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【お題拝借】トヨタ式(55歳・自営業)
京都市にお住まいの55歳の自営業者Aさんから頂いたお題を紹介します。
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トヨタなど日本の自動車メーカーは、米中をはじめとする世界の動きから
技術面、戦略面で後れをとっているんじゃないかと気になっています。
トヨタがコケたら日本もコケるんじゃないでしょうか。
そこで今回は、Aさんから頂いたお題「トヨタ」を拝借して、「トヨタ式」を「未来を輝かせるツール」に変えたいと思います。
【私ならこう考える】
「トヨタ式○○」と題した本(以下、トヨタ本と言う)は、これまで多数出版されてきました。
現役のトヨタの社員に一連のトヨタ本に関して感想を聞くと、「随分誇張されているなあ」「本当に調べて書いているのかな」など違和感を持つ人が多くいます。
その一方で、彼ら彼女との会話の中で頻繁に出てくる言葉があります。
それは「徹底して」、「一貫性」、「見える化」、「終わりのない改善」です。
追随を許さない「徹底して」
私もトヨタに入社した時、その“徹底して”に驚かされました。
「昼休みになると一斉消灯」
「企画書はA4かA3サイズのどちらか1枚以内にまとめる」
「机の引き出しの中の書類は20センチまで、それ以上の書類は強制破棄」
などなど。
先輩に「前からこうなのですか?」と聞くと、
先輩は「何十年も前から変わらずやり続けている」と答えました。
多くの会社では、ルールを決めてもいつの間にか忘れ去られてしまいますが、トヨタでは一度決めたルールを徹底して順守する「企業文化」が根付いています。
一度決めたルールを徹底して順守する「企業文化」で変化に素早く対応できるのか?
そのことを私が懸念し始めたのは、トヨタを出てからです。
追随を許さない「一貫性」
「一貫性」の逆は「ブレる」です。
その意味でトヨタの経営はブレずに一貫しています。
トヨタの“待ち伏せ戦略”もトヨタが取り続ける“一貫性”の1つです。
“待ち伏せ戦略”は、強力な財務力を保持する企業に許される高等戦略です。
手順は次の通りです。
①「人間は(神様でなないので)未来のことは分からない、よって考えられる複数の手立てを時代に先回りして打っておく(罠を仕掛けておく)。
②息をひそめて時代が罠に引っかかるのを待つ。
③引っかかった時代を捕まえて、他社が気付かない内に、素早く本格展開する。
ハイブリッド車の成功は、待ち伏せ戦略が当たった1例です。
“待ち伏せ戦略A”はいつ打ち切るのか? “待ち伏せ戦略B”はいつ打ち切るのか?
その判断基準が無くて大丈夫なのか?
そのことを私が懸念し始めたのは、トヨタを出てからです。
最大の強みは「見える化」と「終わりのない改善」
トヨタ本に書かれていることの中で、「確かにそうだ」と思わせることがあります。
それは、「現地現物で、現象を見える化し、改善し続ける」という行動指針の徹底です。
私もこの行動指針が「トヨタの競争力の源泉」であることは間違いないと思います。
トヨタもそのことを認識しており、
トヨタウェイ14原則中4原則でそれを行動指針として定めています。
トヨタの次の課題は何か
ご承知の通りトヨタはこの20年、同業他社を尻目に成長し続けてきました。
創業家の旗印が求心力として機能したことも事実だと思います。
しかし、成功は傲慢に通じやすいのが世の常です。
私が心配する最大の傲慢は、
「見える化を徹底しているので全て見えている」という経営陣の錯覚です。
例えば、ヒトが「徹底して」と「一貫性」をベースとした管理方式である限りは「見える化」が強みでしたが、
今後競争力と繁栄を維持させるために益々重要な要素となる、
「経営の柔軟性」や「風通しの良い企業文化」など“人の心の領域”に係るコトは、「見える化」し難い対象です。
例えば、クルマがガソリンエンジンをベースとした製造方式である限りは
「見える化」が強みでしたが、
今後競争力と繁栄を維持させるために益々重要な要素となる、
「AI・ITシステム」や「電気・電子部品のアーキテクチャ」など“DXの領域”に係るコトは、「見える化」し難い対象です。
「人づくり、物づくり」を基盤に
「徹底して」、「一貫性」、「見える化」、「終わりのない改善」で経営を展開してきたトヨタ。
今後新たな課題に対して、どう対処していくのか?
既存の自動車メーカーに加え、
新興の BYD(中)、テスラ(米)、
他業界の アップル(米)、グーグル(米)、ソニー(日)など
ライバルに不足なしです。
アナタもこの機会に、自社の強みを点検してみてはいかがでしょうか。
アナタの輝く未来のために!