWeb3ユーザーがおり、これらのユーザーの約15%が中央集権型の取引所(CEX)で取引しています。既存プラットフォームが信頼されていることが挙げられます。世界で最も注目されている市場の一つです。
上述した通り、強い購買意欲によって韓国の仮想通貨取引所で上場した銘柄は「キムチプレミアム」が乗っかります。韓国外の取引所と比較して5-10%のプレミアムが乗ります。
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弊社メンバーでもあるProfessor Jo氏によると以下のような要因が挙げられるとのことです。
①社会に対する期待値の低さ
韓国は激しい競争社会なので、良い大学に進学し有名企業に勤め、より多くのお金を稼ぐというスタンダードな社会的ステータスのプリセットが存在しますが、当然全ての人がそれを手にすることはできません。インフレや住宅価格の高騰により定職の収入だけでは満足な衣食住を達成することが不可能です。
選ばれた3%以外の非エリートはN放世代として、色々なものを諦めて生きていくしかありません。
そのため、N放世代前後で「この状況を打破できるのは自分しかいない」という雰囲気が存在します。リスクの高い資産に投資して1発逆転を狙います。つまり、社会に対する期待値の低さが翻って投資意欲の向上に貢献しているという状況です。
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Web3市場はN放世代がなんだ、諦めてないぜ!!チャンス掴もうぜ!という雰囲気が存在し、そういった存在をリードするオピニオンリーダー(KOL)が既存メディア以上に強い影響力を持っています。若年層の投資リテラシーは仮想通貨に関わらず高いと言えます。
例えば韓国の20代で活発な投資ソースとして学資ローンが存在します。上述したようなインフレ懸念から、韓国には政府が提供する学生ローンが存在します。その為、韓国の学生はローンを借りたら投資に充てるという方が散見されます。
VCに勤める若手のコメント「社会に何も期待していない分、自分に期待する機会としてweb3が存在します。Web3はWebの3.0というだけではなく、新しい生き方を模索する若者のサードウェイとしての3.0なのです」
What's your ETA?
②国による仮想通貨市場へのサポート
ICOバブルの時代には投資家保護の観点から韓国政府は仮想通貨市場に対して厳しい姿勢しでした。
しかし韓国政府も仮想通貨市場が国の経済をサポートする可能性を見込んで政府によるポジティブな姿勢も市場が大きくなっている要因の一つであると言えます。
例えば韓国は2024年第4四半期に中央銀行デジタル通貨(CBDC)の試験運用を開始します。韓国の人口の約0.2%に当たる10万人が、商業銀行がCBDCとして発行したトークンを使って商品を購入できるようになるそうです。
またSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)の法整備も進行しており、アセットをトークン化させて流通させる枠組みを整備しています。セキュリティトークンを発行するにはサンドボックス制度に登録することが条件なのですが、その制度適応の可否は各自治体に委ねられています。既に不動産の受益証券をトークン保有者が受け取るスタートアップなど出てきているようです。
③インターネット社会+ギャンブル気質
「ネチズン」という言葉があるように、韓国はインターネット王国です。もはや若者は現実世界より仮想現実に長く1日の時間を消費しています。
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韓国のネットカフェにはネチズンが集まりオンラインゲームをプレイしています。ボタン一つで100種類以上のフードが運ばれてきます。主にプレイされているのはFPSで、過激な描写があるゲームタイトルを好みます。
正攻法で稼ぐのが難しく、抑圧的な社会背景の中で、かつインターネットの力が強いという環境です。
その中では現実世界で貯めたルサンチマンをネットで発散するという行動が存在します。その中でも刺激的でお金を稼げるギャンブルが流行する傾向にあり、その一環としてアルトコイン・ミームコインなどへの投資が流行しています。
韓国国民は基本的にギャンブル気質です。そこに社会的情勢が相まってアルトコインへ投資する傾向にあります。
韓国ではビットコイン取引は5%前後しか行われておらず、残りの95%はアルトコインが占めています。これは各先進国のビットコイン取引比率40%と比べて対照的です。韓国に上場したアルトコインは価格が上昇する傾向にあります。
韓国進出のコツ
KOL文化
韓国はKOLと呼ばれる個人がそれぞれコミュニティを持っており、大きな影響力を持っています。韓国の若者にはメディアを信用しない空気感があり、KOLが持っている2000-20000人のテレグラムコミュニティが購買層として最も有力です。
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ここには良いKOLとそうでないKOLが存在し、良いKOLはお金を払っても必ず仕事を受けてもらえない場合があります。逆に良くないKOLはお金さえ払えばどんな案件でも受けます。所属するコミュニティメンバーも良いKOLは購買層がいますが、良くないKOLはエアドロハンターが主に寄ってきます。
良いKOLはプロジェクト側に「あまりエアドロをするとコミュニティの質が落ちるから良く無いですよ」というフィードバックをしたりします。
まずは良質なKOLのグループに認知されることが最重要です。KOLの中には有名なVCのパートナーなどもひっそりといます。
コミュニティの人数≠購買力
数千人のグループを管理しているコミュニティもいますが、こういった濃いコミュニティはオーガニックで購買力が強い傾向にあります。
逆にコミュニティの数が多すぎるとbotが多かったりBounty Hunterが多かったりと真に購買力の多い層に到達しづらい状況になります。韓国人は情報を独占する「インナー・グループ」を好む傾向にあり、数が多すぎると情報もジェネリックなものになってしまうのでSerious Investorはより少なく濃い情報を求めてコミュニティを移動する可能性があります。
ちょっと宣伝
弊社Murasakiでは上述したWeb3プロジェクトの韓国進出サービスを行なっています。今までサポートしたプロジェクトでは短期間で良質なコミュニティ形成に成功しています。
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興味のある方は私のXまでご連絡ください。ASAP!
https://twitter.com/Shinnosukee07
結び
今回は韓国出張で得られたインサイトを中心にお話しました。
前述したインフレ懸念や生活コストの上昇により若い世代は酔生夢死のようなスタンスを取りつつも、一発逆転のチャンスに賭けるというメカニズムを説明させていただきました。
やや悲観的なトーンでしたが、社会の暗闇の中で自らの光明を見出そうとする熱狂が存在します。
番外編:サードウェイとしてのチキン屋
もしあなたが韓国の若者で仮想通貨や投資のリテラシーが無かったらどうでしょう。安心してください。まだ閉塞的な社会から抜け出す道はあるのです。
それがチキン屋フランチャイズのオープンです。
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冗談のような話なのですが、基本的に韓国人のキャリアパスのフローチャートにはどこのフェーズでも選択肢としてチキン屋が現れます。
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韓国人のキャリアパスを簡単に示すと以下の通りです。
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チキン屋以外にも色々とフランチャイズは存在し、コーヒー・ピザなども存在します。チキン屋さんのフランチャイズ(BBQやbhc)が最も有名で、韓国にどんどんチキン屋が増えています。
仮想通貨や不動産投資のみならず、生活苦から抜け出し一発逆転の夢を見てフランチャイズ店をオープンする方が増えています。
しかし現実は甘くなく、毎年たくさんのチキン屋が潰れています。
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チキン屋で得られる平均年商は6,990,000 KRWです。純利益率が30%だとして、≒ 2,100,000KRWとなります。一方で韓国の世帯平均収入は5,409,640 KRWなので収入の期待値は韓国の世帯平均年収を下回っています。
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期待値マイナスではあるものの、中には成功しているフランチャイズオーナーがいるのも事実。生活苦から抜け出し、自分の手でサクセスを掴みとるオルタナティブとしてのチキン屋のご紹介でした!Be Who You Are!
ではまた!