続マッチングアプリバトルロワイアル
覚えているだろうか。女性陣から嘲笑と嫌悪を買った以下記事を。
ものの見事女優の女に振られ、相模原の片隅で怒りの雄叫びを上げた筆者である。
元より屈辱と敗北にまみれた人生なので、無様な討ち死には日常茶飯事だが、だからといって全く傷つかないというわけではない。
だが、話はここで終わらなかった。1年半の時を経て、その女優の女から連絡がきたのだ。
再会
高円寺駅に来いとの指定があったので再会場所は高円寺。
挨拶もそこそこに、彼女が腹が減ったというので彼女行きつけの店に行く事になった。
女友達以外の女と会話するのも久しぶりなので、緊張のあまり千と千尋の神隠しのカオナシみたく、「あ、あ、ああ、」みたいな言語しか発せないと思ったが、一度会ったことがあって人となりは理解していたので、意外に緊張感は0で話は存外弾んだ。
こっちは彼女に会う前に同僚との飲み会でガッツリ飯を食っていたので、ちびちびつまみをつまみ、彼女は豪快に辛そうな麻婆丼をかっこんでいた。
会話のネタにもなるし彼女のいいところを見せたいというよこしまな気持ちから、行政書士試験に合格したことを伝えた。
「ええ凄いじゃないですか!それ難しいやつですよね?合格率何%なんですか?」
「平均10%。厳しい年は10%を切る」
筆者の受験した年は過去10年で2番目に高い13.98%という合格率だったが、わざわざ真実を伝える理由もない。
「凄いなあ・・・。あ、そういえば前やってたレンスペはどうなったんですか?」
「いやーレンスペもうやめたのよ。儲からなくなっちゃったから」
こっちがある程度自己開示したら相手にも同程度の開示を迫るのが会話の常道だろう。なので彼女の近況も聞いてみた。
以下、彼女の近況箇条書き。
・ 女優の夢は諦めた
・ 今はCDショップでアルバイトしている
・ 以前メンエスで働いていたことがある
・ そのメンエスで不利な業務委託契約を結んだせいで、辞める時に多額の解約金を請求された
・ 弁護士沙汰にもなったが結局その解約金を払わざるを得なくなり、おかげで今は切り詰めた生活を強いられている
そして彼女は言う。
「最近色々大変で・・・寂しいんです」
これはいけるだろ。行政書士合格が功を奏したのか知らんが、なんか口説けば落ちそうな雰囲気じゃね?よっしゃアクセルをベタ踏みでGo!
そんな筆者の下心を見透かしたかのように彼女は続ける。
「実は私この近くの店で働いていましてね」
連行
彼女に連れて行かれたガールズバーは路面店だったので、とりあえずぼったくりの心配はなさそうなので足を踏み入れる。
思えば変だった。
何度もLINEでやり取りしたことがあるとはいえ、会ったことがあるのはたった1回だったわけで、そんな女から1年半ぶりに連絡きたのなら、そこに何らかの作意があっても不思議じゃない。
そもそも場所も時間も彼女の指定だったので、その時点で怪しすぎる。
いや、そんな作意があることはわかっていた。
だが、筆者はあろうことか、「でももしかしたら、本当に俺に会いたくて連絡をよこしたんじゃないか?」と楽観的に結論を出してしまった。浅はかである。愚かである。いい面の皮である。
結局彼女はただのガールズバーの女で、筆者に連絡を取ったのは金をむしり取るためにすぎない。
束の間逡巡したが、ガールズバーは行ったことがなかったし、見聞を広げるという格好をつけた大義名分も手伝って、「1時間だけなら・・・」とガールズバーに付き合うことにしたわけである。
店内は狭かった。
客がすでに2組おり、そのうち1人は誰がどっからどう見ても悪人面をしていたので即来たことを後悔したが、ここで逃げたら男を下げるので帰るに帰れない。
人は見かけによらないというが、見かけによるわ。人2~3人くらい殺してないとあんな顔にならんだろ。
男性店員の視線が一気に筆者に集中する。
狼の群れ放り込まれた羊よろしく、筆者は恐怖で身体中がぶるぶる震え始める。紡いだ言葉は言葉にならない。
「あうあう、えとえと、あ、あのどどどどういうシステムですか!?」
逃げずともすでに十分男を下げているが、もう流れに身を任せるしかない。
そんな筆者の見苦しい様とは対照的に、男性店員は優しくそれでいて慎ましく丁寧にシステムを解説する。
肝心の彼女も素敵な笑顔を振り撒く。一瞬惚れそうになるが、筆者は知っている。
彼女のその笑顔は母性でも慈愛でも愛情のどれでもなく、狼の群れに迷い込んだ哀れな羊がおたおたと動転してる様を嗤う顔だということを。
彼女はさっきまでしおらしい顔を見せていたのに、今は獰猛な捕食者にしか見えない。
徐々に筆者の心はどす黒く荒んでいく。
なぜいつも俺はこんな目にあうんだと。
場を繋ぐためにも、「好きなお酒飲みな」と伝える。
彼女は喜ぶ。「ほんとに!?ありがとう〜!」
彼女が馬脚を現した時点で、全ての表情と台詞が嘘っぽく聞こえる。次第に憤りが募り始める。
適当な話をして場を繋いでいると、彼女から「将来どうなりたいとかあるの?」と聞かれた。
特に考えずに、「とりあえずタワマン住みたいね。死に物狂いで行政書士資格取ったのに住んでる部屋が家賃3万6000円のアパートじゃ格好がつかない」と少々格好をつけて回答した。
すると彼女は、「賃貸?それとも買うの?買うとしたらいくらくらいのラインを考えてるの?」と具体的な質問を投げかけてくる。
正直何の考えも無しに喋ったので回答に詰まる。
「いや、あの…」
彼女はさらに続ける。
「そもそもどのエリアのタワマン?何階に住むの?いつ住むの?てか何でタワマン住みたいの?」
男がラッパを吹いた時、それを看破するには具体的な質問をぶつけることである。
何も考えてないと、筆者のようにすぐ化けの皮が剥がれる。
筆者は具体的な質問に何も回答できず、おたおたと醜態を晒す。
そんな筆者の醜態を見た彼女は、嗜虐心が満たされたのか凄惨な笑みを浮かべている。
夜職の女からすれば、男の大言壮語など耳にタコができるほど聞いてるだろうから、目の前の男が口だけの男かそうじゃないのかを見破るなど実に容易いことなのだろう。
その後も筆者は、精神的優位に立つために何度も会話の主導権を握ろうと試みるが、数々の獣を食らってきた百戦錬磨の狼を前にすれば、哀れ草をぼりぼり貪って生きている羊に勝機はない。当然静かな舌戦は全て彼女の勝利に終わる。
1時間がすぎる。それは10カウントの鐘が鳴ったかのようである。
筆者はボロボロの身体をなんとか奮い起こし、会計を済ませ(計7500円)店を出る。
彼女は営業スマイルを見せ、「また連絡するねー」と営業トークも忘れない。
男性店員も一緒に笑顔で見送ってくれるが、その瞳は資本主義に毒された邪悪な光を放っている。
オスとしての尊厳を剥奪され、「あ、あ、ああ」しか発せない哀れなカオナシに成り下がった筆者は、屈辱の中帰路につく。
憤懣
筆者が良い男だったら決してこんな目にあうことはないだろう。
彼女からしたら筆者など客にして金銭に変えるくらいの価値しかないわけである。その程度の男なのである。
その事実に気がついた時、死ぬほど悔しくなった。結局怒りを向けるべきは彼女ではなく己の不甲斐なさなのだ。
こんな哀れな筆者を見たら、底意地の悪いしんまウォッチャーはこう言うのでしょうね。
「女に金を使うなんて三流も三流よ。俺っちみたいな一流の男は、女に金を出させるね。家賃、光熱費、食費、服飾費、交際費、漏れなく遺漏なくしっかりきっちり全ての支出を負担させる。俺っちにはそれだけの魅力があり、お前にはそれがない。お笑い種なのが、俺っちに貢ぐ女の金の出どころは、お前みたいな非モテの男からむしり取った金なんだよなあ。これが性愛の食物連鎖ってやつなのかもな。ごめん、草」と。
危うく買ったばかりのMacBook Proをハンマーで叩き割りそうになるが、言っていることは間違ってないので何ら抗弁できない。
今回の無様な敗戦で筆者は言い知れない寂しさを覚えた。
ふと、X(旧Twitter)の通知を見ると、「あいか」というアカウントにフォローされていた。
プロフにはこう書いてる。
「現役女子大生❤︎自称変態です。バックが好き❤︎」
投稿欄には劣情を催す刺激的な写真が並ぶ。
筆者のことをわざわざフォローしたのだから筆者のことが気になってるに違いない。寂しさが正常な判断を狂わす。
そして筆者はあいかのDM欄を開くのだった。
「あいかならこの寂しさを埋めてくれるかも…!」
筆者の身体から流れ落ちたこの液体は、果たして涙なのかそれとも汗なのかはたまた我慢汁なのかはわからないが、もうどうにでもなれ。
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