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「装うこと」の楽しさと切なさを、素敵な音楽と共に。

こんにちは。桜小路いをりです。

最近、お気に入りの曲が2曲あります。

どちらにも、洋服やアクセサリー、お化粧などで「装うこと」を彷彿とさせる歌詞があるので、ちょっと記事にしてみよう、と思い立ちました。

最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

香椎モイミ「Makeup」

初音ミクちゃんと巡音ルカさん歌唱、ボカロPの香椎モイミさんの楽曲。

お化粧の手順をなぞりながら、ひとつ、またひとつと弱さや傷を隠して、凛とした自分になっていく女性の姿が描かれています。

シスターフッドを連想させる言葉もあり、女性どうしでしか共有し合えないような想いの重なり合い、強い絆を感じる曲です。

「心を整えるメイクアップ・ベース」

「痛みを塗り替えるファンデーション」

「美しい嘘に為るコンシーラー」

「他人に素が見えぬように厚くパウダー」

「感情が無い、動かない、と嘆く声に憐れみの
 アイブロウ」

ざっと抜粋するだけでも、溜め息が漏れてしまうほど儚くて切なくて美しい歌詞。
聴くたびに、心がきゅっと締め付けられます。

繊細に揺れ動く心に蓋をして、心に残った傷痕も痛みも、自分の弱い部分や素の部分も隠して、さらに嘘を塗って固めて。

幾重にも「自分」を隠してしまったことで見えなくなってしまった感情を、憐れみながらも補って。

こんなに切実ではなくても、お化粧って、多かれ少なかれ「自分の見られたくない部分」を隠すものだと思います。

それは、見た目だけでなく、「弱さ」であったり「強さ」であったりと、人それぞれです。

でも、お化粧によって、自信をもって立ち居振る舞い、顔を上げることができるのなら。
それは、この上なく「美しい嘘」なのではないかと思います。

そして、それを施し、施されるこのふたりの関係性は、ひょっとしたら、美しく儚く、それでいて切実な「共犯関係」なのではないでしょうか。

R Sound Design feat.初音ミク「帝国少女」

どこか危うく切ない雰囲気も感じる、「帝国少女」。
夜明け前の街を歩きながら、淡々とひそやかに歌っているような初音ミクちゃんの歌声が、とても素敵です。

悲しげな痛みを帯びたこの歌詞にも、「装うこと」を連想させるワードが散りばめられています。

「純金製の欠乏感を左の耳にぶら下げて
 芳香性の憂鬱感を纏ったら
 抗菌性の停滞感を両手の爪に散りばめて」

「金剛製の背徳感を薬の指に光らせて
 伸縮性の優越感に袖を通して
 後天性の先入観で両目の淵を彩った」

1行目から順番に、「ピアス」「香水」「マニキュア」「ダイヤの指輪」「ブランドものの服」「アイシャドウ」のことだと推測しています。

名前で書くとこんなに華やかなアイテムの数々を、あえて無機質に、端的な漢語で表現するセンスが、本当に素敵。

「帝国少女」で描かれている「装うこと」は、気怠げながらもどこか義務的で、機械的にいつも行うもの、という印象があります。

それでいて、自分自身になくてはならないもの、というニュアンスまで、ほんのりと感じます。

「帝国少女」の歌詞の中で描かれている彼女には、きっと、「Makeup」の彼女たちのように自分の弱さを見せられる人が周りにいなくて。

だから、装うことによって自分の中に深く沈んでしまった感情を、憐れんでくれる人もいないのではないか、と思います。

装っていないと、自分自身を保てない。
そんな脆い悲痛さも感じる1曲です。

私にとっての「装うこと」

私は、「装うこと」「オシャレをすること」が好きです。

それは、その1日をどんな自分で過ごすか決められるからだと、最近気がつきました。

ふわっとした儚い雰囲気を纏って過ごしたい日もあれば、きりっとしたカッコいい雰囲気で過ごしたい日もあって。

多面的な自分の中から、どの面を「表」に選んでいたいのか、どんな面を隠していたいのか。

それを取捨選択できるのが、「装うこと」だと思います。

同時に、その選択を下した自分の心を支える作用があるのもまた、「装うこと」ではないでしょうか。

「隠すこと」の後ろめたさによって現れた心の隙間を補って。
選んだ「表」には相応しくない「裏」を知っている自分自身への無力感を、そっと励まして背中を押してくれて。

そう考えると、「装うこと」そのものが、なんだか、大切な相棒のようにも感じられる気がします。

時には、それに悩まされることも、押しつぶされそうになることもあるけれど。

装った自分も、そうでないときの自分も、きっと全部が、かけがえのない「自分自身」だから。

「装うことが好き」と言えるこの気持ちを大切にして、それが苦しくなったときにはこの2曲を聴いて、きっと一生付き合っていくであろう「装うこと」と仲良くしていきたいです。

今回お借りした見出し画像は、アイシャドウの写真です。お化粧品って、見ているだけで心が躍ります。最近、アイシャドウを塗るたびに「後天性の先入観」という言葉が頭をよぎるようになりました。果たして、私のそれは一体どんなものなのか……もうしばらく思案することになりそうです。

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桜小路いをり
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。