見出し画像

【新城マガジン】こだわりのお茶と温かい時間を届けて60年-茶処永井


武蔵新城の商店街にひっそりと佇む「茶処永井」。昭和43年に開業し、60年近く地域の人々に愛されてきたこのお店は、ただお茶を売るだけの場所ではありません。店主である永井ご夫婦の人柄とお茶への深い愛情が、この店を特別な場所にしていることがわかりました。
今回は、永井さんご夫婦にお話を聞いてきました。

永井さんのルーツと「茶処永井」の始まり

自己紹介をお願いします

静岡県島田市金谷出身の永井です。今年で82歳になります。実家がお茶農家ということもあって、幼い頃からお茶に囲まれた生活を送っていました。本当は高校進学をしたかったのですが、親から「お前はお茶屋になるんだ」と言われたことがきっかけで、横浜のお茶屋で10年間の丁稚奉公をしていました。その厳しい修行を経て、昭和43年10月1日に武蔵新城で「茶処永井」を開業しました。

ご縁で開業することになった武蔵新城

武蔵新城で開業した理由について教えてください。

武蔵新城で開業したのは、横浜で修行していたときにお世話になった親父さんが、この場所を見つけてくれたのがきっかけです。『ここでお茶屋をやってみたらどうだ』と言われてね、それでお店を始めました。

開業してからのお話を聞かせてください。

この街で営業を始めた頃は、まだ商店街なんてなくて、道も砂利道でしたよ。最初はお客さんも少なくて、店の前を掃除したり、声をかけたりしながら少しずつお茶を知ってもらう努力をしました。そのうち、近所の農家の方や東北から出稼ぎに来ていた方々が『美味しいお茶がある』って言って買ってくれるようになってね。特に東北の方は、家族への贈り物としてお茶をたくさん買ってくれて、本当に助かりました。

商売が少し軌道に乗り始めたのは、周りに市場ができて人が集まり始めた頃ですね。当時は漬物屋さんや靴屋さんなど、たくさんのお店がありました。その頃から少しずつ常連さんも増えて、『ここで買ったお茶を家族が喜んでくれた』なんて言ってもらえることも増えて、本当に嬉しかったですね。

お茶へのこだわりと温かな交流

お茶へのこだわりを教えてください。

美味しいお茶を提供することが一番のこだわりです。儲けることよりも、お客さんが『美味しかった』と言ってくれることが一番嬉しいからね。

そのために、開業してからずっとお付き合いさせてもらっている静岡県島田市にあるカネ松製茶さんと茶葉の選定やブレンドに細心の注意を払っています。担当者と話しながら、「味はもっと深みを出したい」。それなら「ここの茶畑の茶葉を使いましょう」というように味を1つ1つ確かめながらやっています。

なので、個人の方だけじゃなく、武蔵新城の居酒屋でも、うちのお茶葉を使っていただいているんです。『お茶割りには、ここの茶葉が一番合う』と言ってくれてね。茶葉の味がそのまま引き立つお茶割りを出しているそうで、お客さんにも好評だそうです。居酒屋の人が何度も茶葉を買いに来てくれるのは、本当にありがたいことですね。

ここではどんなお客さんが来ますか

ただ茶葉を買いに来るだけの場所じゃなくて、気軽に立ち寄ってお茶を飲みながら話をしにくるお客さんもいるんですよ。

常連さんが『お茶を飲みに来たよ』なんて言って、椅子に座ってゆっくりしていくことがよくあります。この前も、顔だけ見せに来てくれたお客さんがいて、『今年初めて来たけど、お茶を一杯飲んで帰るよ』なんて言ってね。お茶を淹れて一緒に話をしていると、ついつい時間を忘れることもあります。

時には、昔からの常連さんが昔話をしてくれたり、新しいお客さんが今どんなお茶がいいか相談してくれたりすることもあります。『この間買ったお茶、美味しかったよ』とか『今回はどんなお茶がおすすめ?』なんて言ってくれるのが、本当に嬉しいですね。こうやって、ただお茶を売るだけじゃなくて、世間話やちょっとした相談ができる場所として、このお店が皆さんの生活の一部になっているのがありがたいことです。

60年続けられた理由 - 人間関係が生む温もり

60年間大切にしてきたことを教えてください。

ここでのお客さんとの関係で大切にしているのは、本音で向き合うことですね。お互いに飾らず、思ったことを正直に話せる関係が一番大事だと思っています。お客さんが『このお茶、ちょっと違うな』とか『今回のお茶、美味しかったよ』って言ってくれるのは、私たちへの信頼の表れだと思うんです。そういったやり取りがあるからこそ、次はもっと喜んでもらえるお茶を提供しようと頑張れます。

お母さんが大切にしていること

私は飾らない性格だからこそ、お客さまも正直に意見を言ってくれる。そうした関係があるからここまで続けられたのだと思います。時には叱られることもあるけれど、そのおかげで本当に信頼できる人間関係が築けました。

これからも変わらぬ想い

これからもね、やっぱり美味しいお茶をお客さんに届けることを一番大事にしたいです。お茶を通じて、『美味しかったよ』って言ってもらえるのが一番の喜びだからね。たとえ儲けにはならなくても、こだわり抜いたお茶を提供することで、お客様がまたここに来たいと思ってくれる。そんなお店であり続けたいと思っています。

そして、お茶を飲みに来て、世間話をしに来るお客様が気軽に立ち寄れる場所でいたいですね。『ここのお茶が一番おいしい』って言ってもらえることは本当に嬉しい。「またお茶飲みきたよ」って言ってお客さんとの繋がりをこれからも大切にして、変わらずここでお茶を淹れ続けていけたらと思っています。

【店舗情報】茶処永井について

【営業時間】 
・営業時間 10:00〜18:00
・定休日 不定休
【住所】〒211-0044 神奈川県川崎市中原区新城1丁目15-5

カメラマン:Sugiyama Takanobu
ライター:Sugiyama Takanobu
X:Sugi _048

いいなと思ったら応援しよう!