じさつとたましい30

話し終えると、手の中で丸めたティッシュがカチカチになっていた。

先生はゴミ箱を私の足元にやった。

「すえっちゃん。前に、答えは自分の中にあると父が言っていた話をしたの覚えてる?」

「はい、覚えています。自分の中で宝探しができるんだって、先生言っていました。」

「そうそう、その時はわたしたち、少し現実の時間から抜け出して、同じ世界に浸って話せていたと思うの。だから、すえっちゃんは、自分の中に何かしらを見出したことがあるんじゃないかなあって思ったの。こういうのはね、その人の時機に合わせて、体験してわかるようなもんだから」

先生の声がいつもと違って聞こえた。カバの目と同じ世界観で、引き込まれる声をしていた。

「すえっちゃん、今自分の中に見た何かが、わけわからなくなっちゃったのかな。そんな感じがする」

「…。呉越先生なんで、わかるんですか…」

「その点については、ちょっと先輩だからかも、と言っておこうかな、今日は来てくれてありがとうね。久々に同郷の人と話せてよかった」

先生はそうやって今度は鞄からお菓子を取り出した。

先輩ってどういうことだろう。と思いつつ、もう今日は話すことや、呉越先生の反応に気を配ることに疲れたので、話を掘る体力はなかった。

ぽりぽりお菓子を食べながら、地元にできたショッピングモールの話や、潰れたボウリング場の話をした。

「そういえば呉越先生っていくつなんですか」

地元の話をしていると、なんとなくわかるようでわからない話も出てきた。

先生が、あはーっと笑うと、にこにこしながら答えた。

「私はねえ、まだまだ思春期みたいなもんよ」




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