夏は夜。透明な闇の優しさに酔う。(#虎吉の交流部屋初企画)
こんにちは。桜小路いをりです。
今日の記事は、虎吉さんの企画に参加させていただくエッセイです。
テーマは、「夏の夜」を選ばせていただきました。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
夏の夜、と聞いて私がいちばんに思い浮かべるのは、清少納言の『枕草子』の一節です。
清少納言が生きた時代には電気なんてなかったから、きっと、蛍の光も月明かりも、今よりも何倍も明るく感じたんだろうな、と思います。
同時に、月のない闇夜は、今の何倍も暗くて、だからこそ、蛍がひときわ美しく見えたかもしれません。
私は、「夏の夜」の中でも、その「闇」が好きです。
彩度が高くて、深い色合いだけれど透明感のあるような、あの「闇」の色が好き。
私にとって、「春の夜」は温かくて穏やかなイメージで、「秋の夜」は物悲しく儚いイメージ。
「冬の夜」は、凛としていて鋭いイメージ。
「夏の夜」は、「夜」の要素を構成するもののひとつひとつがパキッとしていて、鮮やかで、どこかロマンチックなイメージがあります。
「夏の大三角」や「花火」「提灯」などのイメージも強いのか、夏の夜は、全ての物の輪郭がはっきり、くっきりしている印象です。
だからこそ、夜空の色も、他の季節より彩度が高く見えるような。
鮮やかな夜空の下に、ふわりと、でも確かな存在感をもって灯る街灯や、お祭りの提灯。
鮮烈に弾ける、花火の火花。
街灯の影、人の影、建物の影は鮮やか。
夏の夜の闇は果てしなく深くて、灯りの下で談笑する人たちの影まで、まるごと包み込んでくれる気がします。
優しく、透明感のあるさりげなさで。
夏の夜は短いから。
その時間をせめて存分に楽しもうとして、気がついたら風物詩が増えていた、なんてこともあったりして。
「夏の夜」は不思議な高揚感もあって、なんだかその雰囲気に酔ってしまいそうなこともあります。
でも、「夏の夜」にしかない空気感が、透明感が、鮮やかさが、私はとても好きです。
ふらっと外に出て、自販機で買った缶ジュースを飲みながら、お祭りのお囃子を遠くに聞いて散歩をしたり。
家のベランダで、走り過ぎていく車をぼんやり眺めながら、アイスを齧ったり。
夜風に当たりながら、最近会えていないお友達に電話をして、どうでもいい近況報告をしたり。
華やかなだけじゃない、「夏の夜」の気ままでゆるやかな過ごし方を、今年は考えていきたいです。
清少納言も、数秒後には忘れているような取り留めのないことを考えながら、夏の新月の夜を過ごすこともあったんじゃないかな、と思ったりしています。
そういえば、眠れなくて、でも無理に眠ろうとしなくていい、1日の時間が不意にぽんっと増えてしまったような夜にぴったりの曲があります。
幾田りらさんの「Midnight Talk」です。(りらさんの1stアルバム「Sketch」の中で、私がいちばん好きな曲です)
ファンタジックな雰囲気の曲に、りらさんの繊細な表情や仕草を切り取ったMVがぴったり。羊さんの存在が、さらに幻想的な世界観を際立たせています。
このnoteと併せて、眠れない、眠らない夏の夜のお供にぜひ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。