MILGRAM 第一審/ミコト「MeMe」考察
こんにちは。桜小路いをりです。
今回は、「MILGRAM」第一審MV、ミコトの「MeMe」について考察していきます。
正直、いちばん難航した考察です。
いや、絶対意味があるんだろうけど、タロットカードなんて明るくないし……と困っているのですが……。
その辺りは有能な考察班の皆さんにお任せして、私なりに考察していこうと思います。
こちらが、ミコトの第一審MVです。
直接的に、バイオレンスな表現などがあるので、苦手な方はご視聴の際にお気を付けください。
なお、考察の中では、解離性同一性障害(多重人格)について触れていきます。予めご了承ください。
ミコトについて
まずは、ミコトこと榧野尊の人となりについて。
ミコトは、中肉中背の一般男性。クセの強いミルグラムの面々の中では常識人で、戸惑いつつも、その異様な状況に順応しようとしています。
彼だけは唯一、自分が何の罪を犯して囚われているか全く分かっておらず、何かの手違いだと信じて疑っていません。
また、夜中になってもミコトの監獄からは物音がするので、いつ寝ているかが不明だと囚人の間で話題になっています。
ミコトの誕生日は10月6日、誕生花はオミナエシで、花言葉は「美人」や「親切」です。
この花言葉は考察のヒントにはならないかも、と思い、オミナエシの花についても色々調べてみました。
オミナエシは、日本では古くから「敗醤」と呼ばれていたそうです。花を室内にさしておくと、醤油が腐敗したような匂いをまき散らすことから、この名が付いたとか。
あちこち謎が多いうえに情報も足りない……と既に唸っています。(もともと、「いつかはミコトの考察をせねばならんのか……」と数日前から悩んでいました。間違いなく、私の知識不足のせいで難易度が跳ね上がっている考察No.1です)
では、早速考察をしていきます!
歌詞について
単刀直入に言うと、ミコトは解離性同一性障害、すなわち多重人格だと思います。
解離性同一性障害の原因としては、強いストレスなど心のダメージから自分を守るために、自分の中で感情や記憶を切り離してしまうこと、だそうです。その結果、もうひとつの人格を形成してしまうとか。
MVでも詳しく触れますが、まずは歌詞からそれが分かる部分を。
「ボク」が「僕」を、というフレーズが、とても印象的です。
「溜め込んで隠さなくていい」というフレーズから推測すると、ミコトの交代人格(以降、交代人格と呼びます)は、ミコトの主人格(以下、主人格と呼びます)が不満や怒りを溜めていた人物を殺したのではないかと思いました。
「かわりばんこ」という言葉からも、人格が様々な場面で交代していることが分かります。
多重人格には、しばしば「交代人格が表れるきっかけ」があるそうですが、ミコトにとってのそれは、なんなのでしょうか。
「溜め込んで隠さなくていい」という言葉からは、「自分を侮辱されたとき」のようにも思います。
狂暴な印象の曲調から、急に穏やかで不安げに揺らぐ曲調に変わるこの部分。
人格が交代し、主人格が表に出てきた部分なのだと思います。
交代人格が表に出ている間の記憶は主人格にはないので、この困惑も十分理解できます。
ただ、引っかかるのは「赦さないよ」という言葉。
本来、ミコト(以降、ミコトと呼んだ場合は、主人格も交代人格も含めた「ミコト」という一人の人間のことを指します。ご了承ください。)は「赦すかどうかのジャッジを受ける立場」であるはずなのに、これは「ジャッジをする側」としての発言に捉えられます。
これは、主人格と交代人格が交代する瞬間なのではないかと思います。すなわち、「赦さないよ」は交代人格の言葉です。
交代人格への罰を主人格も含めたミコトに背負わせるのか、という議論は今は置いておくとして、「MILGRAM」に入っているのは主人格たるミコト本人です。交代人格自体は、自分はジャッジの外側にいる、と思っているのではないでしょうか。この部分には、ボイスドラマの項目で詳しく触れます。
この部分の歌詞、これは交代人格の叫びなのだと思います。
主人格を「壊して」、自分が表に出たい。
いっそ自分が主人格になることを「選べたなら」。
そんな想いで、「彼」は別人格という曖昧な立場でいるのではないでしょうか。
歌詞をじっくり聴き込めば聴き込むほど、「僕」という一人称が主人格から出たものなのか、別人格から出たものなのか分からなくなっていきます……。
それもまた、得体の知れなさを醸し出していてゾッとしました。
MVについて
ミコトのMVを見て私が最初に感じたのは、殺人の常習性でした。特に、バスルームで返り血を洗い流しているシーンには、どこか慣れた雰囲気があります。
それも、その犯行は同情できる理由でのものではなさそうです。
単刀直入に言ってしまえば、愉快犯だとも思います。
また、以前、本で読んだのですが、表に出ていない人格は、意識の奥に「沈んでいる」ような状態だそうです。
壁が壊れ、ソファーと机があり、タロットカードが散乱している不思議な空間は、人格が「沈んでいる」状態を描写しているのではないでしょうか。
ソファーなどはミコトが実際に住んでいる部屋の家具と同じものなので、別人格がミコトと同じ人生を途中までたどってきた、つまり、途中まではひとつの人格であったことを表しているように思います。
しかし、その部屋は、壁が崩れ、壊れている。つまり、これまで閉じ込められていた別人格が暴れ回って表に出るようになった、ということではないでしょうか。
歌詞にもありましたが、別人格は主人格を乗っ取りたいと思っているようです。
鏡を見てがくりと項垂れるミコト(主人格)を見て、にやりと笑うミコト(別人格)の表情は、「これでまた主人格を押しのけて表に出られる」と愉悦に浸っているようにも思います。
最終的には、主人格に耐えきれないほどのストレスを負わせてその意識を奥深くまで沈め、自分が「主人格」になりたい。そんな野望が感じられます。
ちなみに、鏡は「真理」の象徴です。「真実を映し出す」とも言われており、魔除けなどの意味もあります。
「真実を映す」という鏡に別人格が映っているとしたら、どちらが主人格(本当の姿)なのかが既に曖昧になっている、とも捉えられる気がします。
ボイスドラマについて
アマネに引き続き、ミコトの考察も難航を通り越して遭難しそうだったので、ボイスドラマを聴きました。
これはボイスドラマについてしっかり書かねば……! と俄然やる気になったので、書きます。(桜小路いをり、こう見えて単純です。なかなかに聴きごたえのあるボイスドラマでしたので、暴力描写が比較的いける口な方はぜひ。)
エスとの尋問の中で、ミコトは突如として豹変(交代人格が表に出たためです)し、エスに襲いかかります。
そして、囚人側から看守エスへの攻撃はできないはずなのに、別人格が表に出たミコトは、エスを殴ることができてしまいました。(間一髪、危ないところでコトコが助けに入ったわけですが……)
このくだりが、すごく象徴的だなと思いました。
これ、別人格は「MILGRAM」のルールの外にある、ということを暗に示しているのだと思います。
だとしたら、裁かれるのは「ミコト本人(=主人格)」であって別人格ではない。
その意思は、その行動を決したのは別人格。でも、ひとつの身体をふたつの人格で共有しているから、その「殺人」という行為自体は……。
一方で、もしミコトが「MILGRAM」にいる間に別人格が主人格を乗っ取り、別人格こそが「ミコト」になってしまったら。
もしかしたら、最初はエスを攻撃できた別人格のミコトも、それが不可能になるのではないでしょうか。
すなわち、別人格が表に出た状態のミコトがエスに攻撃できるかどうかで、主人格を乗っ取ったかどうかが分かるのでは……?(エス、ごめんなさい)とも思いました。
私は「MILGRAM」を知るのが遅かったせいで、第一審の審判には参加していないのですが、ミコトのMVを見たとき、真っ先に「赦さない」だなと思いました。
そして、審判の結果も、「赦さない」が70%近くを占めています。
ただ、約30%の「赦す」に投票した方は、何よりミコトの多重人格という側面に、「本当に『赦さない』でいいのか」と思ったのでは? と感じました。
非常に難しいところです……。
まとめ
余談ですが、ミコトを演じている声優さんは、「鬼滅の刃」でもお馴染みの花江夏樹さんです。
ボイスドラマの真に迫る演技、MVでのふたつの人格を行ったり来たりするような歌声、どちらも圧巻で驚きました。
私は「あんスタ」でも、花江夏樹さん演じるキャラクター・巴日和の台詞と歌を聴いているのですが、声から滲み出るキャラの人柄の差、その演じ分けにはびっくりでした。
巴日和の歌声は、天真爛漫でハッピーオーラに溢れていて、対してミコトは、鬱屈や不安、困惑が垣間見えるようで。
もちろん、声優さん界隈に明るくない私でも思わず夢中になってしまうくらい、他の声優の皆さんもびっくりするほど凄くて、ボイスドラマを聴くだけで日が暮れそうでした。「MILGRAM」、時間が溶けていきます……。
「MILGRAM」は、考察が捗る面白いプロジェクト、というだけでなく、色んな発見と出会いに導いてくれるなと改めて感じました。
いよいよ、残す囚人もあと1人になりました。
ラスト、10人目の囚人はコトコです。
張り切って考察していきます!