強い組織になるために
こんにちは。(有)神輝興産、代表の中憲太郎です。
先日開催した社内勉強会で、「具体と抽象」の話をしました。これは細谷功さんの著書『具体↔抽象トレーニング』の内容を簡単にまとめたものです。なぜこのような話をしたのか。今回はその背景にある想いを伝えたいと思います。
当社はタックマンモデルの「混乱期」の入り口にいる
前々回の4月のコラムでは、当社のMVVを刷新したことを書きました。実は新しいMVVをスタッフに発表したとき、スタッフのひとりから「私は渡り鳥経営にするべきだと思う」という意見が出ました。渡り鳥経営とは斎藤ひとりさんの唱える経営概念で、渡り鳥が長距離を飛ぶときに一番空気抵抗を受ける先頭を順次交替しながら飛んでいく様子を経営になぞらえ、メンバーのそれぞれが優れた部分を活かしながら、互いにサポートし合っていく経営のことです。
彼女にとっては、当社の新しいMVVはしっくりこず、渡り鳥経営の方がしっくりくると思ったのでしょう。このような意見は大歓迎です。会社のことを考え、自分の意見をもち、それを伝えてくれることは本当にありがたいことです。これからもどんどん意見を伝えてほしいと思います。
そのスタッフとは、わたしのMVVに対する想い、渡り鳥経営との共通点、想いは同じであることを伝えたのですが、その日はお互いに納得する形に至れませんでした。
もしかしたら、周囲で見ていた人には、わたしたちが衝突しているように思われたかもしれません。心配になったスタッフもいるかもしれませんが、このような衝突、ぶつかり合いは今後も起きてくると思います。それは、当社がタックマンモデルでいう「混乱期(ストーミング期)」に突入しつつあるからだと考えています。
タックマンモデルとは、組織の成長過程を記したものです。ここでは詳細は割愛しますが、簡潔に述べると組織は成長過程で、形成期、混乱期、統一期、機能期を必ず経るというものです。当社はいま、混乱期の入り口にいます。これは意図したことでもあります。
https://blog.office-root.com/facilitation/tackman-model/
当社はこれまで、長い長い形成期だったように思います。協調性を大切にするスタッフも多く、波風を立てない風潮がありました。もちろんそれは良い面でもありますが、本音で意見を交わし合う時期を経ないと組織は強くなれません。混乱期を乗り越えないと「次に行けない」というのがわたしの考えです。
そのため、昨年から外部講師に常駐してもらい、内勤スタッフの教育をしてもらいました。また、わたしもLINEWORKSを使って、毎日の社内発信をしてきました。これらは混乱期に入るために意図してやってきたことです。
組織が強くなるには、スタッフ一人ひとりが考え、意見をもち、その意見を伝え合う。そして意見をすり合わせ、目的に向かって協力できる関係を築く。この過程が不可欠です。混乱期とは、その関係を築くための大切な時期です。
神輝興産が強い組織になるためにも、この混乱期をともに乗り越えていきたいと思っています。
乗り越えるための3つの要素
混乱期を乗り越える上で、話し合いは必須です。それも本音で、腹を割って話し合うことが必要です。コミュニケーションの量も大切ですが、質が問われることになります。お互いに自分の意見を主張するだけでなく、それぞれの意見の違いがどこにあるのか、なにが違い、どの部分は一致しているのかを冷静に確認する必要があります。そして、お互いが納得する道を話し合いによって模索する。このような建設的なコミュニケーションが求められます。
これを実現するためのポイントは3つあると思っています。
① 意見の相違を見える化する
② 心理的安全性の形成
③ 心理的ケア
それぞれについての、方針を説明します。
①意見の相違を見える化する
意見の相違を見える化するための一つの手段として、具体と抽象の考え方が有効となります。お互いの意見の相違を、具体と抽象という観点から見える化することで、冷静に確認し合うことができるようになります。
たとえば、冒頭の当社の新しいMVVと渡り鳥経営の話を具体と抽象という観点で見える化すると、以下のようになります。
当社MVVと渡り鳥経営は、決して対立の構造ではなく、むしろ同じ方向に向かっているものです。MVVを実現するため、より具体的にいえば、当社のVALUEのひとつである「For The Team」を実現する手段のひとつとして、渡り鳥経営があるのだともいえます。
このように意見の相違を見える化すれば、なにについて話し合えばいいか、どこにお互いの納得する道があるのか、わかりやすくなります。
②心理的安全性の形成
また、話し合いには心理的安全性の形成は欠かせません。心理的安全性とは、組織のなかで自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態を指す概念ですが、これがベースになければ、話し合いが深まることはありません。
ここにはわたし自身の反省もあります。日頃からスタッフたちには本音で話すことの重要性を伝えていながら、わたしが本音で語れていなかったと感じています。和を乱したくないという遠慮や、厳しいことを言ったらスタッフが離れていってしまうのではないかといった、わたし自身の「恐れ」がありました。代表であるわたしが本音を語れていないのに、スタッフが本音を語れるわけがありません。本音を語っても大丈夫だと思えなければ、心理的安全性は形成できません。まずはわたしから、本音を語ることで、組織に心理的安全性を築いていきます。
③心理的ケア
混乱期を乗り越えるには、衝突で生じるストレスや心の傷つきに対する心理的なケアも必須になります。ここは外せません。学生時代の部活などでこの混乱期を経験したスタッフもいるかもしれませんが、全員が経験したわけではありません。衝突に向き合うのが苦手なスタッフもいると思います。戸惑う人、ストレスを感じる人もいるのは当然のことです。そのため心のケアは必須です。ケアのために、カウンセリングとコーチングを専門にした外部人材を社内に招き、常駐していただく予定です。まずは内勤のスタッフや外勤の若手スタッフに対して特にケアを充実させていきます。
なぜいま混乱期に入るのか
「売上も伸びているし、利益も出ている。今後も需要はある。それなのに、なぜ混乱期に入らなくてはいけないのか」
そういう意見があるかもしれません。
「いまのやり方でうまくいっているのだから、安泰なのだから、なにも変える必要ないじゃないか」
そう思われることもあると思います。
しかし、このように組織の成長に注力できるのは利益が出ていて、安泰に見える今だからこそです。売上が落ち、利益が出なくなったときには、組織の強化に注力する余裕はなくなってしまいます。
確かに橋梁点検という事業は、景気に左右されにくい事業でもあります。コロナ禍でも安定的に仕事の依頼は来ます。しかし世の中は常に変化しています。この状態がずっと続く保証などどこにもありません。そう考えるならば、事業が軌道に乗っているいまこそが、組織を強くするチャンスなのです。
そしてなにより、組織として個人として成長し、お互いに協力しあえるチームになる方が、「たのしく働ける」というのがわたしの本音でもあります。外部環境から与えられる安泰よりも、自ら成長し、自らの手で安泰をつくり出す。苦しみも経験するかもしれないけれど、挑み続ける。世の中の変化に影響されるのではなく、自ら変化していく。わたし自身はそうありたいと思いますし、スタッフのみなさんにもぜひ変化をおもしろがり、楽しんでほしいと思います。
おわりに
強い組織をつくりたい。それはわたしの願いでもあります。以心伝心。阿吽の呼吸。そう感じられる組織をつくることが、わたしの最終的な目標でもあります。神輝興産のVISION『共創』に込めた想いです。
なぜそれほどまで「強い組織」にこだわるのか。それは学生のときにバレーボールで苦難の末、優勝した経験があるからかもしれません。
決勝戦、個々人の実力は明らかに対戦相手のほうが上の状況。その相手に対して、チームメンバーそれぞれが自分の強みを発揮し、互いを活かし合うことで、ついには格上の相手に勝利しました。それはまさに、以心伝心、阿吽の呼吸と言ってもいいひと時でした。
あの体験を会社という組織で実現したい。スタッフみんなに、あの喜びを味わってもらいたい。これはわたしの勝手な願いかもしれませんが、心から望むことでもあります。
神輝興産という組織はまだまだ成長できます。もっと強くなれると思います。ぶつかるのは、個々人が意見を持っているからです。意見を持つのは、もっと良くしたい、もっと強くなりたい、という想いがあるからです。
今月の勉強会ではスタッフが「NASAゲーム」を企画してくれました。「NASAゲーム」とは、複数の選択肢があり得る状況下でチームメンバーとの合意形成を目指して、それぞれが自分の意見を提示し、その後、チームで話し合いながら全員で1つの結論を導くゲームです。
ゲームを通して、目標に向かってチームで話し合い、お互いに意見を伝え合う。こういう機会をつくってくれました。スタッフに企画の目的を訊いたところ、「メンバーのコミュニケーションの質を高め、会社に心理的安全性を形成するため」だと言ってくれました。本当にありがたいことです。
いま会社になにが必要かを自ら考え、それを企画し、実行してくれるスタッフがいる。この事実ひとつとっても、神輝興産はもっと強い組織になれるのだと確信しています。
有限会社神輝興産:https://www.shinki-ktr.co.jp/
代表 中憲太郎:https://twitter.com/ktr_kenaka
取材・言語化・見える化:大谷信(https://twitter.com/OtaniMkt)