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僕のお店を形成する映画

お店を形成する映画について考えてみました。

THINKのセレクト(品揃えの選定)基準の1つに『僕が好きな映画に出てくる登場人物が着て
いる格好』又は『その登場人物が次の日こういう服を着ていそうだ』というイメージがあります。
多くの古着屋はアメカジ・ユーロヴィンテージ・ミリタリー ・ワーク・ブランドアーカイブ等
商品でお店のカテゴリーを表す事ができると思います。
ですがTHINKにはそうした明確な商品カテゴライズがありません。

THINKをなるべくわかりやすく説明しますと、「ドレッシーとラギットな雰囲気を両方感じることができる服」という共通点があります。
そして着飾った雰囲気が出ない、あくまでもリアルユースな服を置いています。

例えを出すなら僕はアメリカの映画監督ジム・ジャームッシュの映画作品のファンでして、
初期作の「パーマネント・バケーション」や「ストレンジャー・ザン・パラダイス」なんかは特にファッション的影響を受けています。
この映画は15歳の時にたまたま実家のケーブルテレビで放送されていたのを観たんですけど
主演のジョン・ルーリーのシャツとトラウザーパンツにサスペンダーを合わせたスタイリッシュでクラシカルな服装がめちゃくちゃカッコよくて
冒頭の電話に出るシーンとか気だるげな仕草とかもう兎に角最高だったんですよ。

僕は子供の頃からアニメでも映画でも好きなシーンを何度も何度も巻き戻して観ると言う癖があって、小学生の頃VHSに録画したドラえもんの大晦日スペシャルなんかを何度も巻き戻して観て母親に壊れるからやめなさいと怒られていました。

同じように「ストレンジャー・ザン・パラダイス」のジョン・ルーリーがトランプ並べてるシーンとかずっと繰り返し観て目に焼き付けていました。

店内に貼ってある「ストレンジャー・ザン・パラダイス」のポスター


そして当時の僕は、ジョン・ルーリーの相棒役のリチャード・エドソンが着ていたアーガイル柄のカーディガンとか似たやつをめちゃくちゃ探しましたね。

ルードな人達が身だしなみはしっかり整えている
そのラギットとドレッシーが同居したアンビバレンスが僕の中でお洒落の究極に位置付いたんです。
野暮ったさの中にある美。綺麗目なのに時々見える荒々しさ。こういうのがカッコ良いって事なんだと知りました。

この映画をきっかけに僕の1番好きな柄はアーガイル柄になったのです。
ですからTHINKには毎年冬になるとアーガイル柄のセーターが沢山並ぶんです。

THINKの洋服は、この僕が好きな人たちが物語の次の日にはこんな格好してるんじゃないかなぁとか勝手な想像で洋服をピックしています。
そうです、もう完全にイメージなんですよ。
ですから他のファンの方が知ったら「それは違くない?」とお叱りを受けるかもしれません。

ジム・ジャームッシュの話をすると本当に長くなってしまうので後少しだけ簡単に例を挙げて終わりにしますね。

「ミステリー・トレイン」の永瀬正敏とか
「パーマネント・バケーション」の主人公の50年代風ジャケットスタイルは今の僕と僕のお店を象徴するコーディネートです。
これもアーガイル柄のニットと同じく影響受け過ぎてTHINKには年中テーラードジャケットとそれに合わせる柄シャツが並んでいます。
常連さんの中には毎年秋冬に増えるTHINKのジャケットアイテムを楽しみにしてくれている方も多いです。

「ストレンジャー・ザン・パラダイス」をきっかけに「ラウンジ・リザーズ」を聴くようになったり
「ミステリー・トレイン」をきっかけにカール・パーキンスとかブルースにハマっていく事になるのですが音楽の話はまた別の機会に語りたいと思います。

僕は普段僕自身のこういう話をお客様にクドクドと話すことはないんですけどね。
流石に語りきれないほど長くなりますし
以前「ファッションに目覚めたキッカケがジム・ジャームッシュはお洒落すぎる」と小馬鹿にされた事もあったんですよ。

ですが店内には先ほどの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」や「コーヒーアンドシガレット」のポスターを貼っています。
それに気づいて
「ジム・ジャームッシュお好きなんですね」と尋ねて下さるお客様もいて
「並んでいる洋服見てすごく納得です!」と
言って頂けたりもして
まさに前回話したお客様がお店に刺さる瞬間があって、とても嬉しくなるんですよ。

ポスターも元々貼っていなかったのですが
以前「ものときろく」という様々なものの背景を探って発信するWebサイトの代表の神谷さんに
THINKを取材していただいた事がありまして、
その時もジム・ジャームッシュについて同じ話をしました。
その時神谷さんが「武田さん、この話もっと皆に話していった方が良いですよ。店主の好きなものはお店のファンなら皆知りたいはずですよ。」と仰っていただき、
じゃあポスターでも貼ってチラッとアピールしてみようかななんて事で始めたんですけど
想像以上にそれに気付いて分かって下さる方が多くてびっくりしました。


レジ側に貼っているポスター



やはりお客様に自力で分かっていただこうとするのではなくて自分から伝えていく事が大事ですね。
もちろん知らない方にいきなりこのような説明をするのは酷だと思うので、観たことないけど興味ありそうだなって方にはとりあえずとっておきの映画を1本お勧めしたりしてます。

僕のお店以外でも店主の趣向を理解すると同じ商品でも見え方が変わってくると思います。
その楽しみっていうのも個人店の魅力だと思うので、皆様も行ったお店に貼ってあるポスターとか店内で流れてる音楽とかこれをきっかけに店主にチラッと聞いてみて下さい。
その一言をキッカケに
世界観が広がるかもしれませんよ。

以上で僕のお店を形成するもの「映画編」は終わりになります。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
お疲れ様でした。

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