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小さい星をきみに…◇『みどりのゆび』

 有名な作品ですが、子どものころにタイミングを逃して、今回はじめて読みました。
 モーリス・ドリュオン『みどりのゆび』。

 主人公のチトは、とても純粋で優しい少年。ある日、自分が不思議な〈みどりのゆび〉を持っていることに気づきます。そのゆびで触れると、植物の種がたちどころに芽吹いて花を咲かせるというもの。チトは、花のちからで人びとの悲しみを癒やし、戦争をなくそうと考えますが――。

 サン=テグジュペリの『星の王子さま』と同様、大人にこそ読んでほしい詩的なメルヘンです。ただ、チトの父親は兵器工場の経営者。その設定からもわかるように、一筋縄ではいかない、深みのある物語になっています。
 もちろん子どもでも読めるけれど、成長してからのほうが感動が大きいかもしれません。

 私は馬が大好きなので、チトの親友が子馬のジムナスティクだというのも気に入りました。ジムナスティクとチトとの会話は、どれも示唆的で印象に残ります。

 なかでも私は物語の終盤で、チトがジムナスティクをなぐさめようとして言った、この純真無垢なひと言が、とてもとても好きでした。

「ぼく、小さい星をきみにとってきてあげる。」

モーリス・ドリュオン『みどりのゆび』


 イメージが自然と『星の王子さま』のラストにつながって、胸がふるえ、涙が出そうになるのです。


◇見出しの写真は、みんなのフォトギャラリーから
devaagni2000さんの作品を使わせていただきました。
ありがとうございます。

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真帆しおん*Shion MAHO
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