『雨を綴る しぐれうい作品集』〜イラストと音楽と雨の匂いと〜
こんにちは。桜小路いをりです。
久しぶりに画集を買いました。
VTuberとしても活躍している、イラストレーターのしぐれういさんの最新画集『雨を綴る』です。
しぐれういさんが手掛けた幅広い絵をぎゅぎゅっと詰め込んだ画集で、章ごとに、絵と一緒に楽しめるインストロメンタル曲も付されています。(各曲に素敵なタイトルがついていて、それもまた魅力。画集を捲っているときだけでなく、普通に作業用BGMとしても使っているくらい好きです。)
ういさんが描くキラキラした作品の数々を、音楽と一緒に楽しめるとはなんという贅沢……! と、ここ1ヶ月ほど、暇を見つけてはページをめくっています。
私は大ヒット曲「粛清!!ロリ神レクイエム☆」リリースの前から、ういさんについては存じ上げていたのですが、ひょんなことから、最近よく配信や切り抜きを見るようになりました。
しぐれういさんは、個人で活動をされているVTuberさんで、本業はイラストレーター。
VTuber活動はあくまで趣味、イラストレーターとしての活動の延長にあるものと頻繁におっしゃっています。
本業のイラストだけで十分に生活していける、ということもあって、リスナーさんへの言動はなかなかに強気。(そこが魅力でもあります。)
個人勢VTuberならではのフットワークの軽さと行動力で、活動の幅をぐんぐん広げているイラストレーターさんです。
今年でVTuber活動5周年ということもあり、個展、画集、アルバム、ライブなど大活躍されています。(昨日のソロライブもお疲れさまでした!)
もちろん、ういさんの描くイラストや、ういさんが歌う楽曲、おしゃべりもとても好きなのですが。
私は、ういさんの「エンタメの作り手」としての姿勢を、純粋に尊敬しています。
私自身はまだまだひよっこではあるものの、小説を書いていたり、こうして文章を発信したりするうちに、ここ1年ほど「作り手」としての自覚を少なからず持つようになってきました。
最近は、「ものづくり」にまつわる言葉に、色々とアンテナを張っているわけなのですが。
ういさんの画集の帯に書かれた言葉が、初めて見たとき、心にすごく刺さったんです。
「絵を描く」という仕事を、こんな言葉で表せる感性が素敵過ぎる……と思ったのが、「この画集を読みたい」「本棚に置いておきたい」と感じたきっかけでした。
『雨を綴る』のページをめくると、この言葉にはこんな続きがあります。
絵に対する責任感、矜持、使命感まで感じる言葉でありながら、自分の絵に対して、我が子にするように微笑むういさんの姿まで浮かぶのは、私だけでしょうか……。
ういさんのイラストは、どれもすごく生き生きとしていて、絵の中の人物の息遣いを感じます。
紙から抜け出してきて、立体になって動き出しそうな感じといいますか。
そこに切り取られている一瞬の仕草の前後まで、たちまち想像させられるような、そんな絵なんです。
どうして、ういさんの絵があんなに魅力的なのか。「神絵師」と一括りにしてしまえばそれまでですが、その由縁に、少しだけ触れることができた気がします。
また、この『雨を綴る』は、ういさんの絵の魅力はもちろんのこと、「画集」という作品の在り方の魅力も、教えてくれる一冊でした。
線のひとつひとつ、ささやかな色遣いや陰影などなど、細部にわたって命を吹き込む、イラストレーターさんのお仕事。
それを、紙で、手で一枚一枚のページを繰りながら、イラストレーターさんの言葉と共に楽しむことができる、画集という存在。
ダブルカバーの表紙や、雨粒を表現する銀色の箔押しなど、装丁から既に、その美しさに惹き込まれて。
収録されているインタビューはもちろんのこと、各章に付されたコメントや、(先ほども触れましたが)画集と一緒に楽しめるBGMなどからも、「しぐれうい」というひとつの世界観を、存分に噛みしめることができて。
今はSNSで絵を公開していらっしゃる方が本当にたくさんいらっしゃって、画集をあえて買わなくても、絵自体は見ることができる、ということが多いと思います。
でも、やはり、紙になって、いくつもの絵が作り手の言葉と共に一冊に収まっているというのは、とても素敵で。
「イラストレーター」の可能性、ひいては「絵」の可能性、「エンタメ」の可能性を感じさせてくれる一冊でした。
また、この画集の表紙は、ういさんのアルバム「fiction」のジャケットと対になっています。
画集の表紙は、水たまりの前にしゃがみ込む「イラストレーターのしぐれうい」さん。
アルバムのジャケットイラストは、水たまりに映った「VTuberのしぐれうい」さん。
実像と虚像の関係でありながら、同じ「雨」を共有しているというのがすごく素敵だなと思います。
ういさんの紡ぐコンセプトは、どれもものすごく「ういさんは、『エンタメ』という存在を本当に愛しているんだな」と思わされるものばかりです。
生命の維持に絶対に必要なものではない、かもしれないもの。
でも、あればあるだけ、毎日が豊かになって笑顔が増えて、ひょっとしたら、その存在によって繋ぎ止められるものもある……かもしれないもの。
ういさんの「作り手」としての姿勢の根底には、そんな揺るぎない「エンタメへの愛情」と「エンタメへの信頼」があるんじゃないかなと、私は考えています。
さて、ここまで長々と綴ってきてしまいましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
結びの言葉の代わりに、ういさんがカバーする、YOASOBIの「群青」を貼っておきます。
ひとつの「好き」が新たな「好き」を連れてきてくれたことへの、いっぱいの感謝を込めて。