見出し画像

賭けたくないけど予想はしたい!新スポーツエンタメ、ソーシャルプリディクションとは

スポーツプリディクションとは

過去にスポーツベッティングに関する記事など書いてきました。

近年のスポーツベッティング市場の盛り上がりにより、各国で広告や規制などが強化される動きがあります。スポンサーも心なしか減ってきていますね。

欧州はプロスポーツチームのスポンサーに関して広告規制やCTAの禁止を求めたり、子供向けのユニフォームにはロゴの記載を禁止したりといった動きがあります。

また、プロ選手などの関係者が賭博に関わることで不正の温床になったりします。(先日ギャンブル依存症による不正賭博のペナルティ・治療から復帰したトナーリ選手の記事)

つまり、多くの人々がスポーツベッティングに興味を持つ一方で、金銭・社会的リスクを避けたいというニーズも存在します。

アメリカのファンタジーベッティング

スポーツベッティングのオルタナティブ


ソーシャルプリディクションは、金銭を賭けることなく、ソシャゲっぽい雰囲気で予測を楽しむことができます。欧州などの市場ではスポーツベッティングの代替として注目を集めています。

ソーシャルプリディクションは、伝統的なギャンブルと異なり、金銭を賭けない形式を採用していることが特徴です。

異様な盛り上がりを見せるスポーツプリディクション


ユーザーはゲーム内のポイントやランキング、特典などを通じて競い合い、リアルマネーリスクを避けることができます。

また、ソーシャルメディアやオンラインコミュニティと密接に連携しており、ユーザー同士の交流が促進されています。これにより、共通の興味を持つユーザーが集まり、コミュニティが活性化しています。

ノーリスクでソーシャル要素のあるエンターテイメント性が、従来のベッティング市場とは異なる層にも受け入れられ人気が高まっています。予想はしたいけどお金は賭けたくない、という方がたくさんいるということですね。

ソーシャルプリディクション市場はまだ比較的新しい市場であり、具体的な規模は推測が難しいものの特に若年層やミレニアル世代を中心に人気が高まっており、今後数年で数億ドル規模に達する可能性があります。

スポーツベッティングやギャンブル市場全体の成長に伴い、ソーシャルプリディクションもそれに合わせて拡大することが期待されています。

ファンタジースポーツはスポーツベッティングのジャンルとしても確立されていますが、ソーシャルプリディクションのジャンルとしても成立しています。

ファンタジースポーツのことを詳しく知りたい方はこちらへどうぞ。

弊社では本調査を通じ、お金を賭けずに遊べる海外で人気のソーシャルプリディクション、ファンタジースポーツ分野でサッカーに絞って人気の5タイトルを調査しました。

調査方法

調査は以下の方法で実施しました:

  • サンプルサイズ:各タイトルの主要ユーザー層

  • 調査期間:2024年1月から6月

  • データ収集方法:公開データから各アプリのDL数、売上額、ユーザー評価、ゲーム内スコア設計の分析

  • スポーツ:ソーシャルプリディクションの中でも特にエンゲージメントが高く人気のサッカーに絞っています

今回の調査対象とした5つのソーシャルプリディクションアプリの概要は以下となります。

  1. Omada

  2. Mon Petit Prono (MPP)

  3. Kickbase

  4. Bemanager

  5. Fantacalcio


分析と洞察

Omada

Omada

シンプルなスポーツベッティングのお金を賭けないバージョンです。

勝敗だけがベットの対象であり、スポーツの知識などは必須ではありません。対象リーグが幅広いため毎日ベッティングすることが可能であり、毎日ベットを作る為にあらゆるスポーツをカバーし、女子チームやユースチームの予測もできるようになっています。

広告を見てフリーコインをゲットしたり、ベットに勝利してダイアモンドを貯めて、アバターを強化したりするモバイルゲームっぽい仕様ですね。

お金を使わずに行えるスポーツ領域のソーシャルプレディクションアプリの代表のようなサービスになっています。

超シンプル


Mon Petit Prono (MPP The social predictor)

MPP

Omadaのフランスのサッカーリーグ、リーグアン特化版です。公式ライセンスを取得しているので選手の顔写真やクラブ公式のロゴが出てきます。

ラカゼットがんばれ


Omadaとの違いとして、単なる勝敗以外にも試合のスコアを予想することが可能です。

プレイするゲーム内リーグはフランスの各クラブごとのため、その部分はファンタジースポーツアプリと似ています。

謎なのがアプリを立ち上げる度に変なおっさん出てくるんですよね。これなんなんだろう。誰なんだこれ。

誰だこれ


Kickbase

Kickbase

対象データがSorareと並ぶほど細かいことが特徴です。

ビジネスモデルはサブスクで、購読すると選手の画像が出てきたりポイントがライブで加算されたりします。

肌感ですが欧州はPay to winあまり好きではないので、勝敗とは関係ない部分でサブスクみたいにする傾向ありますね。

ジャカ、ドイツでは人気者

選手の獲得・放出がマーケットでの入札制となっているため、自由に選手を入れ替えることは出来ません。

売却は比較的容易で、運営公式が落札することが多いです。1シーズンを通してプレイできないユーザーに向けて、短期間での「チャレンジモード」も用意されています。

今回調査したファンタジースポーツの中ではおそらく一番収益が出ています。(インサイトが欲しい方は別途連絡ください)

Bemanager

Bemanager

スコアがスタッツではなく3つのスペイン大手紙の選手採点+スタッツサイトのSofascoreの採点のうちいずれかからリーグ主催者が選んだものに基づくことが特徴です。


他のサービスと大きく違う点は、マーケットでの選手の売買システムが複雑で、重要なゲーム性の一部となっています。「一番盛り上がるのは移籍や選手売買やで」というカルチャーになってます。面白いです。

マーケットに出せる選手数が限られているため、マーケットに出ていない選手を自チームに加えたい時など、同じリーグの監督から自チームの選手を引き抜かれる可能性があります。

フッターの下に広告がある斬新なUI

現実世界と同じく「契約解除条項」が存在し、これが満たされている場合、プレイヤーの同意なく強制的に選手が奪われることもあります。

選手の売却も、売れない限り放出できないので、ここがかなり重要な課金ポイントとなっています。

ビジネスモデルとして課金することで、2週間だけ特定の選手の引き抜きを防いだり、契約解除に必要な額をゲーム内コインを使わず引き上げたり、選手の市場価値の80%の額で即時売却したりすることが可能になります。

一方で広告枠がたくさんあるので、メインの課金大変なんだろうなとも勝手に思っています。

ちなみに、ここでもチュートリアルをやってくれるおっさんが出てきます。MPPのおっさんは立ち上げる度に出てきますが、このおっさんはチュートリアル後一切出てきません。

Come on!と勢い良く言ってきますが、その後控えめ

Fantacalcio


Fantacalcio

セリエA公式が運営しています。

イタリアではインターネットが一般に普及する前の1980年代から、ファンタジーサッカーが人気のため、アナログゲームのアプリ版という立ち位置で、他のファンタジーアプリとゲーム性が大きく異なります。

スコアは新聞の選手採点に基づきます。サイドバックとウイングバックの区別があったり、交代選手の指定ができたりなど細かく設定し、複雑な戦術を考える要素が強くなっています。

プレイヤーがリーグを運営していて、どのリーグでも気軽に参加できるようになっています。

たくさんリーグがある

地域によるスコアリングの違い

スポーツベッティングが勝敗などシンプルな予測になるのに対して、ファンタジースポーツは選手ごとの採点になるので予測がかなり複雑になります。

この選手採点ですが、北欧や中央ヨーロッパはスタッツベースが主流であり、南欧では新聞等の選手採点ベースが一般的です。

スタッツベースというのはOptaやSportraderなどから有意なデータを取得し、スコアリングロジックを決めて選手採点するものです。

スタッツ式は選手の得点により大きく加点される一方、採点式は評価の幅が狭く大きな差が付きにくいという特徴があります。

なので南欧では「俺の選手をもっと評価してくれよ〜」といった採点者に対する評価などもあってコンテンツとしての幅があります。

ざっくり調査表

$$
\begin{array}{|l|l|l|l|l|l|l|l|} \hline
\text{サービス} & \text{モデル} & \text{DL数※Google Play公開情報} & \text{課金方式} & \text{対象リーグ} & \text{主要配信国} & \text{その他配信国} & \text{言語設定} \\ \hline
\text{Omada} & \text{ソーシャルプリディクションアプリ} & \text{100万+} & \text{アイテムの購入によりオッズをブーストでき、予想が当たった際のリターンが増える} & \text{欧州5大リーグ(英・独・仏・伊・西)+アメリカンスポーツ} & \text{フランス・イギリス・アメリカ} & \text{イタリア、ポルトガル、ブラジル} & \text{英語対応あり} \\ \hline
\text{MPP(Mon Petit Prono)} & \text{ソーシャルプリディクションアプリ} & \text{100万+} & \text{課金により広告が非表示に} & \text{フランス1部・2部} & \text{フランス} & \text{} & \text{英語対応あり} \\ \hline
\text{Kickbase} & \text{ファンタジースポーツ} & \text{50万+} & \text{サブスク型
複数プランあり
課金により広告が非表示に
リアルタイムにスコアが表示される
選手の怪我情報や分析が表示される など} & \text{ドイツ1部・ドイツ2部・ドイツ女子・スペイン} & \text{ドイツ} & \text{} & \text{英語対応あり} \\ \hline
\text{Bemanager} & \text{ファンタジースポーツ} & \text{100万+} & \text{課金により以下が可能に
スタメン選手の変更人数増加
3-3-4など奇抜なフォーメーション
選手の引き抜きからのプロテクト
売買のスピードアップ など} & \text{スペイン1部・2部、スペイン女子、イングランド1部、イタリア1部、フランス1部、チャンピオンズリーグ、チャンピオンズリーグ女子} & \text{スペイン} & \text{} & \text{スペイン語のみ
英語対応なし} \\ \hline
\text{Fantacalcio} & \text{ファンタジースポーツ} & \text{50万+} & \text{サブスク型
課金により広告が非表示に
ユニフォームのカスタマイズ、実物のユニフォームの購入も可能に} & \text{イタリア1部
欧州全体版もあり DL数は1/5程度} & \text{イタリア} & \text{} & \text{イタリア語のみ
英語対応なし} \\ \hline
\end{array}
$$

人気拡大の裏側

スポーツメディアと連携したアプリの多さ

ESPN、Yahoo、DAZN、CBSスポーツなどのスポーツメディアとセットで運営されているファンタジースポーツアプリが多く、相互送客を目指していると考えられます。

プレイ画面

シンプルなスコア予測

フランスでは試合の勝敗やスコアを予測するシンプルなアプリが人気です。例として、Omadaはイギリスやアメリカでもマーケティングを強化しています。

アメリカンスポーツの導入

ダウンロード数が多いプリディクション系ファンタジースポーツアプリはアメリカンスポーツに関連するものが主流で、グローバルをターゲットにした英語でプレイできるサッカー専用アプリは数が少なくなっています。

インドのファンタジークリケットアプリの成功

実際にお金をかけられるインドのファンタジークリケットアプリは5000万ダウンロードを超え、他にも500万ダウンロードを超えるプリディクションアプリが存在します。

まとめ、今後の展望

ソーシャルプリディクション市場は、スポーツベッティング市場の拡大に伴い、代替エンタメとして急速に成長しています。

規制強化とノーリスクエンターテイメントの需要増加

欧州を中心にスポーツベッティングに対する規制が強化されている背景から、金銭リスクを伴わないソーシャルプリディクションの需要が高まっています。

特に、未成年者やリスクを避けたいユーザー層には、金銭を賭けない形式のエンターテイメントが受け入れられやすくなっています。

コミュニティ形成とユーザーエンゲージメントの向上

ソーシャルプリディクションはハウスvsプレイヤーという構図ではなくユーザー同士の交流を促進する機能を持ち、コミュニティ形成に貢献しています。

ソーシャル機能がついているサービスが多く、リアルタイムでの予測やチャット機能、ランキングシステムなどがユーザー同士の関連深める仕様になっています。

プレミアリーグやセリアAなどリーグ公式として採用する流れもあり、予想を通じてリーグ自体のエンゲージメントを高める狙いから導入するプロリーグも増えると予想します。

欧州ではおっさんをイメージキャラとして採用しがちなのが興味深いところです。

ファンタジースポーツとの融合

ファンタジースポーツが既に確立された市場として存在しており、ソーシャルプリディクション市場とも密接に関連しています。

KickbaseやBemanagerなどのファンタジースポーツは、ソーシャルプリディクションの要素を取り入れてます。

遊んでみるとかなり楽しいのと、やり甲斐があります。自分の予想に自信があればあるほどのめり込みやすいのですが、逆に凝った作りのものよりOmadaのような「対象はなんでも良いので当たり外れを楽しむ」ものも存在します。

地域戦略

地域によって人気のあるアプリやスタッツの評価方法が異なります。

ターゲット市場に応じたローカライズされたサービス展開が今後の鍵となります。

例えば、南欧では新聞の選手採点ベース、北欧やアメリカではスタッツベースの評価が主流であることを考慮し、各地域に最適化されたソリューションが必要となります。

アジアではどんな採点方法が適切なのか気になるところです。

新興市場

インドのファンタジークリケットアプリの成功例に見られるように、日本を含む欧州・北米以外の新興市場での展開が市場成長のドライバーになりそうです。

将棋や相撲などの国技もファンが多く予測が楽しいということでプリディクションと相性が良いかと思います。

おわりに

弊社では現在海外のデータプロバイダーとサッカー分野のソーシャルプリディクションサービスを開発しています。

もしこういった分野に興味があればXから気軽に連絡ください!

https://twitter.com/Shinnosukee07


いいなと思ったら応援しよう!