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CERN見学〜神の粒子、ヒッグス粒子って?

CERN(欧州原子核研究機構)は、スイスのジュネーヴ郊外、フランスとの国境地帯にある世界最大の素粒子物理学の研究所です。

こう書くと、とても敷居が高く感じられる施設ですが、展示室は無料で一般公開されています。私が訪問した日も、中学生や高校生の引率されたグループが来ていました。子供の頃からこのような物理の世界にきちんと触れ合う機会があるのは羨ましいですね。

正直、宇宙には興味はあるけど物理は苦手、数式、化学式、えー、よくわからない。でもアインシュタインとか素粒子とか超ヒモ理論、ビッグバン…言葉だけでも心惹かれる…

そんなレベルの文系な私が、今年の5月にCERNを訪問。今回は2度目です。最初に行った時(2017年)は、展示されたものが全く理解できませんでした。だから今回は、少し知識を入れてからのリベンジ見学です。

CERN サイエンス ゲートウェイ

サイエンスゲートウェイの入り口を入ると、オンライン登録の案内(Wi-Fi無料)があります。ここでQRコードから自分の希望コースを登録してから受付へ。

メニューは、こちらをどうぞ。
Visit CERN

さて、CERNと言えば、2012年のヒッグス粒子の発見が有名です現在発見されている17個ある素粒子の中で、質量を与える素粒子で、「神の粒子」とも呼ばれます。その質量のおかげで私たち人間も形を保つことができます。

素粒子の標準模型/Wikkipediaより

2012年7月4日にヒッグス粒子が発見されたその翌年には、その存在を予言したピーター・ヒッグス博士とフランソワ・アングレール博士がノーベル物理学賞を受賞。「標準模型」の最後の粒子が確認できたことは大きな喜びでした。

なんせ、その粒子を見つけるまでの道のりはとても大がかり😳

とても小さな世界を見つける為に、とても大きなものが必要です。それは、LHC(大型ハドロン衝突型加速器)。展示室ではその様子が再現されています。

山手線と同じくらいの距離の大型加速器

全周 27kmの円形の加速器LHCは、スイスとフランスの国境を横断するように地下100メートルにあります。地上で表せばマンションの30階くらいの距離、深っ!

LHCの加速器

【展示の説明文より】
「このモデルは、1,232 個の超伝導双極磁石を使用して粒子ビームを27 kmのリングの周囲に向けます。 これらの巨大な磁石はそれぞれ長さ15メートル、重さ35トンで、非常に強力な磁場を生成するため、マイナス271°C の温度に保つ必要があります」

超伝導双極磁石(ダイポール)
相互接続

【展示の説明より】
「磁石同士を接続するには多くの工夫が必要です。たとえば、ケーブルとパイプ間の相互接続は、磁石の熱収縮に耐えられるように設計する必要がありました。 磁石がマイナス271°Cまで冷却されると、それぞれ4.5cm収縮します。これにより、加速器の周囲 27kmのうち、ほぼ70メートルが失われることになります。 これに適応するために、磁石の冷たい部分 (銀色のケーシングの内側にある) がそのサポート上でスライドすることができます。パイプには伸縮する蛇腹が取り付けられ、ケーブルには竪琴と呼ばれる肘状の部品が取り付けられています。 粒子が循環するビームパイプには、磁石が移動するときにスライドするフィンガーがあり、電気的接触を維持するのに役立ちます」

専門的なので展示説明をそのままGoogle翻訳します😅 なんか、すごいなーということが伝われば。

この加速器の中に2本の真空パイプがあって、左右からくる二つの陽子を光の速度とほぼ同じくらいの速さで衝突させます。約10億回の衝突で一個のヒッグス粒子が生成されます。1秒あたり4000万回衝突をさせることができるそうです。因みに光の速度は、1秒で地球7周半周…、だから27キロの距離の加速器が必要だったのですね。

加速器の仕組みについて、Youtubeに「東京大学理学部オープンキャンパス2022講演「素粒子から迫る宇宙の謎」寺師弘二准教授/の画像がわかりやすかったので、最後にサイトを載せておきます。

加速器の原理

そして、衝突させた陽子から出た素粒子を検出する機械(検出器)はもっと大がかりなものです。下の画像の黄色い矢印に人がいます。

検出器
超電動ケーブル/検出器の展示動画より

【展示動画の説明より】
「これら2つの導体は両方とも 12,000アンペアという驚異的な電力を伝送します。 しかし、それらは同じように機能するわけではありません。ひとつ目は電流を大型ハドロン衝突型加速器に伝えるラグ (コネクタの一種) です。 従来の電気ケーブルと同様に、銅で作られています。 銅は優れた導体ですが、電流の通過に対して多少の抵抗を示します。 これは、電気エネルギーの一部が熱の形で失われることを意味します。 電流が大きくなるほど、十分な熱を逃がすためにケーブルの直径を大きくする必要があります。 ケーブルが熱くなりすぎると溶けてしまいます。プレキシガラスの後ろに展示されているサンプルは、LHCの磁石に使用されている超電導ケーブルと同じです。 このタイプのケーブルは、あらゆる温度において電流の通過に抵抗を示さないため、電気エネルギーが熱として逃げることはありません。 非常に細い超電導ケーブルでも非常に大きな電流を流すことができます」

実際の超電導ケーブルの展示

使用された超電導ケーブルの総量は1200トンで、長さで現すと約7,600キロメートルになります。すごい量ですね!

加速器と検出器に使用した技術は、他の分野でも活用されています。加速器技術はがん治療、ハドロン療法、電子放射線療法に使用され、検出器技術は3Dカラー、X線スキャナーなどの医療診断に使用。また医療だけに限らず、航空宇宙分野にも影響しているそうです。

ひとつの粒子を追い求める研究で、その技術が人類を助けているのですね!

文部科学省のHPに、LHC建設に携わった日本企業の一覧がありました。企業だけでなく、日本の大学も研究に参加しています。

これまでの大型国際共同プロジェクト
における体制及びマネジメント事例 について
(CERN/LHC/ATLASの組織とILC) 徳宿 克夫(KEK)より


さて、展示室に「陽子がぶつかり合うイメージ」を体感できるコーナーがありました。

足型に足を置いて力を入れて前に蹴り出すと光が飛び出ます。双方でタイミングを合わせて行うと、真ん中で光がぶつかり粒子が生まれるようなイメージを体感できます。見学の子供たちも楽しそうに遊んでいました。説明だけでは難しいし、忘れることも多いと思うので、こうやって楽しく体感するのは面白いですね。

さて、ここからはツアーのお話です。

朝早めに行って、最初の10時半のツアーに申し込みました。ガイド付きツアー(90分)は先着順で、事前オンラインでの申込は不可です。当日に入り口近くに表示されているQRコードを読み取って申し込みをします(無料Wi-Fiあり)。予約が終わるとメールが届き、それを受付で見せて許可証をもらいます。

ツアーは敷地内を移動

このツアーでは、1957年に設置された CERNの最初の加速器であるシンクロサイクロトロンの見学ができます。

シンクロサイクロトロン
1950年代後半のCERNの様子、コンピュータの無い時代
歴史が追えるように写真展示


そして、ヒッグス粒子を発見したATLASのコントロールルームの見学もできます。建物入り口には、3D動画でヒッグス粒子が検出される様子が説明されていました。

3D動画

【説明文】「内部検出器は、LHC 衝突で生成された粒子を検出する ATLAS の最初の部分です。 これは3つの異なるシステムで構成されており、それぞれが衝突で生成される荷電粒子の方向、運動量、電荷を測定します」

陽子が衝突した瞬間
カウンター

ロビーには、陽子の衝突数とそれで生成されたヒッグス粒子の数のカウンターがあります。

ガラス張りの外からATLASのコントロールルームを見ることかができます。左の方、アヒルちゃん(ラバー・ダック)が置かれてかわいい!このアヒルちゃん、2009年の記念すべき瞬間の時にもいました。

                       赤い丸のここ↓

KEK(高エネルギー加速器研究機構)のKEK office at CERNのYouTubeより

アヒルちゃん、これからも新しい発見への日々を見守っているのでしょうか。

ツアーが終わって、解散してからモニュメントへ。

この形、ユニークで芸術的!物理好きな人だったら全部の意味がわかりそう🙄

アインシュタインの数式 E=mc2(エネルギーは質量と光速度の2乗の積に等しい)
プランクの量子 E=hv(プランク定数と振動数)

ブラウン運動
ホイヘンスの原理

まったく理解できないけど、とてもアートだなー。

ヒックス粒子の発見、2012

ヒッグス博士は今年の4月に94歳で永眠されました。ヒッグス粒子の存在を予見したのが1964年。発見まで48年の年月がありました。

きっと物理が理解できると、世界の見え方も違って物事が深く見えるのではないかと思います。宇宙や地球の成り立ち、私の頭ではよく理解できないですが、それでも何度も咀嚼しながら物理の世界を味わいたいなー、とCERN訪問で思いました。

😌

私は、年初めに新しい手帳の最初のページに、その時に心に留まった名言を書いています。今年選んでいた名言が偶然にもアインシュタイン

In the middle of difficulty lies opportunity.
(困難の中に機会がある)
Albert Einstein(アルバート・アインシュタイン)

難しいと思ってそこで止めるのではなく、それを絶好の機会だと捉えて進めていく。
私もへこたれずにやっていこう、と年始に思ったのです…が😅できてるか?

5月の赤いポピー畑

CERNは今年の9月に70周年を迎えました。その場所は、のんびりとした美しい風景が広がっています。

【お断り🙇‍♀️】専門性がない私がヒッグス粒子のことを書いていますので、間違いがありましたら、どうぞご容赦ください。

以下はおすすめ参考動画三つです。

↓東京大学、寺師教授のご講演は堅苦しくなく興味深いです。50分があっという間。

東京大学理学部オープンキャンパス2022講演「素粒子から迫る宇宙の謎」寺師弘二准教授


↓CERNの公式動画を日本語字幕で紹介してくれているKEKの公式チャンネル

【第一話】神の粒子の作り方|CERN公式(日本語字幕)



↓とても楽しそうに物理の世界を教えてくれます。物理に浪漫を感じさせてくれるお話は、聞いてて心地よいです。私はこのチャンネルのおかげで物理が好きになりました。

のもと物理愛

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