中国の兄妹始祖神話 伏羲と女媧
古代中国神話に登場する伏羲(ふくぎ)は、妹である女媧(じょか)と夫婦であったとされています。大洪水が起きたときに二人だけが生き延び、それが人類の始祖となったという伝説上の人物で、2人の肖像はよく蛇身人首の姿で描かれます。
伏羲は『易経』繋辞下伝によれば、易における8つの基本図像である八卦(はっけ)を作った人物とされます。また、結縄の政に代えて書契(文字)をつくり、蜘蛛の巣に倣って網を発明し、魚釣りを人々に教えたとも言い伝えられています。アジアや世界各地に伝播する兄妹始祖神話の代表格でもあり、「旧約聖書」のアダムとイブや「古事記」のイザナギとイザナミとよく似た存在です。日本でも律令時代にはすでに伏羲の存在が認知されていたと言われています。
伏羲と女媧の大洪水のエピソードは雲南省を中心に、中国各地に伝承として残っています。父が閉じ込めていた雷公を、2人が誤って解放してしまったために雷公は洪水を起こし、人類を滅亡させてしまいます。兄と妹は雷公を解放した際に、雷公からもらった種を植えて、そこから生えた巨大なヒョウタンの中に避難して助かり、滅亡後の世界で、結婚して人類の始祖となったというものです。
中国湖南省から雲南省、東南アジア北部の山地に住む少数民族・ヤオ族の伝承では、伏羲が妹の女媧に対し結婚を申し込む際のエピソードも残っています。それによれば最初は伏羲の求婚に対して、女媧は結婚を渋っていたといい、大木の周りを回ってみて捕まったら結婚すると条件を出したそうです。伏羲は足の速い女媧になかなか追いつけなかったそうですが、途中で逆に回ってみたところ、鉢合わせする形で女媧を捕まえることができ、夫婦になれたそうです。
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