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デジタル化

こんにちは。(有)神輝興産、代表の中憲太郎です。

橋梁点検業界は、初夏から年明け2月くらいまでが繁忙期となり、弊社も同様に現在繁忙期をむかえています。わたしが現場に出ることも増え、同業他社と接触する機会もいくつかありました。そこで気づいたことは、多くの他社はすでにiPadなどのデジタル機器を導入しているということです。橋梁点検業界もこの数年で一気にデジタル化が進んだと感じます。

わたしたち神輝興産でもiPadの導入は何度か挑戦しましたが、そのたびに「まだ紙とペンの方が効率がいい」となり、活用にいたっていない状況です。弊社はデジタル化に遅れをとっているということです。では今後どのように企業活動を進めていくのか。

今月は、弊社の抱える課題と、今後の取り組みについて述べたいと思います。

イノベーションのジレンマ

『イノベーションのジレンマ』という言葉があります。これは主に大企業に対して使われることの多い言葉ですが、弊社のような中小企業においても、このイノベーションのジレンマに陥ることがあるのだと実感しました。

イノベーションのジレンマとは簡単に言うと、大企業などが自社技術の改善にこだわるあまり、新しく出てきた技術への対応が遅れるというものです。たとえばカメラ業界では、フイルム技術に自信を持っているからこそ、デジタルカメラ参入に遅れた事例。自動車業界では、どこにも負けないエンジン技術を持っているから、電気自動車の開発に遅れた事例などがあります。

弊社では長らく、紙とペンを用いた野帳(点検結果を記録するもの)を使用してきました。スタッフたちが日々効率的に作業を行えるように工夫や改善を重ねてきました。おそらく、紙とペンを用いた方法では、他社よりも優れたものであると自負しています。

しかしながら、自社方法を確立したからこそ、iPadなどのデジタル技術導入への障壁は高くなってしまいました。工夫をこらし、改善を繰り返してきた歴史があり、慣れ親しんだやり方だからこそ、新しい技術に乗り換えることに抵抗を感じる。これはある意味でしょうがないことだと思います。大事なのは気づいたときに変えられるかどうかです。

慣れ親しんだものを手放すことは、自分の意思だけでは難しい側面もあるかと思います。特に現場のスタッフであればなおのことです。ですのでトップ判断で変えていくしかないものだと思います。そういう意味では、今回のデジタル化の遅れは、わたしの判断の遅れが原因であり、反省点でもあります。

神輝興産の内情

無理にデジタル化しなくてもいいのではないか。そういう意見もあるかもしれません。しかし、神輝興産の現状には、デジタル化に進むべき理由があります。

神輝興産では、現場班と内業班に分かれた分業体制をとっています。
現場班は現場で橋の状態を確認し、写真を撮り、野帳に記録します。内業班は、現場班が集めてきたデータ(写真や野帳記録)をもとに、市区町村へ提出するための報告書を作成します。

現状の神輝興産では、内業班の手が不足気味です。内業班の処理が、現場班の点検スピードに追いつかないこともあり、内業の効率化が課題となっています。

内業班の作業を効率化させるために、これまでも様々な取り組みをしてきました。

内業班では、2021年から外部のコーチに入ってもらい、業務の目的を意識して作業することの大切さを教えていただいています。内業スタッフにとっては苦しい場面もあったかと思いますが、本当に頑張ってくれています。
また、弊社も支援しているiMecという、橋梁点検技術者を育成する研修に現場スタッフだけでなく内業スタッフにも参加してもらっています。基礎編は全員参加。また本年度は応用編にも内業スタッフが2名参加し、日々のスキルアップに励んでいます。

また、現場班にも最大限協力してもらっています。現場から帰社したあとも、写真の整理や、野帳の清書など、内業班の負荷を軽減するための取り組みをお願いしています。現場から疲れて帰ってきても協力してくれています。

内業の効率を高めるための手段は3つあると考えています。内業のスキルアップ、現場からの協力、システムのアップデートです。内業のスキルアップと、現場からの協力は、すでに最大限取り組んでもらっています。それでも現場と内業のアンバランスが解消されていない現状を考えると、システムのアップデートが必要となります。


現場でデジタル機器を取り入れ、写真や野帳の情報だけでは伝わることのなかった現場の情報を内業班にも伝える。現場と内業のデータのやり取りのタイムラグをなくす。デジタル技術を取り入れることで、システムをアップデートし、内業班の工数削減に取り組んでいきます。

変えるものと変えないもの

「使いにくいから現場作業に遅れが出るのではないか」
そうした懸念もあるかと思います。たしかに一時的に現場班に負荷をかけてしまうことになるかもしれません。しかしながら、紙とペンを用いたやり方が今後20年続くかと言うと、おそらくそれはないと思います。そうであるならば、いまが変える時期とも言えます。

一定期間でいいのでまずは使ってみる。使いにくさの原因は慣れの問題か、システムの問題かを切り分けて課題を洗い出してみる。システムの問題であれば改善方法を調査して、試してみる。これまで紙とペンでやっていたように、日々工夫し、改善していければ、デジタル化への対応もできるものだと信じています。

もちろん、デジタル化がすべていいとも限りません。デジタルのいいところ、アナログのいいところを組み合わせる。そのためにもデジタル技術を知る必要があるのです。どうしたらもっと良くなるのか。どうしたら自分たちの仕事の喜びがもっと大きくできるのか。そのような観点で考え、試し、アイデアを出し合っていければと思います。

おわりに

9月2日、iMec講習会に参加してきました。今回の参加者の中には人口の少ない市区町村役場の女性職員の方もいました。話を聞いてみると、「うちの地域では予算がなく、橋梁の点検を外部に委託できない。なので自分一人で橋を点検しなければいけない。わらにもすがる思いで来た」とのことでした。

こうした場面でも、日本のインフラ危機を感じます。人口の少ない限界地域では、インフラを管理する予算がとれず、点検もままならない場所もあるということです。わたしたちがiMecに参加するのには、「地元は地元で守る」のスローガンのもと、点検技術員を増やし、橋梁点検を地元の企業に頼むことで、点検費用を削減する狙いもあります。

しかしながら、この活動だけでは、まだまだ支援が足りていないと感じました。日本のインフラを守るために私たちにできることは他にないか。目の前の課題としてデジタル化を進めつつ、より長期的な視点から、インフラ老朽化問題について解決策を模索していこうと思います。


有限会社神輝興産:https://www.shinki-ktr.co.jp/

代表 中憲太郎:https://twitter.com/ktr_kenaka

取材・言語化・見える化:大谷信(https://twitter.com/OtaniMkt


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