クリスマスとヒートテックと失恋と。
駅までの道をドキドキしながらぼくは歩く。気になっていた可愛い先輩とバイト上がりのタイミングが一緒になったのだ。
塾講師の同僚の、一つ年上の先輩。ちらりと横目で様子を伺うと、白いタートルネックのセーターが、降り始めた粉雪に映えて先輩の清楚そうな雰囲気を引き立てていた。緊張して口の中が乾く。
会話の接ぎ穂としてまず服装を褒めてみることにした。「女の子との会話に困ったら、まず会話を褒めろ! 」と、先日コンビニで立ち読みした『クリスマスまでに彼女を作りたいお前に捧げる四十五条』に書いてあったから。
ただ、これが良くなかった。
「そのタートルネックのセーターが似合っています。最近寒いですもんね」と会話を切り出したぼくに彼女は、はにかみながら返した。
「いや、これキスマ隠すためなんだよね」
そういって、照れ隠しのように「へへへッ」と笑った彼女。恋とも言えない淡い気持ちが雪よりも先に散った。